第51話
俺の今後の考えを聞いて、みんなに沈黙が流れる。
やはり、それぞれの強化や拠点探しはともかく、『大氾濫』に耐えうる拠点を造ると言ったのが荒唐無稽に思われているのだろうか。
そんな中、やはりというか最初に口を開いたのは陽輝だった。
「なるほど、ついに優斗もクランを立ち上げる気になったんだな」
「すごいっ!優斗さん、クラン立ち上げるんだ!だったら名前は可愛い感じが良いな」
いや、今までクランを立ち上げるなんて言ったこともなければ、陽輝の口からも聞いたこともないんですけど。
そして、どうやら美嘉ちゃんは俺や陽輝と同じ側の住人の疑いが出てきた。
それにしても陣内兄妹の中では既に俺の考えとは裏腹に斜めに発展しているようだ。
そんな訳で話について来れたのは俺を含めて3人。
他の3人はと言うと「クランて何?」みたいな顔をしている。
ちなみにクランとは小説なんかで時々、出てくる言葉で気の合う仲間と組むパーティーよりも大きな集団で相互扶助的な集まり、もしくは同じような志を持った集団だと3人には簡単に説明した。
「それでそのクランとやらを創るとどんな利点があるんだ?」
あれ?親父さんが乗ってきたぞ。
「何言ってんだ、親父。クランていうのはロマンなんだよ」
お前が何言ってんだよ!
「そうだよ!お父さん。クランってとにかく凄いんだから!」
お前も何言ってんだ?あぁ!
「そ、そうなのか、すまん!」
お前は何謝ってんだ!
子供二人に言われて折れちゃったよ、親父さん。そろそろ訂正した方が良さそうなので俺が口を開く。
「二人とも俺はクランを創るなんて一言も言ってないからな?この混沌としつつある世界を乗り切る為に頑強な拠点を造りたいって言っただけだから」
「なんだよ。そうならそうと早く言えよ」
「えぇ~、つまんない」
勝手に先走ったのお前らだろうが。
「あ、あの・・・」
会話に入るタイミングを計っていたのだろう沙耶ちゃんがいつものようにどもりながらも頑張って参入する。
「クランとか拠点のことはよくわからないのでお任せしたいんですけど、それぞれの強化はどうやってするんですか?」
ごもっともなご意見です。
「そういえば、まだ教えてなかったね。ちょうど、みんな揃ってるし、ここでやってみようか」
「えっ!?ここで出来るんですか?」
「出来るよ」
そう言って、アイテムボックスからダンジョンコアを取り出す。
ダンジョンコアはいつものように宙に浮き、陣内宅のリビングをコアルームに上書きする。
「な、何これ?」
「水晶が浮いてる・・・」
「何かのマジックなのか?」
「私、疲れているのかしら?」
それぞれがしっかりとリアクションしたところで説明する。
「この宙に浮いている水晶はダンジョンコアと言って名前の通り、ダンジョンの核になる」
「あたし、知ってるかも」
この子、こちら側の住人で確定だわ。
「それなら話が早いけど、わかってない人もいるから説明続けるね」
その後、説明はしたがやはり、小説やゲーム等に馴染みがない人にはいまいちピンとこないようなので実際にスキルクリスタルを吸収させて体感してもらった方が早いかもしれない。
幸い、俺と陽輝で貯めたDPがそこそこあるので。
「とりあえず、聞くより見た方が早いと思うからやってみようか」
そんな俺の提案に陽輝が待ったをかける。
「優斗とその前に確認だが美嘉と沙耶ちゃんは探索者登録したみたいだけど、ステータスボードは手に入れたのか?」
「登録しただけで、まだだけど」
「私もまだです」
ステータスボードはモンスターを倒すことで得ることが出来るがそれがどうしたのだろうかと疑問に思っていると陽輝が答えてくれた。
「確か、ステータスボードを所持してないとスキルクリスタルを吸収、出来ないって聞いたことがあるぞ」
初耳なんですけど。
「だから強化するのは吸収、出来るか確認してからになるんじゃないか?」
という訳で試しに身体強化のスキルクリスタルを交換して美嘉ちゃんに使わせようとしたが駄目でした。
「どうやら、まず最初に4人がステータスボードを得る必要があるみたいだな」
モンスターと相対するのが不安な3人とやたら張り切っている1名を伴って、ステータスボードを得るため、モンスターを狩りに行くことになった。
やっぱり、兄妹だけあって性格もそして精神も似ているのかもしれない。




