14話 お友達ゲットしました
宜しくお願いします〜
先に部屋から出た私の後ろでくす、と笑い声を発しつつカイゼルさんが続く。執務室の側で警備に当たってた騎士さんに微笑ましそうな視線を向けられた。赤い顔がまだ治ってないからだもうー!
早く赤みが取れないかなと歩き出してはたと止まる。良く考えたら私マートルさんの執務室の場所知らない。
後ろを振り返ったらまだカイゼルさんがくすくす笑ってた。
「場所がわからないのでしょう?」
敬語なのは執務室を出たからだけど、表情は2人きりの時のまま。ぐぬぬ!
「わかってて先に行かせたでしょ」
「マリコ様があまりに可愛らしかったのでつい」
にゃろう!そんな笑顔で言っても許さな……許してやるー!くそう!好きだもう!好きになるのってこんなに許容広くなれるのか。いや、カイゼルさんだからだなきっと。
爽やかスマイルのカイゼルさんはそのまま私の隣に来ると導くように歩き出す。普通護衛なら後ろだけど私が道を知らないからこうなるのだ。なら私が後ろだろって?たぶんそれはカイゼルさんがしない。後ろだと咄嗟の時に困るからね。護衛が何人かなら前後なんだろうけど。
そうしてカイゼルさんに連れられてマートルさんの執務室に向かう。カイゼルさん達の居る騎士の一角よりマートルさんの居る場所はより城の奥にある。王族の近衛騎士だから当然だね。
近く程に段々と立派な感じになる。この辺りは来るのは初めて。聖女の一角と騎士団の一角くらいしか行ったことなかったからなあ。
途中すれ違う人たちにはやはり頭を下げられる。でも、皆さん一様に微笑ましく見つめて来るんだけど何故だ。
カイゼルさんをみたら同じように不思議そうな表情。何故だ、理由がわからん。
あ、侍女さんがきゃっきゃしてる。カイゼルさん見てるな。カッコいいからなあ。私もつられてカイゼルさんを見たらどうしました?という感じに微笑まれた。侍女さん達からきゃっ、て聞こえた。わかる。笑顔破壊力抜群だよね。モテるよねきっと。いいのかなあ、私が独り占めで。っとお!?
そんな事を考えてたら絨毯に足を取られた。すっ転びかけてがっしり支えられる。勿論カイゼルさんがだ。うん、隣に居るからコケるわけないよね。
「大丈夫ですか?お怪我は」
「転んでないから大丈夫だよ。ありがとう」
「足を捻ったりはされてませんか?」
心配するようにしゃがむと足を触る。過保護だなあもう。っていうかカイゼルさん跪かせるのなんか申し訳ない!それに見られてるのが恥ずかしい…ってあれ、またさっきの微笑ましそうな視線だ。だから何故だ。
足に触れて怪我がないのを確認したカイゼルさんが立ち上がると再び歩き出す。
「あのくらいでいくらなんでも怪我しないよ」
「万が一という事もありますから」
「怪我しても治せるし」
治癒だけが取り柄みたいなもんだからね。そう言ったらカイゼルさんが眉を寄せる。
「そうだとしても、貴女に怪我をして欲しくはないんです」
そっと頬を撫でられた。ホント過保護だけど気持ちはわかるし嬉しいから素直に頷いておく。
「人の部屋の前で何をいちゃついて居るんだ?」
「っ!兄上っ」
「うひゃっ!?」
話しながら歩いていたらいつの間にかマートルさんの執務室についていたらしい。扉が開いてマートルさんが半目で見てる。いきなりびっくりした。開ける前に開くとかびびるからやめて。たぶん魔力で誰が来るかわかったんだろう。そういえば、魔力の個別認識って強い魔力の人の側に弱い人が居るとわかりにくいとか。余程上達してないとはっきり認識出来ないみたい。私とカイゼルさんくらいならまあわかりやすいみたいだけど。
「別にそのような真似をしていたわけではっ」
「私には2人の世界に入ってるようにしか見えなかったが?」
「こっぱずかしい事言わないで下さいマートルさんっ」
2人の世界って!そんな風に見えてるとか恥ずかしいし!!
