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アラフォー聖女様は突き進む!  作者: 流 疾風
召喚されたその先で〜聖女になって突き進む!〜
13/19

13話 お手伝いすることになりました

ご無沙汰ですみません。色々ばたばたしておりました。

宜しくお願いします〜。

寒いな、と初めに思った。ここ最近は抱き枕宜しくずっと抱き込まれて寝ていたから。ふっかふかのお布団だから実際には寒くないんだけど寒かったのだ。

何故だろ、と寝ぼけた頭でぼんやり寒い理由を探す。ぱたぱた布団を叩いてない事に気付いた。いつもの温もりがない。

ゆるゆる意識が浮上する。目を開けるとベッドには私1人だった。カイゼルさんが居ない。

外を見たらまだ暗い。夜明け前かな。時計を見たら6時。早い。

どこに行ったんだろ。起きるにはまだ早いよね?

私はそのまま起き上がるとぺたぺた歩いて隣の部屋に行く。カイゼルさんの私室に。あれ、ここにも居ない?なら執務室?またぺたぺた歩いて更に行けば居た。執務室の机に座って仕事してた。きっちり騎士服も着てる。かなり前から起きて仕事してるのかな。って、寝てる?それって。

昨日は散々フレイ様とマートルさんにからかわれた後解放されてから疲れてしまった私は先に寝てしまった。カイゼルさんは溜まってる書類を片付けるからって。夜中にたぶんぎゅーされたような気がしたからベッドには来たはずだけど、数時間くらいじゃない?

問いただそうと声を掛ける前にカイゼルさんが気配に気づいて顔を上げて…すんごい驚愕顔した。久々に見たなって、うわ、どしたの、ってうぉぉ!?

積まれた書類が崩れるのも構わずにすっ飛んできた。相変わらず移動速度おかしいな!?カイゼルさん!?

「馬鹿、何て格好で出てくるんだ!」

「へ?」

慌てたように上着を脱げば私にかける。あ、カイゼルさんの匂い。うふふ暖かいー。

服に顔をすりすりしてたらカイゼルさんが額を押さえて天井を仰ぎ見てる。どしたの。

「お前は全く…可愛いというかなんと言うか」

「カイゼルさん?」

可愛い要素あったかしら?はて?温いものにすりすりしたくならない?あれ?

「それはいいとして!とりあえず戻れ!」

肩を抱かれながら執務室を出されて私室を過ぎて寝室まで戻された。

「そんな格好で執務室にまで来て、誰かに見られたらどうするんだ!」

そんな格好。パジャマだけどね?

こんな世界だから寝間着はスッケスケネグリジェとかかと思ってたけど、意外にも普通の寝間着もあって今着てるのはワンピース型のパジャマ。生地が柔らかで気持ちいいのだ。まあ、人前に出るのは憚られるがカイゼルさんにならいいかなとか。あと、一応カイゼルさん以外は居ないなって魔力で確認はしたし。

って言うと怒られた。

「だからってそんな格好でくる奴があるか!」

「あー…はしたない女性は嫌とかか」

だらしない自覚はある。うちではかなりずぼらな格好だったし。淑女?すいません置いてきましたどこかに。

「それもあるが、その、だな…」

ん?ん?急にしどろもどろになってどしたの。

「…俺だって一応、男だぞ?お前は警戒心なさ過ぎだ。好きな女のそんな無防備な姿を見て何も思わないと?」

え、まさかそんな?毎日ぎゅーして寝てるのに?

「毎晩寝てる時は襲わないのに、今更?」

「やましい気持ちは確かにあるが寝る時はそれより先に睡眠が勝る」

やましい気持ちあるって言った!正直に言ったから許してあげよう。

そういえばカイゼルさん、私抱き締めて寝るとすぐ寝ちゃうな。安眠枕か私は。というか。

「性欲より睡眠欲が勝るって、もしかしてカイゼルさん眠れてなかったの」

「……聖女の水晶が召喚の兆しを見せ始めた辺りからあまり」

一瞬躊躇したみたいだけど素直に話してくれた。

つまり、2ヶ月くらいはまともに眠れてなかったのか。そういや最初に怪我を治癒した時も凄く疲れてたみたいだし。物理的な時間の無さもあるだろうけど、ストレスとかプレッシャーとかもあるんだろうなあ。

「今は?大丈夫?」

「ああ。マリを抱いて寝ると熟睡出来るんだ」

たー!甘い!甘いよカイゼルさんその声!とろんとしたボイスもう!ああもう!

