第3話:憧れのスキル
結局、帰りは行きと同じくらい時間がかかり、ダンジョンから出たのは19時を回ってからだった。
帰りには2匹のホーンラビットを狩り、トータルで3匹をダンジョン入り口の傍にあるダンジョン管理局、(探索者達の間では別名、探索者ギルドと呼ばれている)に行き、ホーンラビット3匹を売却し、家に着く頃には8時を過ぎていた。
歩き疲れリビングに入るなり、荷物を床に置きソファーにダイブをかましてひと息つく。
1日かけて得たお金は九千円。モンスターフード人気の高まりで食用可能なモンスターの買い取り額が上がっているらしいが高いのか安いのか、俺には正直判断がつかない。
自宅に着き、安心したのか腹の虫がグゥ~とうなり、夕飯を食べようと思うが疲れているのでインスタント麺で簡単に済ませることにする。
夕食が終わったらお風呂を沸かし、お湯が沸くまでの間、テレビをつけて何気なく見ていると今、若手で勢いのあるイケメン探索者なんかを紹介する番組が放送されていた。
今回の探索者は17歳の現役男子高校生。
この17歳は実力が認められて今年から大手企業とスポンサー契約を交わした、いわゆるプロ探索者だ。
プロとアマの違いは単にスポンサーがついているかいないかだけなのだが探索者は実力がモノをいう世界なので実力がなければ、スポンサーは付かない。中には稀に人気度でスポンサーが付く場合もあるが本当に稀だ。
実際にこの17歳の探索者については俺も噂を幾つか聞いたことのある程の実力者だ。
なんでも初めてダンジョンへ潜った時に運良く『雷魔法のスキルクリスタル』を得て、初めての探索で地下5階まで潜ったとか、ボスを魔法一発で倒したとか。
そこからはトントン拍子でトップランナーへと駆け昇り中で今のところ世界で唯一の雷魔法の使い手。
そんな彼、陣内陽輝が嫉妬混じりに付けられた異名は確か『雷神』。
妬み嫉みからネット上でも最近よく叩かれているのを見かける。
ランキングは現在186位のAクラスと画面の縁に表示されているが今年中には二桁台へ行くのは確実で将来は『SSSクラス』と言われる1桁にもいけると言われている。
まだ、スキルを1つも保有していない俺から見ても妬ましいかぎりだ。
「俺にもスキルがあればなぁ・・・」
思わず溜息混じりに呟いてしまう。
スキルクリスタルはダンジョン内に存在する宝箱やモンスターから極稀にドロップするらしい。
らしいというのは市場に出回ることがほぼなく、出たとしても数千万円という値段が付く為、一般人ではまずお目にかかることはない。
他には発見者が使用してスキルを得たこと自体を秘匿してしまうからとも言われている。
まあ、スキルクリスタルを使った場合、何のスキルを獲得するかは運次第なんだが。
それにスキルクリスタルを使わなくてもスキルを修得する方法は非常に難しいがない訳ではない。
例えば、格闘技のチャンピオンやオリンピックのメダリストクラスになるとステータスボードを獲得した際にスキルが付与されていたりするらしい。
まあ、俺には無理だけど・・・。
さて、無い物をねだっても仕方ないのできっぱりと諦めて、お風呂に入って今日の疲れを癒すことにする。