第28話:宝箱再び
場所はダンジョン地下8階。
渋る陽輝から無理矢理に幻影装備を取り戻し、愚図る陽輝を放っておいて先へと進む進む。
特にこれといって何も起こらず、地下9階を経て、緊張感の無いままボス階にたどり着いた。
「地下10階にくると思い出すわー」
「なんかあったのか?」
・・・そう、あれは忘れもしない宝箱取り逃し事件。実に悲しい事件だった。
とりあえず、事件の概要を簡単に説明しておく。
「取り逃したことは兎も角、ボスからは比較的にドロップしやすいらしいから、今回もチャンスくらいあるんじゃないか?」
「そうかな・・・出ればいいんだけど」
と言うのも、最近一人でレベリングしていた時も宝箱を期待して、ボス狩りをしてはみたのだが初回以来ドロップはない。
でも、逆に言えばそろそろドロップしても良い頃合なのかもしれない。
無駄にポジティブな頭でそう考えるとなんだかやる気が出てきた。
「よっしゃー、宝箱目指してボスでも倒しに行こうぜ!」
「現金だな~」
俺は目標を掲げて、ボスを探し草原フィールドを闊歩する。
遮蔽物は一切なく、見渡せる範囲は全て草原。相変わらず見通しが良くスキル索敵泣かせな階層だ。
草原を歩くこと、数十秒。
ボスであるボアタンクは他のモンスター達よりも大きい為、すぐに見つかったのだがどうも動きがおかしい。
どう見ても何者かを追いかけているように見受けられる。
これが同じ探索者だった場合、俺達が戦闘に加わると横取りとも受け止められかねないので、しばらくは様子を窺うことになった。
退屈なのでボスの様子を遠くから眺めつつ、特にすることもないのでテキトーに会話をして過ごす。
「ボアタンクと戦ってる探索者は男5人みたいだな」
「陽輝、あれは戦っているって言うのか?どう見ても逃げ回っているようにしか見えないんだけど」
「敵と正面から向き合うだけが戦いじゃないだろう」
「なんか格好良いこと言ってる風だけど、何が言いたいのかわからん」
「俺にもわからん」
「なんだよ、それ」
「あっ!一人ふっ飛んだ」
「「・・・」」
「今、思ったけど助けなくていいのか?」
「ん~、まだ死にかけてはいないみたいだし、助けを求められた訳でもないから別にいいんじゃないか?そもそも探索者は何が起ころうと自己責任だしな」
「そうだけど、もし助けを求められたらどうする?」
「相手の出方次第じゃないか。その上で素材とかの権利をきっちりと約束させてから助けるかな」
「流石、元プロ探索者はシビアだな」
「まあな」
「おっ!今度は二人まとめて弾き飛ばされたな」
「なあ、こっちに来てないか?」
「来てるな。面倒だからとりあえず移動するか」
非情に感じるかもしれないがこれが探索者として、普通の対応になる。
俺達は戦闘の邪魔にならないようにその場を離れるが戦闘中と思われる探索者達はわざわざ進行方向を変えてまで、俺達に向かってくる。
「打つ手なしと考えて俺達になすりつけるつもりなのかもしれないな。優斗はどう思う?」
「なんか俺もそんな気がする」
「なら明確に助けを求められない限り、一定の距離をキープする方向でどうだ?」
「了解!」
俺達は打ち合わせ通り、一斉に走り出して距離を取ると相手は食い下がるように後を追って来ているがその間にもまた一人が犠牲になった。
それを確認した陽輝がいつもよりトーンの落ちた声で話し掛けてくる。
「この距離でましてや仲間がやられているのに助けての一声もないなんて確定だろう」
このまま追いかけっこを続けても埒があかないので走りながら簡単に打ち合せる。
打ち合せが終わると走る速度を落として相手との距離が縮まったところをアイコンタクトで合図を送り、全力で左右に別れた。
相手はどちらを追うか迷い、足を止めてしまい、その隙をボアタンクに跳ねられた。
これでボアタンクと戦っていたパーティーは全員行動不能に陥った。
ちなみに全員、索敵スキルに反応があるので死んではいないし、目の前で殺させるつもりもないのでボアタンクを仕留めることにする。
跳ねた探索者に追撃をかけようとするボアタンクに魔法を放つ。
俺の影魔法『シャドウニードル』がボアタンクのお腹を下から突き刺し、勢いを殺すのと同時に陽輝の放った光魔法『レイ』がこめかみの辺りを貫き、ボアタンクは呆気なく力尽きた。
俺は倒したボアタンクの元に向かい陽輝と合流する。
「それでこの後はどうするんだ?」
どうするのが良いのかわからない俺は探索者として経験豊富な陽輝の意見を仰ぐことにする。
「とりあえず、地面に転がってる奴らを一ヶ所に集めてからだな。気は進まないが死なれても目覚めが悪いし」
何するんだろうと思いながらも指示通り、一人ずつ回収して集める。
素人目に見たところ、骨折とぶつかった衝撃で脳震盪を起こして気を失っていると診断。素人の俺、恐るべし。
今すぐに死にそうな奴は見受けられないので一旦放置する。
「優斗、そろそろ死体が消えて運が良ければ宝箱がドロップする頃だな」
陽輝に至っては倒れている探索者達を空気のように扱っている。その切り替えの速さは俺も見習いたいわ。
ボアタンクの死体が光出し、地面に吸収される。
そして、後には待望の宝箱が現れた。
「「おおぉ!!!」」
期待してはいたがお互いに出るとは思っていなかったので思わず、ハイタッチを交わした。
今回はまだ一度も宝箱を開けたことがないからと、俺に譲ってくれた陽輝に感謝しつつ、いざ御開帳。
およそ60㎝四方と思われる宝箱の中にはポツンと光る小さな指輪がひとつ。
宝箱の中のそれを手に取り、ひとまず鑑定。
『体力の指輪』
装備者の体力を微上昇させる。
「「微妙!」」
「優斗、その指輪欲しいか?」
「いや、いらないかな」
「なら売り払うか」
初めてゲットした宝だろうがあまり使えない物をとっておく気はない。
陽輝の意見に同意して、帰りにでも探索者ギルドに寄って売るということでまとまった。
そんな最中、気絶していた探索者の一人が意識を取り戻したようだ。