「そ、そのお役に立ててるなら、嬉しいデス」

「お前が居ないともうまともに寝られないな」

ぎゅーと抱き締められる。それは私もだよカイゼルさん。大きくて優しくて暖かいカイゼルさんにぎゅーされて寝るの凄く安心する。

「…そのうちただ寝るだけですまなくなったら、悪い」

寝るだけですまなく……ああああ、はい!そうですね!

言われた意味を理解すれば顔が熱くなる。ついカイゼルさんの胸元をぺちぺち叩いてしまう。

叩かれたカイゼルさんと言えば、あれ、表情が暗い。

「嫌なら共寝はやめる」

はいそこ!しゅんとするの反則!ズルイでしょ!そんな顔されて嫌とか言えないしそもそも嫌じゃないし!つか最近なんか可愛いよカイゼルさん!

「嫌じゃないから。もう、そうやって1人で判断して勝手に落ち込まない」

「ありがとう、マリ」

私の答えに嬉しそうにカイゼルさんは微笑むと頬に柔らかくキスしてきた。

私の言葉に一喜一憂するカイゼルさん。あんなに強くてしっかりしてて完璧なのにこんな一面があるのがまたギャップ萌。でもそんなカイゼルさんを知ることができてますます好きになる。これ以上惚れさせてどうする気だまったく。

「格好悪くないか?俺は。騎士団長のくせに情け無い姿ばかり晒して」

「そんなこと思うわけ無い。その、私だから見せてくれてるんでしょ?」

曝け出してくれてるのは信頼の証だと思ってるんだけど。信じられなきゃ弱味なんて見せられない。

「お前だから見せられる。お前の言葉に動揺したり不安になったり、嬉しくなったり幸せになったりする。こんな姿はマリにだから見せられる」

「それは私も同じだよ」

カイゼルさんになら全部見せられる。不安があっても話せる。失敗しても乗り越えられる。

「俺は本当に幸せ者だな。マリのような伴侶を得られて」

「それは私の方だよ?カイゼルさんみたいな最高に格好いい人を捕まえちゃったんだから」

2人して見つめあって笑う。うん、ホント幸せだ。って、忘れてた。

「カイゼルさん、ちゃんと寝た?」

そうだ、その話をしたかったんだ。

あ、目を逸らした!やっぱり寝てないな?

「カイゼルさん?」

じっと見つめる。誤魔化されないようにしなきゃね。

「1週間も休んで居たら書類がかなり溜まってしまってな。ローレルにしてもらってはいたが俺にしか処理できないものもあるから」

「それで徹夜?」

「いや、2時間は寝た」

それは寝たうちに入らない!ほぼ徹夜と同意!

「病み上がりなんだから無理したら駄目だよ。ただでさえ今迄眠れてなかったんでしょ?」

「だが、これ以上溜めると皆に迷惑がかかる」

そう言われると返す言葉に詰まる。確かにトップで書類が滞ると下は困るのだ。課長が溜め込んだせいで危うく納期に間に合わないところだったとかよくあった。

「もう少し処理したらきちんと休む。だからお前はまだ寝ていろ」

そう言ってカイゼルさんは私をベッドに寝かせると仕事に戻ってしまう。

そう言われても、完全に起きちゃったからなあ。仕事行くときに起きてた時間だから尚更。

それに。邪魔かもしれないけど側にいたい。

そう思って私はいつもの服に着替えると再び執務室のカイゼルさんの元に戻る。

カイゼルさんはさっき散らかしてしまった書類を整理してた。

私の気配を察してカイゼルさんが振り返る。

「寝なかったのか」

「目が覚めちゃったし、カイゼルさん心配だから」

「無理しなくていいんだぞ」

「その台詞そのまま返す。無理してるのはカイゼルさんだし」

言いながらカイゼルさんが書類を拾うのを手伝う。

ちらり目に入った文章の中に数字を見つけた。騎士団の武器予算?ん?おや?

