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ダンジョンコアを手に入れたのでチートする  作者: くろのわーる
フェイズ2 救援編

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68話︰幻影の優斗



 草薙さんの言葉からは俺の実力を見てみたいという意思が感じられた。


 協力をすることを決めた際に陽輝と話し合ったことがある。

 それは実力を隠さないこと。実力がバレることでより協力を要請される可能性はあるがそこは巌田さんが何とかしてくれると信じてる。

 何よりこの非常事態で困っている人々を放っておけない。


 装甲車はモンスターの集団から50メートル程、離れた場所で止まる。


「優斗君、ホントに良いのかい?」

「ええ、問題ないです。それに俺の実力くらいは知っておいた方が何かといいんじゃないですか」


「いいじゃねえか!俺もお前の本気って奴に興味があったんだ」


 桐ヶ谷さんからはお前の実力を見定めてやるという強い意思が発露していた。

 これにより中途半端に力を晒すことはやめることにした。全力全開でモンスターを殲滅する。

 じゃないと今後の協力態勢に支障が出る気がしたから…。


 俺は装甲車から降りると少し進んだところで止まり振り返る。


「見ていてください。圧倒してきますから」


ゴクリッ


 誰かが喉を鳴らす音だけが聞こえたが気負うこともなく、歩を進める。


 前方にいたモンスターの群れは既にこちらに気付いており、雄叫びを上げながら迫っていた。が俺の歩く速度に変わりはない。


「おいおい!?本当に大丈夫なのか?」

「煽った君がそれを言うのかい」


 先頭を走るモンスターとの距離が3メートルを切る。そこでやっと腰に帯びたサーベルを抜き、ボソッと呟く。


幻影蝶ファントムミラージュ


 その瞬間、俺の姿は複数に分かれる。

 正確にはそう見えるだけで実際は幻影装備の効果と影魔法の影転移と超高速で刻まれるサイドステップを組み合わせたことによって、残像が目に残り錯覚を起こしているのだがおよそ30匹はいるモンスターの群れの中を僅か3秒で駆け抜ける。

 当然だが全てのモンスターは斬り捨てている。


 モンスターの群れを抜けた後、サーベルを構えたまま残心を取る。


「な、何が・・・起きた?」

「・・・っ!?わ、わからない」


 駆けていたモンスター達は時間を止めたようにその場で動かなくなると、次の瞬間には首が胴から離れるか胴体が真っ二つにされて息絶える。


「ふぅー」


 小さく息を吐き、振り返ると草薙さん達に片付いたという合図を送るが反応がない。

 少々、やり過ぎたのかもしれない。


 草薙さん達が放心状態から治るまでに俺は倒したモンスターをアイテムボックスにしまっていく。

 今の時代、モンスター食は女性達に美容食材として人気があるので無駄にはならないはず。


 倒したモンスターをアイテムボックスに回収し終わると装甲車がゆっくりと近付いてくる。


「やあ、お疲れ様」


 笑顔の草薙さんはいつもの陽気で話し掛けてくるが桐ヶ谷さんは仏頂面が増した気がする。


「優斗君、それにしても凄かったね。正直に言って何したのか解らなかったよ」

「・・・」


「ありがとうございます。一応、本気でやったのでそう何度もはキツイですけどね」

「そうなんだ。ところで陣内君も君と同じくらい強いのかい?」


「そうですね・・・たぶん同じくらいじゃないですかね」

「それは凄い!」

「・・・」


 草薙は平常心を装っていたが優斗の発言に恐怖に似た空寒さを感じていた。

 それと同時にこの国の危難をなんとか出来るのは彼等しかいないと確信と期待を膨らませていた。


 桐ヶ谷は優斗の本当の実力を見て、度肝を抜かれるとともに自身の見る目に間違いはなかったと確信した。

 その後は車内で優斗に非礼を詫びた上で桐ヶ谷の態度は軟化していった。


 そんな一幕もありながら装甲車は予定通りに市外の避難所に到着する。

 校門でモンスターの警戒をしている人達が装甲車を見て、慌ただしく動き始めると一人が声を上げる。


「助けが来たぞ!」


 その言葉に俺は胸が締め付けられる思いを抱き、草薙さんの笑顔には苦痛の色が混じった。


 避難所は学校の体育館が使われており、入り切れない人々は校舎も利用していた。

 装甲車が校内に入ると助けが来たと聞きつけた人達が希望を胸に駆け寄ってくるが装甲車が1台だけだと解るとその表情は一変する。


「おい!そんな装甲車1台で何が出来るんだ!」

「国は何してるだ!」

「助けじゃないのかよ!」


 装甲車の中にまで罵倒が聞こえてくる。


 こんな状況になることは事前に予想されていた。それはこれまでの自衛隊の救助活動でも同じような状況になっていたからだ。


 ここに来るまでの道中、笑顔を絶やさない草薙さんが表情を暗くしながら説明をしてくれたので俺も覚悟はしていたが実際に目の当たりにするとなかなか心にくるものがある。


「優斗君、さっき説明した通り、君は君のするべきことをしてくれ。桐ヶ谷1等陸尉、優斗君のこと頼む」


「了解した」


 それだけ言うと草薙さんと同乗していた2人は装甲車を降りて、避難している人達に今後の自衛隊の対応を説明しに行く。

 その背中は哀愁と責任感を感じさせる背中だった。


「行くぞ」

「はい」


 桐ヶ谷さんに促され、俺も装甲車を降りると自分が成すべきことを成しに行く。


 俺と陽輝の戦いはダンジョンから飛び出して、人々の救援という新しいステージに替わった。

 

 それは今まで経験したことがないくらい大変で困難を伴うことだが覚悟を胸に力強く踏み出していく。

 その先にある未来を信じて・・・。



皆さん、申し訳ありませんがここで完結とさせてもらいます。

というのも次の話から鬱展開が続き、そのまま・・・書いていたら辛いです。鬱展開は当初の予定通りなんですが書いてみたらめっちゃ辛いし、バッドエンドもちょっとな〜と今と当時で気持ちに変化がありましたので。

なのでここで一旦、完結としてこの後はオムニバス形式みたいな感じにしつつ、各キャラ(特に陣内美嘉が書きたい)が活躍する短編を上げて次のシリーズとの間を埋めつつ、繋げていこうと思っています。


ここまで読んで頂いた皆様、本当にありがとうございます。

一度は筆を折った身ではありますが再開後に皆様の押し上げにより、6年も待たせたにも関わらず日間上位ランキングに入ることも出来ました。

この作品の執筆を止めて、初めて私にもファンがいるということにも気付かされました。

休止中に続きが読みたいと言ってくださった読者の方々ありがとうございます。

あなた方がいなければ、再び書くことはなかったと思います。

この結果を受け、私は目頭が熱くなってしまいました。な、泣いてなんていないんだからね。

照れ屋なもんですみません。


それではここまで読んでくださった読者様に改めて感謝申し上げます。

本当にありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。







短編は来年くらいを予定しています。大雑把でごめんなさい。

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