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ダンジョンコアを手に入れたのでチートする  作者: くろのわーる
フェイズ2 救援編

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美嘉 後編その4



 私と紅が悪魔デーモンと対峙していると蒼と翠も包囲に加わってくる。


 傍から見れば、4対1と数字の上では圧倒的にこちらが有利のはずだがそう思っている者はここにはいない。

 特に目の前にいる悪魔デーモン自身が微塵も不利だなんて思っていない様子を見せる。


「小賢シイ、下等生物ドモが、調子二乗ルナよ!」


 人の言葉を喋ることにも驚きだがこの悪魔デーモンの真の恐ろしさは弱い者から狙う狡猾さと正門を破壊した能力に漢字が混じった文章からも解る知能の高さだと考える。


悪魔デーモン如きが私達に敵うなんて思わないことね!」


 わざわざ挑発するのは今、私に出来る最大限の強がりだけど、ちゃんと意味はある。


 現状での最優先はみんなを逃がすこと。

 その為だったら私が狙われようとどんな強がりだって言える。


「まずはオ前達カラ血祭りにシテヤル!」


 再びコウモリの翼を羽ばたかせるとこの中で一番レベルが低く、消耗が大きい翠に狙いをつけて襲い掛かる。


「そうはさせないわ!」


 翠を守るべく鞭を振るい、紅と蒼も悪魔デーモンに飛び掛かるが……。


「カカッタナ」

 

 悪魔デーモンは身体を翻すと私達の攻撃をヒラリと躱し、目標を蒼に変える。


「まずは、一匹目!」


 翻した身体で悪魔デーモンは自慢の角で蒼に向かって、突撃する。

 意表を突かれた私達は咄嗟に動けず、蒼もちょうど飛び上がった体勢だった為、防御すら出来ず直撃を受けてしまう。


フギャー!?


 突進の直撃を受けた蒼は桜並木に激突して、その勢いを弱めたが隣接するグランドに飛ばされ、ゴロゴロと転がり止まる。


 遠くて分かりづらいが僅かに動く四肢からかろうじて、息をしているといった状態にまで追い込まれたと判断する。


「蒼っ!?」


 蒼に気を取られている間も紅と翠と悪魔デーモンの攻防は続いており、私の油断が招いた結果、翠もやられてしまう。


フギャー!?


「そんな!?翠まで!?」


 戦闘が開始して、1分もたたないうちに蒼と翠が戦線離脱してしまい早くも窮地に追い込まれる。


「アッハハハ!ドウシタ?お前達の力はコンナモノカ?」


 優越感に浸り、上からものを言う悪魔デーモンの高笑いが響く。


「紅!合わせて!インフェルノ!」

ニャオン!(キャットフレア!)