今更なことだけど私はこちらの世界の文字は難なく読める。摩訶不思議だけど日本語に見えてるんだよね。どんな理屈で変換されてるのかなんて考えない。当然だけど言葉もだ。

「あれ、ここ間違ってる」

計算おかしいな。あ、成る程、ここを一個飛ばしてるのか。

私は指を空で動かしながら計算する。子供の時にそろばん教室に通わされたから暗算は得意だ。くせで指がそろばんを弾く。

「これが正しいはず」

言いながら正しい数字を横に書いてしまって。あ、まずかったかな?

「勝手に書いちゃってごめん!というか私が見ていい書類だった?」

「いや、ここに置いている書類は機密ではあるがお前が見ても問題はないな。言いふらすわけじゃないだろう?」

「まさか!書類の重要さはよくわかってるし」

社内では扱いが雑なそれも社外に持ち出しとか以ての外、なんてのはざらだ。まあホントは社内での扱いも雑にしちゃいけないんだけどまだまだ紙書類が多い昨今、そんな事言ってられないのだ。

「それより、マリは計算が早いな。それに書類の理解も早い」

私が計算し直した書類を見て感心したようにカイゼルさんが言う。そんな言われるほどのことじゃないから恥ずかしいなあ。

「事務処理が私の仕事だったからね。このくらい出来ないと回らないし」

計算間違いよくあったなあ。新人くんが一桁間違えて請求額がとんでもないことになった事件があった。あれは冷や汗が出たよ。

そうだ。いいこと思いついた。

「書類整理だけなら手伝おうか?」

「いいのか?だがこんなのは聖女のやる事じゃないぞ」

困惑するカイゼルさんに私は首を振る。

「いいのいいの。慣れてるし。それにカイゼルさんの役に立つなら嬉しいし」

「助かる。ありがとうマリ」

ぴゃ!とろ甘ボイスに唇にキスまできた!とぁぁぁ!予備動作がないからわからん!

「く、口にするときはこここ、断りいれてよっ」

「したい時にするから無理だな」

にっこり笑っても誤魔化されない、ない…くぁぁぁ!誤魔化されてしまうー!くそー!許せてしまうんだもうー!悪いか、好きだからだよもうああ!

確実に真っ赤だな今私。

そんな甘い雰囲気で始まった書類の整理だったけど、やり始めて私の中の何かがピキリときた。

書類がまったく整理されてない。

何故こんなにしっちゃかめっちゃかなんだ!そもそも時系列じゃないし種類別じゃないしわかりにくいったらありゃしないよ!

気付いたら会社にいた時のように愚痴りながらも書類を捌きだしていた。

「何でこれがここに挟まってるのよ!そもそもこっちにあるのが間違いで…ああ、誤字!こんなの間違えてるとか信じられないし!見直ししたのちょっと!また計算違うしダブルチェックくらいしろっての!」

誤字訂正して計算直して急ぎの案件だけ押し付けて(たぶんカイゼルさんに問答無用でしてた)分類別にして訂正のやり直しを依頼して(途中でたぶん騎士さんの誰かが来てたから渡したような)なんてやっていたらいつの間にか昼だった。

「はー、ひと段落ついた…」

「…だ、大丈夫か?」

恐る恐るという風にカイゼルさんが声を掛けてきた。え、どしたの?あれ?引いてる?

は!しまった!?つい気合い入れ過ぎて本気でやり過ぎた!!

「うあー、えっと…ごめんなさい!」

「いや、謝る事はない。何というかマリがあまりに凄過ぎて」

あー!カイゼルさん引いてる!やだー!怖い人とか思われたー!?

「あれはあのその!?つい力が入り過ぎて!?あぅぅう、嫌いにならないでー!」

おっかない女とか思われたらやだー!

