美嘉 中編
皆様、ごきげんよう
私達が別行動をとるようになってから半年以上が経ちましたわ。
この間に私は誕生日を迎えて、17歳になったのよ。
本当なら高校に通い、友人達と一番楽しい時期を過ごしているはずなのに今の私は戦いとサイドステップに明け暮れる日々。
悲しいことに華の女子高生とは縁遠い生活を送っていますの。
あら?思い出したら目から涙が溢れ出してきましたわ。
「美嘉!オークが一匹そちらに行くぞ!」
お父様の掛け声で無理矢理、涙を引っ込めるとぶつけようのない怒りを込めて鞭を振るいます。
「ごきごんよう!」
ヒュッ!パンッ!ヒュッ!パンッ!
私の振るった鞭はオークの身体にそれはもう綺麗にエックス字を描いたの。
オークは想像を絶する痛みに防衛本能からか自ら脳の回路を断ち気絶しましたわ。
ですがこれだけで終わらせる気はありませんわよ。
鞭を一旦引き戻すとさっきとは違い、緩めに鞭を振るいスナップを利かせて、オークの足を絡め取ってあげましたの。
鞭はオークの足に巻き付くと、ジューと音を上げながら足を焼きましたがまだ意識は戻らないようですわね。
そして、足に巻き付けたまま優雅に鞭を引き戻すとあら不思議!!モーニングスターならぬモーニングオークの出来上がり。
「ごめんあそばせ!おほほほ!」
私は遠心力で振り回すと残るオークにモーニングオークを激突させました。これが決め手となり、戦闘は終焉しましたわ。
戦いが終わり、いつものように小休憩をしていますが半年前とは変わったところがありますの。
私達はアイテムボックスからオシャレなテーブルとイスを出して、テーブルクロスを敷くと以前とは違い優雅にティータイムしていますのよ。おほほほ。
何故、こんな喋りなったかと言うとこれには深い深い訳がありますの。
切っ掛けは沙耶さんのお母様である直子様からの提案という名の教育でしたわ。
私達は半年もの間、この荒れ果てた世紀末を殺伐と過ごしてきてしまった。
お陰様で逞しくはなれましたがそれと同時に悲しいことにある弊害が生まれてしまいましたの。
……そう、それは女性らしさの欠如。
未だに世の中は安定しませんの。
その日その日を生きる為に必死だったのだからこそ、それは仕方なかったのだと思われますがそれを良しとしない方がおられましたの。
それは直子様よ。直子様は日々、私や沙耶さんから急激に失われていく女子力を憂い、先のことを心配していたわ。
そこでとられた対策が淑女教育の実施。
とはいえ、直子様も淑女教育を受けた事がある訳ではなかったので私達がとった行動はダンジョンポイントで『淑女』スキルの獲得だったの。
この『淑女』スキルを見つけれたのは僥倖だったと言えますわ。
淑女スキルは礼儀作法から言葉使い、女性らしい仕草に補正が掛かる極めて優良性が高いスキルと言えましたから。
ちなみにお父様には紳士スキルを修得させましたので私達のパーティーには現在、紳士淑女しかおりませんのよ。おほほほ。
なので勿論、私も含めてドレスアップしていますわ。
お父様はタキシードを着こなし、紳士の鑑のように私達のお話に相槌を打ち、聞き上手に徹していますし、直子様は薄い黄色のドレスを沙耶さんは淡いピンクのドレスで私は紅いドレスを召していますの。
「美嘉さん、どうやら招かれざるお客様がお見えになられたようね」
「そうみたいですわね、直子様」
淑女にとって、ティータイムは神聖な時間ですのにまったく無粋な方もおられたものね。
本日の茶会長である私は皆様を静止して、ちょっと「お花を摘みに行ってきますわ」と言って、紅と一緒にお外へと出ました。
そうそう、紅といえば私の成長に伴い大きくなりましたの。
今では大人のゴールデンレトリバーくらいの大きさになっていますわ。
ビルから外に出て道路を見渡せば、そこには腰布1枚でドレスコードに引っ掛かるわ、招待状もお持ちにならないオーク方がいましたの。
私は呆れてものも言えないとはこの事だと悟りましたがだからと言って、注意しないのは淑女として相応しくない行いだと思いましたので心を鬼にして一喝しますわ。
「貴方達、ここは天下の公道。そんな格好で彷徨いて、良い場所ではなくってよ」
ブヒ!ブヒ!ブー!