 美嘉と紅が放った高レベル炎魔法は悪魔デーモンを包み込み、陽炎を伴って周辺の温度を一気に上昇させる。


「グアァァァ!?クソッタレがー!!」


 灼熱の炎の中で悪魔デーモンは藻掻き苦しむ

が高位とされる魔物とあって、美嘉と紅が放った炎魔法ですら致命傷とならず、耐え切ってしまう。


「オォォ!!」


 そして、掛け声とともに自身が内包する魔力を全解放することで燃え盛る炎を吹き飛ばしてしまった。


「そんなっ!?」


 未だかつて破られたことのない渾身の一撃だった魔法を吹き飛ばされ、美嘉の焦りは加速する。


 美嘉は自分達の魔法が効かなかったと思い、焦っているが実際はそれなりに効いていた。

 炎が吹き消えて、そこから現れた姿は片方の翼を燃やし尽くされ、残りの翼も見るに無惨な状態になっている悪魔デーモン


 その負傷した姿にもう一度放てばと気持ちが逸り、致命的な隙を晒していた。


「紅!もう一度!」

「サセルカぁ!!」

「きゃああ!?」


 自分よりも下等な生物に手傷を負わされ、激昂した悪魔デーモンもてあそぶことを止め、殺意の籠った魔法を使う。


 悪魔デーモンから放たれた暗黒色の魔法が魔法の予備動作に入ったことで無防備になった美嘉に直撃する。


「手古摺ラセヤガッテ!この痛み何倍にもして返シテヤル!!」


 深刻なダメージと状態異常で倒れ伏すご主人様を庇い守るように紅が上から覆い睨みつける。


「キィェェェ!!!」


 紅に守られながら私は状態異常で成す術なく、魔力を高める悪魔デーモンを動けない身体で見つめていた。


 脳裏に浮かぶのはこれまでの人生の記憶。


 お兄ちゃん達が戻ってきてから色々なコミュニティで手伝いをした。


 どのコミュニティもみんな、その日その日を生き残ることに精一杯で、揉めた事も少なくなかったけど、最後はお兄ちゃんの肉体言語で円満になったっけ……。


 フェイズ2になった時、運悪く探索者登録を済ませたばかりで混乱に巻き込まれて、もう駄目だと思った時、ヒーローのようにお兄ちゃんが助けてくれたんだっけ……。

 優斗さんと出会ったのもこの頃かぁ……。


 学校で授業を受けていたら先生に呼ばれて、お兄ちゃんが大怪我を負ったって知らされて、お父さんと病院に駆けつけたこともあったな……。

 お兄ちゃんって、ホント無謀なんだから……。


 最後に浮かんだのは学校で友達と楽しく過ごした思い出。

 その時の友達はこのコミュニティにいる。


 体は動かせないのに目から溢れる涙は頬を伝う。


「(無事にみんな逃げてくれたかな……)」


 悪魔デーモンが溜め込んだ魔力を魔法に変換し、放とうとするのを前に私は諦めから紅の温もりを感じながら目を瞑った。


「(ごめんね、みんな、紅、蒼、翠)」


 悔しさや悲しみ、後悔を呑み込みいつかはこういう日がくるかもしれないと覚悟はしていたはずなのに…………。


 なのに聞こえてくる友人達の声。


「美嘉先輩っ〜!!」

「陣内先輩っ!立ってぇ!!」

「陣内っ!諦めるなぁ!!」

「美嘉っ!負けないで!!」


 どうしてみんながいるの?逃げたんじゃないの…………。

 このままじゃ、みんなが悪魔デーモンに!!


「アッハハハ!ムシケラトモドモ、消シテヤル!」


 獲物を見つけた悪魔デーモンは狂気の笑みを浮かべながら私と私の後ろにいる友人達をまとめて始末しようと魔法を放った。


 その行為が私に最後までみんなを守りたい気持ちを奮い立たせた。


「(紅、最後に友達を守る力を貸して!)」


ガァオォォ!!


 紅の咆哮を切っ掛けに私の中に眠っていた力が目覚めるのが解った。



魂の絆チェインソウル!!スカーレット!!!』



 最後の力を振り絞り、喉が張り裂けんばかりに声を上げる。


 テイムのスキルをカンストさせてからも今まで一度も使えなかったテイマーの奥義。


 てっきり私には使えないのだと思ってたのに……。

 土壇場で使えるなんて。


 掛け声に合わせて、これまで以上に私と紅が魂で繋がる。


 その瞬間、辺りに赤色の魔力が溢れ、私と紅は炎の柱に包まれた。


 悪魔デーモンから放たれた魔法は炎の柱に呑まれて、掻き消される。


「ナ、ナンダ?コレは……」


 狼狽する悪魔デーモンを余所に激しく渦巻き、燃え上がる炎の柱が吸い込まれる様に収束していく。


 炎が収まってもコンクリートはマグマのように赤熱し、周囲は高温の熱気に包まれていた。


 その熱気を放つ中心にはテイマーの奥義を解放し、熱情と冷静の狭間に至った美嘉が立っている。


 傍にいたはずの紅の姿はなく、美嘉の姿はさっきまでと違う様相を呈していた。


 自慢の黒髪だった美嘉の髪はまるで紅とお揃いの色に変わり、頭にはネコ耳が生え、お尻からは靭やかなしっぽが生える。


「先輩…………最高です」


 告白に失敗した後輩は離れた場所から、美嘉のことを見守っていたが思わず呟いていた。


 彼が好む真の属性が判明した瞬間でもあった。


 溢れ出す力。今まで感じたことのない高揚感と一体感。

 自身の存在がこれまでとは違う上位のステージに立っている実感があった。


「私はもう負けないし、決して諦めない!」


 烈火の如く燃え上がる闘志は悪魔デーモンを怯ませる。


「ナ、ナンダ?コノ俺が怖じ気ズイテいるノカ?ソンなことアリエナイ!」


 悪魔デーモンが抱いた戸惑いは緩みを招いた。


 人の倫理観を持ち合わせていない悪魔デーモンに付き合う必要はないと理解した美嘉は地を蹴り、相手へと迫る。


 美嘉が踏み出した地面は小爆発を起こしたように亀裂を刻む。


「ナッ!?ゴォボォッ!?」


 激し過ぎて点滅しているように見える赤熱した美嘉の拳が悪魔デーモンの身体を捉える。


 みんなを守りたいという想いが込められたその一撃の衝撃は悪魔デーモンの身体を簡単に貫き、後方にあった防壁も貫き、市街地にまで続く衝撃の傷跡を創る。


「まだよ!百花繚乱バーストクリムゾン!!」


 無数に繰り出される美嘉の拳は一撃ごとに悪魔デーモンの身体を燃やし消していく。


 その度に辺りには夏祭りに打ち上げられる花火のクライマックスのような音や光が響き、悪魔デーモンの叫びすら消していく。


 どれだけ打ち込んだのか悪魔デーモンは完全に消滅した。



最後はまさかの肉弾戦。そして、まさかのその5に続く。


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