第37話:マウンテン
地下18、19階とオリハルコンバットによる快進撃はとどまることを知らず、気付けば地下20階。
相変わらずの荒野が広がる。
少し違うところと言えば、フィールドの中央にそびえるように佇む富士山型の巨大な岩。
つい最近、探索者サイトで公開されたばかりのフィールドボス『マウンテンタートル』。
最初に確認した探索者達はあまりの大きさに驚愕してスルーを決め込み、刺激しないように壁際を移動して地下21階へ向かったという。
「・・・でけぇな、学校の体育館くらいあるかな」
確かにあれに挑もうとは普通の奴は思わないだろう。しかし、陽輝なら奇想天外な方法で討伐するかもと俺は期待を込めた目で陽輝を見るがマウンテンタートルに釘付けになっていて気付く気配がない。
恐らく陽輝の脳内ではどうやって攻略するかスーパーコンピューターのようにものすごい計算をして答えを導き出そうとしているに違いない。
「あれだけ体が大きければ、きっとウ○コもどでかいんだろうな」
攻略法を考えているに違いない。
大事なことなのでもう一度言おう。
攻略法を考えているに違いない。
「なあ、優斗はどう思うよ?」
どうやら陽輝の脳内コンピューターには致命的な欠陥があるようだ。
とりあえず、俺も脳内コンピューターをオーバードライブさせなければ会話についていけなさそうだ。
アンリミテッド・オーバードライブ!!
「お尻の穴の大きさからある程度は推測出来るんじゃないか?」
「確かに一理あるな・・・」
探偵ドラマばりに深い思考の海へと沈みかけている陽輝を釣り上げてそろそろ真面目な話に戻そうと思う。
「おふざけはこれくらいにして真面目な話、あれどうするよ?」
「う~ん、優斗が戦ってみて危なくなったら逃げればいいんじゃないか?」
「なぜ、俺だけ!?」
「だって俺、優斗のオリハルコンバットみたいな有効な武器持ってないし魔法の相性も良くないからな」
正論だけに愚の音も出ないがここで負けたら、一人で特攻することになるのでなんとか言葉を絞り出す。
「じゃあ、交代制でオリハルコンバットを使って、使ってない方は魔法で援護するっていうのはどうだろうか?」
絞ったら結構言葉が出てきたわ。
「なるほど。それで良いよ」
なんとか首の皮一枚繋がった感じだ。
そうと決まれば、早速作戦会議となった。
まず、陽輝が魔法で先制攻撃。
それに合わせて俺が特攻。
あの超重量を支えている足をひたすら狙う。
疲れたら陽輝と役割を交代。
危ないと感じたら二人で即撤退。
非の打ち所のない完璧な作戦だ。
準備も整ったので戦場へいざゆかん。