「あら?見た目通り品性のかけらもないのね」
私は超一流のテイマーとなってからモンスターの言葉も理解出来るようになりましたがオークはやっぱり駄目ね。
ここにとてもじゃないけど、書けないことを言うんですもの。
仕方がないと言えば、仕方がないのかもしれませんけど……。
確かに私は豊胸スキルで……ゲフン!ゲフン!
大人の身体へと成長した私にはたわわな胸部装甲が備わっていますのでオーク達が情欲を催すのは当然でしょうがでもそれを許すかと言えば、別ですけどね。
「貴方達の様な下品な方は土へと還りなさい」
最近、覚えたばかりでお気に入りの『樹木魔法』を使用することを決めた瞬間でした。
「荒れ果てた大地に紅き雫を捧げる」
しなやかに伸ばされた指先から私の魔力が溢れ落ちて、大地に染み込んでいく。
「地の底より出でし紅き茨よ、私が捧げし雫を糧に目覚めよ」
紅き茨がオーク達の足から胴、胴から頭へと絡み付き、全身を覆い尽くす。
ブモォォオー!?ブモォォオー!?
茨に包み込まれたオーク達は身体に刺さる棘の痛みで苦しみ、恐怖するがそんなことで私に対しての無礼な失言を取り消すつもりは毛頭もありませんわ。
「逃げ場を塞ぐ茨の檻よ、罪人の血を吸い、綺麗な薔薇となりて、私を喜ばせなさい」
丁寧に紡がれた言葉で紅き茨は躍動し、オーク達の血を最後の一滴まで吸い尽くそうと脈動する。
血を吸う度に蕾が大きく膨らみ、吸い尽くす頃にはオークはミイラのように干からびることでしょう。
全ての血を吸った蕾はやがて、開花して真っ赤な力強い大輪の薔薇を咲かせました。
「まぁ!美嘉さん。素敵な薔薇ね!」
「本当にいつ見ても美嘉さんの薔薇は綺麗ね!」
さっきから近付いて来ていることには気付いていましたけど、淑女同志である直子様と沙耶さんが私の作品を見て感嘆の声を上げますわ。
まあ、超一流テイマーにして、超一流フラワーアーティストの私に掛かれば、人を感動させることなど造作もないことですから。おほほほ。
皆様と今回の薔薇について、品評をしているとふとある言葉を思い出しましたの。
悪党の血ほど、綺麗な花が咲く……。
そう言えば、そのようなことを誰かが言っていたわね。
あの方もひょっとしたら淑女だったのかしら。なんてね!
「このオークの薔薇は綺麗ですし、このままにしておきませんこと?」
「そうですわね。オークの薔薇にはオークを遠ざける効果がありますのできっと役に立ちますわね」
私は沙耶さんの提案を快く引き受けました。
一週間程で枯れてしまうのですがその間はこの地区に安定をもたらしてくれることでしょう。
一通り、大輪の薔薇を愛でると私達はドレスの裾を翻し、足取り軽やかに神聖なティータイムの続きをする為に会場へと戻りましたが招かざる客のせいで折角の紅茶が冷めてしまいましたわ。
まったくもう!
皆様、『ダンジョンコアで禁断の果実に手を出したお嬢様』は如何でしたか?
……そうですか。
次話は来週の水曜日、同じ時間です。
それではごきげんよう!
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