第29話:モブ探索者
気を失っていたモブ探索者達の一人が目を覚ましモブらしからぬセリフを口走る。
「うぅ・・・ここは?俺はいったい・・・」
折角だから答えてやろう。
「ここはダンジョンの地下10階だ」
「ダンジョン?あっ!俺達、ボスに挑んで・・・イタタタッ!?う、腕が」
やっと骨折していることに気付いたようだ。
「それでボスに挑んでどうしたんだ?」
怪我のことなど、ガン無視で発言の続きを促す俺。
「そんなことより腕をなんとかしてくれ!」
頼むにしてもその物言いはないと思う。じゃないとうちの閻魔様がお怒りに・・・なってます。
「おいっ!お前らのせいでこっちは迷惑を被ったんだぞ!舐めてんのか?あぁん!」
「ひぃっ!?」
「(あっ!今、威圧スキル使ったな)」
「それでお前が俺達にボスを擦り付けようと言ったのか!どうなんだ?」
「ち、違います!俺はリーダーに言われた通りにしただけなんです」
こんな初歩的な誘導尋問に簡単に引っ掛かってるよ。まあ、威圧スキルの効果が絶大なんだろう。
「判決を言い渡す!」
なんだろう?ちょいちょい陽輝に付いていけない時があるよ。
「汝、有罪とする」
「待ってくれ!俺は悪くないんだ!」
名探偵もびっくりなくらいのスピード決着だったね。モブ探索者もわかってるようなセリフだよ。
「それで有罪にしてどうするんだ?」
「頼む!許してくれ!」
「とりあえず、身元を確認してブラックリストに載せる」
「そんなぁ!見逃してくれ!この通りだ!」
「ブラックリスト?探索者協会にそんなのあるのか?」
「協会は勘弁してください!お願いします!」
「さっきからうるせぇんだよ!『スタンショック』」
「あばばばば」
「協会にあるかは知らないけど、知り合いの探索者同士でそう言った情報のやり取りはしてるぞ。」
言われてみればダンジョンなんて危険な場所に挑むわけだから信用出来る仲間同士で情報を共有するなんてのは当たり前で当然、危険人物なんかの情報もあるはずだ。
あれ?そうすると今まで誰にも協力せず、一人で頑張ってた俺ってなかなかの無鉄砲に思えてくるな。
「それじゃあ、コイツらが寝てるうちに作業に移りますか」
そう言うと陽輝はモブ探索者の一人の体をまさぐり始める。
勘違いでドン引きしかけていた俺をよそに探索カードを見つけると顔の横に置き、スマホで撮影し始めた。
都合5回同じように行い作業は終了した。
聞けば、ダンジョン帰還後に陽輝が入っているコミュニティサイトに投稿するらしい。俺もそのコミュに入れてください。ボッチは寂しいです。(切実)
「コイツらがそろそろ目を覚ますだろうからさっさと行こうか」
「いいけど、脅して釘を刺しとかないで良いのか?」
「あ~、それも悪くないけどモンスターをなすり付けられた明確な証拠がない以上、後で騒がれると厄介だからあまり関わらない方がいいぞ」
そうなんだと納得。
気持ちを切り替えて探索を続行することにした。
次はいよいよ俺にとって初めてとなる階層になる。
「ところでそのコミュニティなんだけど俺も入りたいかな~と思ってるんだけど」
「ああ、メンバーからの紹介つまり俺からの紹介があれば問題なく入れるよ。もしくはランキング500位内なら」
「そっか、じゃあお願いしても良いか?」
「了解」
これで少しは俺の探索者環境も改善されるだろう。




