医者と患者のショートコント
――診察室にて
患者
「こんにちはー」
医者
「ヘイらっしゃい!」
患者
「寿司屋か」
医者
「いえここ病院ですよ?」
患者
「分かってるよ。いや先生が寿司屋みたいな挨拶するから」
医者
「で、何を握りましょうか?」
患者
「やっぱ寿司屋じゃねーか」
医者
「それで今日はどうなさいましたか?」
患者
「ええ、それがちょっと熱っぽくて……」
医者
「あー、ガンですね」
患者
「そんなわけあってたまるか」
医者
「違いますか?」
患者
「当たり前だろ。熱っぽいだけでガンだったら日本中ガン患者だらけになるわ」
医者
「それで、熱っぽい以外に何かありますか?」
患者
「昨日あたりから咳も出て来ました」
医者
「もしかしてタバコを吸っていますか?」
患者
「いえ、吸ってません」
医者
「ガンですね」
患者
「だから何でだよ! さっきから帰納法ぶっ壊れてんじゃねえか!」
医者
「あははっ、すいません。ちょっと『ガンです』って言ってみたかったんですよ!」
患者
「どんな願望だよ」
医者
「じゃあちょっと喉の様子を見るので、お口を開けてもらっていいですか?」
患者
「んあっ」
医者
「あはっ。歯並び悪っ」
患者
「うるせえよ!」
医者
「矯正した方が」
患者
「歯医者かここは! ちゃんと喉を見ろや!」
医者
「じゃあもう一回お口を開けてくださいねー」
患者
「んあっ」
医者
「ふりかけ掛けていきますねー」
患者
「やめろよ! 俺の口は白ごはんか!」
医者
「すいません。お腹空いてるのかなって思って」
患者
「空いてねえよ! 空いててもふりかけじゃ咽るだけだろうが!」
医者
「じゃあもう一回お口開けてください」
患者
「んあっ」
医者
「花刺していきますねー」
患者
「生け花か! 何なんだよ、さっきからふざけやがって!」
医者
「すいません、今度こそ真面目にやるんでもう一回だけ口を開けてもらっていいですか?」
患者
「……んあっ」
医者
「じゃあ胸の音聞いていきますねー」
患者
「おい口開けた意味!!!」
医者
「胸の音を聞くのでソックスを脱いでもらって良いですか?」
患者
「足湯か!」
医者
「でも患者さんの心臓は足元にあるんですよね?」
患者
「あってたまるか! どんな人体構造だ!」
医者
「じゃあソックス以外を脱いでもらってもいいですか」
患者
「AVかこれは!」
医者
「じゃあスリーサイズ教えてもらっていいかな?」
患者
「何AVみたいなインタビューに移ってんだよ!」
医者
「好きな食べ物は?」
患者
「あーもう! リンゴだリンゴ!」
医者
「ガンですね」
患者
「絶対言うと思ったわ!」
医者
「最近ゴリラに会ったのはいつですか?」
患者
「会ったことねえよ! そんで何のための質問なんだコレは!!」
医者
「はい。分かりました」
患者
「何が!?」
医者
「大したことありませんね。ただの風邪でしょう」
患者
「だよな! 何にも診察されてねえけどそうだよな!」
医者
「ということで手術しましょう」
患者
「何で!?」
医者
「軽く肺だけ摘出しましょう」
患者
「全然軽くねえ! 命に関わるヘビー級じゃねえか!」
医者
「心配しないでください。僕も心臓を摘出したことがありますから」
患者
「アンタ今どうやって動いてんだよ!!?」
医者
「分かりました。じゃあ注射だけで良いですから」
患者
「嫌だよ!」
医者
「僕の血を注入していきますねー」
患者
「お前心臓無いんだろ!?」
医者
「先っぽだけでいいですから!」
患者
「先っぽもクソもあるか!」
医者
「ちょっとズボッとするだけだから!」
患者
「どこに刺そうとしてんだよ! ああもういいよ、俺は帰るからな!」
医者
「また来てくださいねー」
患者
「もう来ねえよ! このヤブ医者がっ!」
医者
「ガーン!」
患者
「やかましいわ!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!