「仲睦まじいようで良かったですよマリコ様。さあ中にお入り下さい」
仲睦まじいってええ!カイゼルさんは…っわ、照れてる。からかいに弱いなカイゼルさんは。
招かれて中に入る。立派な部屋だなって、うわあ。
マートルさんの机の上はカイゼルさんと同じく書類が山積みだった。カイゼルさんより多いかも。近衛だから処理する書類がより多いのかな。
その机の側に女性が1人立っていた。すらりとした体型だけど出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んで素晴らしい羨ましい。マートルさんと同じ騎士服だから近衛の人かな。ここに居るならもしかして副隊長さんだったりするのかな?
「マリコ様は初対面でしたね。近衛副隊長のシーダです」
想像通り、彼女は副隊長だった。
「お初にお目にかかります。シーダと申します。聖女マリコ様、宜しくお願い致します」
女性らしく綺麗な騎士の礼をする。ふわー、見た目通りの優しげな人だ。微笑みも柔らかい。人当たりは良さそう。動いた時に揺れた髪は深いワインレッド。少し高めのポニーテールにまとめてカッコいい。瞳は柔らかい琥珀色。身長は私より高い。マートルさんとかカイゼルさんとかと並ぶと丁度いい。絵になる。ぐう、羨ましい。しかし胸おっきいなあ。
「…おっぱいおっきいですねー」
「はい?」
だぁぁぁぁ!また声に出してしまったぁぁぁ!しかもまた最後だけ!私は馬鹿かぁぁぁ!
マートルさんもカイゼルさんも固まってる!なんつう発言かますんだ私は!思わず頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「あああもうすみませんすみません!変な意味じゃなくて純粋に思った気持ちが口に出てしまってすみませんー!!」
穴があったら入りたいはまさに今である。
いきなりしゃがみ込んだ私にシーダさんがびっくりして同じようにしゃがみ込んだ。
「マ、マリコ様、だ、大丈夫ですから落ち着いて下さい」
「けして変な意味は無いんですー!」
恥ずかし過ぎて涙まで出てきた。あうう、変態聖女とか思われたら嫌だー!
しゃがみ込んだ私とシーダさんをそれぞれマートルさんとカイゼルさんが抱き起す。
「シーダ」
「マリコ様」
「「とりあえず落ち着きなさい」」
ぴったり息があった。流石兄弟。
私とシーダさんは2人にソファに座らされた。するとマートルさんがお茶を用意し始める。うぎゃ、近衛騎士隊長様にお茶用意させるとか!シーダさんも慌てて立ち上がりかけてマートルさんに止められる。
「いいから座っていなさい」
「申し訳ありません、隊長」
所在無さげにしてるシーダさんと目があった。
「あ、あの、先程はすみません。いきなりあんな事を」
「いえ、お気になさらないで下さい。その、同性には言われた事もありますしたまに男性にも…」
あわわわ!気にさせまくってるしなんかホント申し訳ない!
「普段からああいうこと言ってるとかじゃないですから!」
わたわた手を振りながら取り繕う。第一印象があれとか私聖女らしくなさ過ぎるー!
私の様子を見てシーダさんがくすり笑った。
「すみません。マリコ様は隊長のおっしゃる通り親しみやすい方のようですね」
え、マートルさんなんて話してるの私の事。
そこへちょうどマートルさんがお茶を持って戻る。私の方にお茶を置いたのはカイゼルさん。まさかカイゼルさんも手伝ってた?ぎゃー、男性2人しかも国のトップクラスの2人にお茶出しさせるとか!?
「マートルさんカイゼルさんすみません」
だだ凹みしたら2人に笑われた。
「マリコ様らしくて良いかと」
「貴女のお茶は俺が淹れたかっただけですから」
ふーにゃー!?そこでいきなりそんな笑み向けないでカイゼルさん!
あ、シーダさんがまたびっくりしてる。
「カイゼル団長、本当にマリコ様がお好きなんですね」
「っっ!?」
シーダさんの言葉にカイゼルさんが赤くなった。カイゼルさん、もしや私にする態度とか言葉って無意識なのか。
「いや、俺はその」
「カイゼル、お前も落ち着いて座れ」
促されたカイゼルさんが私の隣に座る。マートルさんはシーダさんの隣に。ん?シーダさん何となく…もしかして?
違和感の正体はまた後にしよう。
「マリコ様、お身体に不調などありませんか?」
お茶を飲んで落ち着いたところでマートルさんが聞いてくる。
「大丈夫です。怪我はしてませんし。マートルさんこそ身体は大丈夫ですか?」
あんな怪我したんだしマートルさんの方が心配だよ。
そう言ったらマートルさんが軽く顔をしかめた。シーダさんは逆に驚いたようにマートルさんを見る。あ、もしかして怪我の事シーダさん知らなかった?
