第27話:復帰
大氾濫が起こるまではそれなりの人々が過ごしていたが今では大半の人が疎開し、閑散とした雰囲気を漂わす住宅街の一軒家。
場所は俺ん家になる。
「お~い!優斗!俺の格好問題ないかな?」
「ああ、バッチリ決まってるぜ!」
「サンキュー!優斗も準備出来たみたいだな」
俺達は真新しい厨二衣装・・・いや、魂の聖衣を纏い、お出掛けの準備をしている。
「やっと、この日が来たな相棒!」
「そうだな!」
「それじゃあ、そろそろ俺達の戦場へ向かうか兄弟!」
「そうだな」
妙なテンションの陽輝を普通に受け流して、ダンジョンへと向かう。
季節は梅雨間近、二人の新たなる旅立ちは残念ながら曇り空、天候には恵まれなかった。
俺達はダンジョンへと続く道を徒歩で向かう。
その姿はまさにコスプレイヤーなのだがすれ違う人達からは特に変な目で見られるようなことはなかった。
ダンジョンが出来てからというもの色々な企業がファンタジーな防具を発売している影響もあるのだろう。今の俺達のような格好も受け入れられつつあるようだ。
「(杞憂だったか・・・)」
どうやら俺の思い過ごしだったのかもしれない。
今日の探索は久しぶりということもあり、重点的にスキル性能の把握とコンビネーションの確認に費やす予定だ。
向かう道中、陽輝と軽い連携の打ち合わせをしながら歩いているとあっという間にダンジョン前にたどり着いた。
最近では習慣になっていたお弁当屋さんにもアイスクリーム屋にも寄らず、時間帯が早い事もあり行列はまだ少ない。
二人で最後尾に並ぶ為、行列に近付いて行くにつれ周りがざわつき始める。
「(おいっ!見ろよアイツらの格好!完全に厨二病じゃねーかよ)」
「(ヤバい!カッコイイィ!!)」
「(バカッ!そんなことよりアイツ!雷神じゃないかっ!?)」
「(雷神って大怪我して再起不能になったんだろ?)」
こうやって一緒にいると陽輝の知名度の高さに驚かされる。
当の本人はといえば、慣れたもので何処吹く風といったもんだ。
待ち時間もほとんどなく、ダンジョン内に入ると俺の誘導で地下5階のボス部屋まで足早に進む。
その間に陽輝は取得したばかりの索敵や地図のスキル性能の把握を簡単に行っている。
ボス部屋の前に着くと、話し合いでまずは陽輝からスキルの威力の確認をすることになった。
地下5階までぶっ通しで歩いて来たがサイドステップで鍛えた足腰は伊達ではなく、全く疲れていないので休憩を必要とすることなく、部屋に突入と同時に俺の影魔法が発動させる。
シルバーウルフを含む、グレーウルフを一網打尽に拘束した。
「おお~、それが影魔法か」
「そう、魔法名はシャドウバインド。足止めには持ってこいだろ」
他人に魔法を見せるのは初めてなので、少し誇らしげになってしまったが陽輝だし良いだろう。
「それじゃあ、俺もいっちょやってみるかな」
陽輝は手をかざし、拘束されたグレーウルフの1匹に狙いをしぼると白色と黄色の光が陽輝の手に集り始めた。
「レイジングアロー!」
「ん?」
強く発光する超速の矢はグレーウルフを正面から貫き、勢いが弱まることもなくダンジョンの壁に当たり、小さなクレーターを作り出した。
「ちょいと、は、陽輝さんや今のはいったい何?雷魔法?それとも光魔法?」
「ああ、思い付きで雷魔法と光魔法を合わせてみたんだけど、どうかな?」
いきなり合体魔法を使うとか彼は天才なのか?発想すらなかったぜ。
「か・・・」
「か?」
「格好良すぎるだろうが!」
こうなると当然やってみたくなるのが厨二病。
完全に俺の厨二魂に火を着けやがって!
陽輝より前に1歩踏み出すと、俺も影と闇の合体魔法を考えて放つ!
「ダークネスアロー!」
俺の発声に合わせて、モンスターの影から漆黒の矢が飛び出し、グレーウルフをやすやすと貫通、天井にぶち当たりクレーターを作った。
見た目はただの闇の矢だったが。
通常、影魔法だと影と繋がっていなければ発動しない。言い換えれば、影から離れたり途切れると消滅してしまう。では普通に闇魔法でいいのではとなってしまうが普通の闇魔法では発動の際に体から離れてしまうと上手く発動しなくなる。
つまり、他の属性魔法よりも影限定ではあるが発動範囲が広く、不意打ちや奇襲に優れている攻撃魔法と言える。
しかし、・・・地味だ。
こうして即席で考えた魔法で遊んでいたら、すぐに的は無くなってしまった。仕方ないので地下6階へ進む。
地下6階は何度来ても、地下にあるとは思えない草原が広がっている。
そんな草原を二人で並びながら、こんな合体魔法はどうだなどとだべりつつ進んでいく。
「装備の性能も確認しとかないか?」
魔法談義にも一区切りついたところで忘れかけていた装備性能の話をする。
「そうだな。さっきは俺からだったから、次は優斗からでいいか?」
「そうさせてもらおうかな」
この地下6階から出現するボアタックルは突進しか能のないモンスター、俺が新しく使えるようになった特殊技にとっては格好の獲物となる。
早速、一匹のボアタックルが突進して来ている。
本邦初公開。俺の新たなる相棒『幻影のサーベル』を腰に吊るした鞘から引き抜き、魔力を防具服に流して軽く構える。
「(幻影発動!)」
ボアタックルが迫るが微動だにしない俺をすり抜けて行き、背後でボトッと音を立てて頭部が地面に転がり落ちた。
当たる寸前に幻影を残して自慢のサイドステップでかわしながらの一閃。
我ながら格好良い。陽輝なんか肩を震わせ感動している。
「優斗!超格好良かったぜ!」
「ありがとな」
返事もクールに決めておく。
「なあ、後で幻影装備貸してくれよ~」
「え~、やだよ」
「なんでだよ!俺の雷光装備貸すからさ!」
「だって、陽輝の雷光装備に特殊技ないじゃん」
「だからだよ」
そんなやり取りの末、結局は俺が折れてダンジョン内で生着替えを披露することになった。




