第35話:闇の交響曲
激しい勧誘をやり過ごし、ひと息つく為、デザートタイムとなった。
さっきは陽輝がご飯を提供したので今度は俺がフォーティワンアイスを提供した。
それによりアイスをも保存しておけるアイテムボックスの有用性に気付いた親父達により第二次勧誘戦が勃発しかけたが招かざる客によって未然に防がれた。
「優斗、気付いているか?」
「ああ、気付いてるよ。数は30にはいかないか・・・いや、まだ集まってきてるな」
「お前らさっきから何を言ってるんだ?」
「モンスターが集まって来てるんだよ。」
「何っ!?なんでもっと早く言わないんだよ!お前ら戦闘準備だ!」
モンスターと聞き、素早い行動で準備を整えていく。しかし、そこへ陽輝から待ったがかかる。
「小山の親父待ってくれ」
「何だ?」
「ご飯のお礼もあるし、ここは俺と優斗に任してくれないか?」
「大丈夫なのか?結構な数が集まってきてるんだろ?」
「問題ないよな?優斗」
「まったく問題ない。むしろ今は夜だから俺一人でも充分なくらいだな。」
不敵に笑う俺。
「優斗のエンぺ○ータイム発動か」
陽輝、それ言ったらいかんやつだぞ。
「信じても良いんだな?」
俺のスキル構成、チート具合を知らない親父達が疑問に思うのも無理もない。
「大船に乗ったつもりでいてくれればいいですよ。陽輝も今回は観戦にまわってくれるか?」
「わかった。信じよう」
「じゃあ、俺も優斗の本領を見たいから今回はお言葉に甘えて観戦させてもらうぜ」
俺は戦いの為、持っていたアイスを一気食いするとコートの裾をひるがえし闇色に満たされた暗い荒野を睨みつける。
決してアイスを一気食いしたせいで頭の後ろが痛くなったがバレないように我慢した結果、険しい表情になってしまっているわけではない。
そう、夜という時間が俺をそういう雰囲気にするのだ。
始めはまばらだったモンスター達も時間が経つにつれて荒野から紅く光る瞳が集まってくる。
その数、42頭。すべてタイラントウルフ達だ。
俺の後ろでは『大地の旅団』の面々が息を飲む気配が伝わってくる。
恐らく、想像していた数をゆうに超えていたのだろう。
今、俺達がいる場所の地形は階段から降りてすぐ横にずれた場所であり、ダンジョンの壁を背にしている。
見方によっては背水の陣にも見えるだろう。
タイラントウルフ達は俺達を取り囲み、徐々にその半円を縮めて来ている。
「優斗、そろそろ始めてもいいんじゃないか?」
俺は背中越しに軽く片手を挙げて返事とすると夜の戦いを演奏する。
『シンフォニー・オブ・ナイトメア』
影と闇が織り成す混合魔法。
闇の霧が辺りを呑み込み、一面に広がる影がなんなくタイラントウルフ達を絡め取る。
霧の中ではタイラントウルフ達の数多の悲鳴が響きわたる。
まさに闇の交響曲。
悲鳴が止むまで時間にして約30秒、どうやらサビから入るタイプの曲だったようでAメロまで辿り着けなかったみたいだ。
蹂躙も終わり、振り返ると顎が外れそうなくらい口を開けて固まっている親父達とうんうんと頷く陽輝がいた。
とりあえず、みんなのところに戻り陽輝とハイタッチを交わして親父達のフリーズが解けるまで待つことにした。
その後、フリーズが解けた親父達から熱烈な勧誘、第三次勧誘戦が勃発したのはいうまでもないだろう。




