残念なTS
「……お? おおっ!? 女体だ! すげえ! まじか! パネエ!! はははは、ほんとだ○○○だ、×××が○○○になってやがる。すっげマジすっげ」
「……おい」
「ん、おお、吉田、見ろよコレ、おっぱいだ。しかもそこそこボインだ。それに○○○――」
「黙れ! この残念TS!! ちょっとそこに座れッ!」
「……あ? なんだよ血相変えて。おう、座ったぜ」
「あぐらをかくな! まるだしにすんな! お前、わかってんのか。TSしたんだぞ。女の子になってるんだぞ!」
「あ? わかってるよ。だってホラ、×××が」
「それはもういいっ!! あああああちくしょぉおおなんで、なんで、せっかく悲願成就の親友TSなのに、こんなに残念なことになってしまったんだクッソがぁぁあ」
「何言ってんだテメー。残念ってなんだよ。自分で言うのもなんだけど、けっこう上玉じゃね? 顔も美少女だしスタイルもなかなか。年も若返って、快適だぜ。さすが15歳、お肌ぴっちぴち」
「ああああいちいちそういう言動がオッサンくさいっていうかもぉ下品な原型まるだしなとこが残念だって言ってるんだよ。……いいか、聞け、お前がいかに残念なTSか、これから俺がみっちり教えてやるからな、ちゃんと聞いてろよ治五郎」
「おう」
「……この名前もなんとかしたいな……。……なんかこう、中性的に……こう……アユムとかアキラとかヒカルとか、そういったかんじにならないかな」
「なんねーよ。じいちゃんからもらった名前だ。姿がどうなろうとも俺の名前は治五郎だ」
「そうか……いや、まあそれはいい。いずれ、肉体に精神が引っ張られて女として生きることを決意したころに改名すればいいわけだし」
「あ?」
「……その口のきき方をやめろ。多少、男言葉のほうが萌えではあるが、あまりにもガラが悪くて女らしく無さすぎる」
「や、だって俺、男だし。中身かわってねーし」
「変われって言ってんだよ! 徐々にでいいから!」
「いや変わらないし。てかコレ、いつでも男に戻れるし」
「戻るなっ! 非可逆はTS物の基本中の基本だ!」
「なんだそりゃ知らねーよ、俺は男だ。女が好きだ。彼女いるもん。結婚するもん。バツイチで子持ちだもん。そりゃ戻るよ」
「ああああああ、子供からめちゃうと女性として生きることを選びましたエンドでもヘイト意見が来ちゃうぅぅううこの残念TSめぇぇえ」
「だからなんなんだよそれ。さっきからお前、萌えだのなんだの、もしかしてアレか。この俺にエロいことしたいとか思ってんのか?」
「……。当たらずとも遠からず……」
「なんだ、早く言えよ。いいぞ」
「ファッ!?」
「別にいいぞ。俺も興味あるし。せっかく女体化したんだから、それでなきゃ出来ないこといろいろやってみたいよな。女の快楽は男の10倍なんて聞いたこともあるし、一回くらいOKOK。あ、この体は処女だから優しくしろよ」
「こ、このッ……この、とことん残念TSめ!! あほか! 貴様はやはり何もわかっとらん!」
「なんだよー」
「なんだよじゃない! 座れ! あぐらをかくな! いろいろ隠せ! いいか治五郎。これから俺が、良いTS十か条の掟なるものを読み上げるっ。黙って聞いてろよ。……鼻をほじるなあああアアッ」
「もーうるせーなーシバくぞ童貞」
「そういうことも言うな! いくぞ。一! TSしたら当然もっとびっくりしろ。 二! 一回嫌がって男に戻るよう頑張れ。 三! だけども無理だった展開、もしくは男と恋に落ちて戻れなくなるがいい!」
「いや一応、びっくりしたし、戻れるってわかってなかったら努力しただろうけど、男には惚れねえよ。無理」
「黙れ!! 続けるぞ。四! 自身の女体にドギマギしろ! 五! 男との体の違いに戸惑え! 六! とりあえずお漏らししよう!」
「……は?」
「七! ほんのり百合展開も踏んでおけ! 八! 男の原型をほんのり残しつつ、ちゃんと女らしくなれ! ボーイッシュな女子くらいになってもよし! ただし男の娘までいくといきすぎだ!」
「……それ、どっちが女らしいんだか俺にはわからんのだが」
「九! ちょっとヒドい目=エロい目にあえ! 十!――最後は、幸せになるんだよ、治五郎……」
「……吉田……?」
「十一! 男性役のことは下の名前で読んだ方がベター!」
「十か条じゃなかったのかよっ!?」
「もっともっと言いたいことはいっぱいあるんじゃああああああぁぁぁぁぁあ」
「大丈夫かお前。おっぱい揉む?」
「十二! 己の身体を出し惜しみしろ!!」
「減るもんじゃねえしイイよ別に……。あーなんかめんどくせえなあ。もう戻るわ」
「や、やめろ、戻るな、そのままでッ……あ、ああ、あああああああ」
「ミナコー、今日の夕飯なにー?」
「ふぁああああああああああああ」
~完~
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実は個人的にはこういうのも嫌いじゃない。