「隊長、やはりあの時怪我をされていたんですか」
「マリコ様」
ちょっと咎めるように名前を呼ばれた。あう、すいません。
「仕方ありませんね。シーダ、マリコ様に治して頂いたから大丈夫だ」
「…わかりました」
渋々というようにシーダさんが頷く。
「兄上、シーダにくらいは話をしておくべきだったのでは」
「大したことはなかったから言わなかっただけだ」
あの怪我は大したことなくないよ?ちょっと?
「ですが…」
「怪我を無理に隠すのは兄弟よく似てるんだ」
私が突っ込んだら2人とも黙った。そんなところ兄弟似なくていいよ。
「カイゼル団長もですが、隊長も無茶ばかりするので大変なんです。ローレルからもよく愚痴を聞きますよ」
「頑張るのはいいけど無茶は駄目ですよねー」
シーダさんと頷きあう。予感だけどシーダさんとは仲良くなれそう。
「ローレルの奴…」
カイゼルさんがぼそり呟いた。ローレルさん南無三。
「シーダは副団長とそんな話をしてるくらい親しいのか」
「近衛と騎士団は連携も時には必要ですから情報交換は密です。そのついでに聞いてます」
を?ん?マートルさんの反応。なんかデジャブ…あ、カイゼルさんと似てるのか。ははあ、マートルさんもかあ。
私はあることに気付いてほくそ笑む。あとでシーダさんに話がきけたらいいな。
「無茶する長を持つと大変ですね」
「はい、マリコ様」
「マリコ様、そんな話をしに来られた訳ではないでしょう?」
マートルさんが話をそらしてきた。マートルさん、シーダさんにはちょっと頭が上がらない感じ?
もう少し言いたかったけどまあとりあえずやめておく。
「兄上に渡す書類がありましたからそれをお持ちしました」
カイゼルさんが持っていた書類を渡すとマートルさんが僅か目を見開いた。
「随分早いな。お前もかなり書類が溜まっていただろう?」
「はい。ですが整理をして頂きましたので」
「整理を?それ程的確に出来るのはお前以外には居なかったと思うが」
首を傾げるマートルさんにカイゼルさんは私が処理した事を話した。かなり過大評価だったからちょいちょい訂正はした。でもマートルさんもシーダさんもかなり感心したようで。
「マリコ様は優秀な方なのですね」
シーダさん目がきらきらしてる。いや!違いますから!
「いえ、このくらいは誰でも出来ますから」
手放しで褒められるほどの事じゃないからむず痒い。
つい視線をそらすとマートルさんの机の書類が目に入る。あれも整理したいなあ。けど流石に駄目だろうなあ。
「マリコ様、差し支え無ければあれも見ていただいてもよろしいでしょうか」
私の視線に気付いたのかマートルさんがそう提案してくる。
「え、いいの?私部外者だけど」
「構いませんよ。聖女様にする頼み事ではないのは重々わかってはいますが…正直手伝って頂けるならば助かります。シーダにもかなり負担をかけていて」
「私は大丈夫です、隊長」
「だがあまり寝ていないだろう?私より早くここに来ているのを気付いていないとでも?」
「ですが隊長も昨夜は寝ていらっしゃいませんよね?」
ありゃら。2人ともかなり寝不足か。ならやらないわけにいかないね。私が出来るなら手伝いたい。
「大変みたいですね。なら私の出来る範囲でお手伝いしますよ」
「マリコ様すみません」
「いいんですって。寝不足はお肌の敵ですよシーダさん。あ、でもシーダさんまだお若いからぴっちぴちですよね」
「そんな若くはありませんよ?もうすぐ26ですから」
いや、私からしたら充分若い。つか20歳くらいかと思ってた。美人羨ましい。
シーダさんの若さに微妙に凹みつつ書類に取り掛かる。
さっきみたいにしないように、と思ったけど中身を見たらすっぱり飛んでしまった。
カイゼルさんの時ほどじゃないけどやっぱりしっちゃかめっちゃかだった。
「時系列めちゃくちゃだし。あ、ここ計算違う。あ、誤字!あーもー!」
案の定先程と同じく本気モードで書類を捌いてた。
「ぜーはー……一先ずこれでカタはついた…」
目の前には綺麗に整頓された書類。うむ、よはまんぞくじゃ。
は!しまった!またやってしまった!
