第38話:戦略的撤退?
フィールドボス『マウンテンタートル』の背後に回り込み、奇襲の準備は万端だ。
途中、肛門のサイズを確認しようとする陽輝を止めるのに労力を費やしたが自身が接近した際に確認するよう説得して事なきを得た。
「陽輝、準備は良いな?」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃあ、タイミングは陽輝に任せるから俺はいつでも良いぞ」
「わかった」
陽輝は俺の横に立つとゆっくりと右手を突き出し、精神を集中させていく。
数秒間の沈黙の後、静かに魔法名を紡いだ。
『ル・シエル』
すいません。何語ですか?
俺の疑問ごと真っ二つにしそうな光の光輪がボスに向かい飛んでいく。
俺なら間違いなく『気○斬』って言うのにネーミングセンスの差に敗北感を味わいながらボスに向かい走り出した。
陽輝の放った魔法は『マウンテンタートル』の甲羅に大きな傷を付けたが肉には到達しなかったようだ。
しかし、ボスは陽輝を敵として補足したので援護の意味では成功と言える。
陽輝が引き付けている間に接近することが出来た俺は直ぐ様、足へと攻撃を開始した。
ガキィーン!ガキィーン!ガキィーン!
攻撃した感想はとにかく堅いだ。
正直、下の階で戦った『ロックタートル』の堅さを想像していただけに予想外の堅さに戸惑う。
だが戸惑っていては何も進まないので千本ノックと言わんばかりにノックし続ける。
◇
どれくらい打っただろうか。100回は超えたと思うが手応えがない。やはりこれ程の巨体を支えている足だけあって頑丈過ぎるだろう。
進展が見られない状況に痺れを切らしたのかまたは穴を確認せずにはいられなくなったのか陽輝が交代の為、近寄ってきたので素直に交代して援護にまわる。
俺の方に意識を向けさせる為、『ダークランス』を連続で撃ちながら正面に移動する。
ボスの正面にまわったところで顔に数発撃ち込むと効きは悪いが簡単にターゲットを俺に絞ってくれた。
その後はターゲットが代わらないようにヘイト管理をしつつ、陽輝の様子を窺うと俺と同じようにひたすら殴っているが視線は違うところを見ているようだ。
あれは絶対確認してるわ。
そんな陽輝もあまりの手応えの無さに交代したいみたいなゼスチャーをしてきたので交代してあげた。
ただ交代する時にカメのお尻の穴ってどこにあるのか聞かれたがそんなのしらんがな。
交代してからはもはや作業になりつつあるが攻撃を再開する。
ガキィーン!ガキィーン!ガキィーン!
なんだか木こりにでもなった気分だ。
ガキィーン!ガキィーン!ボコォン!
「ん?」
ここにきてついに手応えが変わった。
これはチャンスと思い、殴るペースを上げていくとついに外殻が剥がれた。
これで勝つると思っていると『マウンテンタートル』がまるで船の汽笛のような重厚で長い咆哮を上げる。
体の芯にまで響く咆哮を全身に浴びながら相手の特殊攻撃の予兆かもしれないので慌てて逃げ出す。
逃げている最中に同じく逃走中の陽輝と合流し、離れた場所から様子を見ることにする。
咆哮が終わると富士山型になっている甲羅の山頂から岩石が飛び出す。それもひとつふたつではなくたくさんだ。その様はまるで噴火しているようだ。
「あの岩石の雨の中を掻い潜って近付くのは厳しいな」
「そうだな。さすがにあれが直撃したら逝く自信があるわ」
「とりあえず、止むまで待つか・・・」
噴出がおさまるまでに時間はかからなかったがしかし新たな問題が発生する。
『マウンテンタートル』が放出した岩石はただの岩石ではなくロックタートルだったのである。
しかも、苦労して剥がした足の外殻もロックタートルがくっつき同化することにより修復されてしまった。
また、振り出しに戻ったと思うと気持ちが萎えてしまったので帰還を提案する。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだな。でも次に戦う時は絶対勝つ!」
素直に聞き入れて新たなる強敵に闘志をみなぎらせる陽輝ととも地上へ帰還することにした。