机に突っ伏して凹んでたらひょいと身体を起こされた。それからぎゅー。どうでもいいがぎゅーがなんだかデフォルト化しつつある。

「馬鹿だな。このくらいで嫌うわけがあるか。どちらかと言えば見惚れていた。書類を的確に捌くお前は格好良かったぞ」

え、格好いい?そんな事言われたことないよ。おっかないとかはよく言われたけど。褒められるのは何かこそばゆい。

「俺のことも顎で使ってたしな」

「うぇ?!ご、ごめんなさいぃ…」

仮にも!騎士団長様を顎で使うとか!やらかし過ぎだ私!

「気にするな。おかげでかなり捗った。一応俺もやってはいたつもりだったが…出来てはいなかったみたいだな」

苦笑い浮かべるカイゼルさん。

「それは仕方ないよ。忙しかったんでしょ。むしろこれを1人で捌いてたカイゼルさんが凄いって」

量から言って1人でやるものじゃないと思う。私は簡単に捌いただけだからできたけど、ちゃんと処理するには2、3人は必要な量だった。

「誰か補佐とかつけた方がいいんじゃない?」

「いや、今だけだからな。普段からこんなに多いわけじゃない。討伐が落ち着けば処理可能な量にはなる」

でも、それって落ち着かない限りはこの量って事だよね。よし、うん。

「なら、私がそれまで手伝うよ。私でも役立てそうだし」

「そこまで甘えるわけには」

「いいよ、どうせ側にいるんだしやる事あまりないし。それにただ整理するくらいしか出来ないんだし」

「だが…」

渋るカイゼルさんのほっぺをむに、とつまむ。相変わらず柔らかいな。

「私がカイゼルさんの力になりたいの」

聖女ってだけじゃなくて、自分の力で役に立ちたい。私だけの力なんてたかが知れてるけどさ。

「かなわないな、マリには」

カイゼルさんが頬を摘んでる私の手を掴むと手のひらにキスした。ふは、くすぐったい。

「なら、頼む。本音を言えば手伝って貰いたかった。あれだけ捌けるなら十分助かる。それに…」

「それに?」

「お前がずっと側に居てくれるのが嬉しい」

やだもうだから声が甘いし顔が蕩けてるし!ふひゃ、正面からぎゅーがきた!毎度だけど身長差があるからぎゅーされるとすっぽりなんだよね。

「ちゃんと仕事しないとダメだよ?」

「わかってる」

甘さ度が増してる気がするけど一応信じよう。まあ、私も側にいるのは嬉しいからいいけど。え?今でも十分側にいるだろって?いいの!べったり過ぎとか言われても気にしない!

その時くきゅう、と私のお腹が鳴った。あ、お昼だったけ。

くす、とカイゼルさんが笑うのが聞こえた。笑ったな?と、またくきゅう。これは私じゃないや。カイゼルさんの顔を見るとちょっと赤くなってる。

「昼食にするか」

「そうだね。書類はとりあえずもう大丈夫?」

急ぎは片付けたつもりだけど抜けがあるかも知れないからね。

「大丈夫だ。一つだけ兄上の所に持っていく必要があるが」

カイゼルさんが書類の中から一つを手に取る。確か城内警備の報告書だったかな?主要なメンバーに回覧してるっぽかったような。だからお兄さんとこに持ってくのか。

「じゃあそれ私が持っていくよ。カイゼルさんは待ってて」

ひょいと書類を取り上げて行こうとすると腕を軽くつかまれた。おや、なんだろ?

「何を言ってるんだお前は。自分の立場と状況を忘れたのか?城の中とは言え1人で行かせられるか。俺はお前のなんだ?」

呆れたように言われてはたと思い出す。

「あー……はい、護衛です」

うん、ちょっと忘れてた。カイゼルさんは私の護衛でした。そして私は聖女でした。護衛置き去りにしようとするとかダメな警護対象ですいません。

「お前は本当に大人しくしていないな」

「ごめんなさい」

「そんなお前でも俺は好きだが」

ちゅ、って唇!キス!あぅぁぁぁ!もうホント不意打ちっていうか好きな時にほいほいするんだから!何故だ、身長差があるから屈む時間があるはずなのに!いつもカイゼルさん素早くてさりげないからわからなすぎる!

赤くなって悶えてる私をカイゼルさんは心底幸せそうにみるもんだから、私は恥ずかしくなってさっさと書類を届けに行くために部屋を出た。



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