恐る恐る周りを見たらあれ、マートルさんが居ない。何故だ。
「あれ、マートルさんは」
「兄上ならマリコ様が訂正した書類を持って行きました」
だぁぁぁぁ!騎士団長に続いて騎士隊長まで顎で使ってしまった!
「あうう、すみません…」
「凄いですねマリコ様。本当に書類の整理が的確でした。私もそれなりには出来ると自負していましたが、見習わなければです」
シーダさんが尊敬の眼差しを向けてくる。うぐあ、恥ずかしい!
「このくらいはシーダさんも出来ますよ?というかカイゼルさんのところの書類より整理が出来てましたから楽でしたし」
そう。確かにしっちゃかめっちゃかだったけどある程度のまとまりはあったからカイゼルさんの書類ほど苦戦はしなかった。やっぱり女性がいると違うね。
「お褒め頂きありがとうございます」
「いえいえ!強いし綺麗だし事務仕事も出来るしでシーダさんの方がよほど凄いですよ」
副隊長なのだから実力は当然あるのだろう。いいなあ。私も剣が使えたら良かったなあ。
「私はまだまだです。隊長からは10本に1本とれるか否かです」
「それでも凄いですって。こんな強くて素敵で優しいし気遣いがある人が」
と、そこであっと思って私はカイゼルさんの手を握ってから続けた。
「ええと、シーダさんみたいな人が護衛だったら特に女性は安心出来ますね」
「そこで何故カイゼルの手を握ったんですかマリコ様」
うお!びっくりした!マートルさんいつの間に戻って来たの。ノックないからわからなかったし、って自分の部屋だからノックしないか。
マートルさんの指摘にカイゼルさんも何故手を握られたかわからず戸惑ったような視線を向けて来た。
「いや、えっと…シーダさんを褒めたかったんですけど、護衛として安心とか褒めたらカイゼルさんが拗ねるかなと思って1番はちゃんとカイゼルさんだってわかるようにと」
真面目過ぎるカイゼルさんは絶対気にするかなあとか。私が1番安心する護衛はカイゼルさんなんだから。
ってうおお!?カイゼルさんが真っ赤っか!え、何どしたの!
「これはこれは。マリコ様から盛大な惚気を頂いてしまいましたね」
「マリコ様もカイゼル団長が本当にお好きなんですね」
え。いやそんなつもりで言ったわけじゃなくて惚気!?惚気になるの?!
「…マリ、嬉しいというか恥ずかしいというか俺はそんな拗ねたりしないというか」
カイゼルさん動揺し過ぎて素になってる。でもね?拗ねるよね?
試しに手を離してからカイゼルさんを見つつ言う。
「マートルさんは凄く話しやすくて楽しいしシーダさんも優しくて側にいたら安心できる人だと思う。2人とも最高の護衛だね」
「………」
ほらあ。拗ねた。最近は表情にも出てるよ?カイゼルさん。
「カイゼル団長、そんなにわかりやすい表情もされるんですね」
シーダさんが指摘したらカイゼルさんが狼狽える。
「っ、いや俺はっ」
「手を握ったのはこういうわけなんです」
また私は手を握る。そうしたらカイゼルさんの表情がほっとしたように緩んだ。わかりやすすぎるよ?ちょっと?
「そんなに嫉妬していてばかりでは嫌われるぞカイゼル」
ころころ反応するカイゼルさんにマートルさんが揶揄う。
「兄上!俺は、別に…」
あ、嫌いって単語に反応した。この手の揶揄いには耐性ないなあ。冗談が軽々しく言えないね。
「カイゼルさん、大丈夫嫌いにならないから。マートルさんあまりカイゼルさんからかわないで下さいね?すぐ信じちゃうので」
ぎゅっと手を握る。ちょっと不安そうな目をしてたカイゼルさんはそれで持ち直した。
ちょ、可愛すぎないかカイゼルさん。ちょっと申し訳ないけどギャップ萌えまくりだ。
カイゼルさんを見てたマートルさんがなんとも言えない顔をする。
「純真なのはいいがそこまでだと逆に心配になるな。マリコ様、すみませんが弟を宜しくお願いします」
お願いされた。はい、頑張ります。
「純っ…兄上っ、ですから俺は別に!」
「カイゼルさん落ち着いて落ち着いて。マートルさん、もうやめて下さいって」
かなり恥ずかしかったけど思い切ってカイゼルさんにぎゅーしながらマートルさんを睨む。弟可愛いのはわかるけどね。
「隊長が悪いと思いますよ」
「やれやれ、私が悪者か」
シーダさんにも言われてマートルさんは肩をすくめる。
「マリコ様とカイゼル団長の仲の良さは噂通りですね」
シーダさんが微笑ましそうに言う。何それ?え?噂になってるの?え?
「噂、ですか?」
「おや、マリコ様はご存知ありませんか。城中と言いますか、王都中で噂ですよ。聖女様と騎士団長は相思相愛で仲睦まじいと。城では加えて弟が最近表情が柔らかくなったので人気も上がりました。勿論そうさせているのが聖女様だと言うのも合わせてですが」
ええええ!?そんな噂になってるの!?何故に!?私あんまり外出てないのに!?
「噂の出所は私は言えませんよ」
マートルさんをみたらさらり逃げられる。マートルさんが言えない…王子様かぁぁぁ!あの人、何をどう吹聴してるんだぁぁぁ!
外に聖女としては絶対出歩けないと思っていたらカイゼルさんがぎゅっとしてきた。ん?あれ?どうしたの?
「…マリコ様は、俺と噂になるのは困りますか?」
気にするポイントそこか!というか不安そうにしないでよねもう。
私はとりあえず一旦カイゼルさんと離れてマートルさんとシーダさんに向き直る。
「マートルさん、シーダさん、とりあえず一応用事は済みましたから戻りますね?またゆっくり時間がある時にお茶でもしましょう。特にシーダさんとはもっとお話ししたいです」
カイゼルさんが多分凹んでるのは何となくわかってるけどここであれ以上は恥ずかしいから駄目!
私の意図がわかったのかマートルさんもシーダさんもカイゼルさんの様子にはスルー。何気に酷い?
「マリコ様とお話しが出来るのは私も嬉しいです。是非」
「こんな私で良ければ友達になって欲しいです。なかなか話せる女子はいないので」
侍女のトリヤさんとか神官のカミーリアさんとか優しいし話しはするけどなかなかもう一歩踏み込んでは話が出来ない。シーダさんはその辺りが行けそうな気がするんだよね。
「友達、ですか?私などで良いのでしょうか」
「大歓迎ですよー!宜しくお願いします!」
「はい、マリコ様、こちらこそ宜しくお願い致します」
わーい、やった!女子友ゲット!
きゃっきゃしながらシーダさんとお茶の約束を取り付けから私とカイゼルさんはマートルさんの執務室を後にする。
カイゼルさんはと言えば、私がさっきの返事をしなかったから明らかにしゅんとしてる。そのカイゼルさんの様子にさっきは微笑ましくみてた城の人達がやや心配そうに見てくる。
気にはなるけど我慢我慢。
ていうか、来る時のあの視線は噂のせいか。城中に周知とかフレイ様は何してくれてるんだ!にゃろう、今度会ったらとっちめてやる。
帰りは道がわかってたから難なくカイゼルさんの部屋に戻る。カイゼルさんずっと無言。そこまで凹まなくてもなあ。
部屋に入ってすぐ私はカイゼルさんをぎゅーする。
「カイゼルさん、ちょっと屈んで」
「…?」
言われるがまま屈むカイゼルさんの唇に私はちゅ、とキスする。自分からとか人前では恥ずかしくて出来ないからね!
「マリ?」
「噂になって困るわけないでしょ?恥ずかしいのはあるけど。もうちょっと私がカイゼルさんを好きって気持ちに自信もってよ」
「…悪い、わかっててもつい」
カイゼルさんがむぎゅーと抱きしめてくる。普通不安になりやすいのはどっちかと言ったら女性の方な気がするけど、私達の場合カイゼルさんが先に不安になるから私がなる暇がないなあ。
「俺の気持ちは重くないか?」
「大丈夫。嫌なときははっきり言うから。あー、でも嫌とか全く無いからね?」
嫌、と言ったら微かに身体が強張ったからすぐ否定する。自信があるときは自信満々なのなあ。
「ありがとうマリ」
「私は、本当にカイゼルさんが大好きだからね?…愛してます」
ああああ!愛してるは恥ずかしいぃぃ!好きより凄まじく恥ずかしい!
でも、それを聞いたカイゼルさんは嬉しそうに微笑んではキスのお返しをしてきたから、たまには言ってあげないとかな、と思った。




