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魔王と勇者のやつ

その身に神霊を降ろし人々に神託を授く聖なる巫女と、彼女を襲う猛烈な尿意

作者: 三村

 霊降ろしの巫女。


 その身を天上の神霊――『上霊』の依り代とし、人々に神託を授ける神聖なる巫女。

 巫女に選ばれるのは、一族の中でも適性を持つ女だけ。

 幼少の頃から過酷な修行を積み、依り代としての資格を得たものだけが、霊降ろしの巫女として上霊様の依り代となることが許されるんだ。巫女たちは皆、自らが上霊様の依り代として世の助けとなるその日を夢見て毎日を過ごす。

 そして私にとって――今日がその日だ。

 霊降ろしの巫女としての私が産声をあげる、その日なのだ。


「――ミクチや」


 禊を終えた私の髪を結いながら、オオババ様が言う。


「案ずることはないよ。私も、私のババ様もみんなやってきたことだからね。初めて降ろすときは、身体に少し異変があるかもしれないけど、そこで上霊様を拒んだり、恐れたりしてはいけない。上霊様の御心に身体を委ねるんだ。そうすればお前の口は自然と上霊様の御言を紡ぐからね。万が一にも逆らったり、御言をねじ曲げようなんてするんじゃないよ。お前自身の魂が霊座に取り込まれ、二度と帰ってこれなくなる」

「はい、オオババ様。心得ております」

「なあに、脅かしてるわけじゃないんだ。お前は一族でも飛び抜けて才のある子だ。これはババの――先代の巫女として、お前にしてやれる最後のお節介さ。よし、できた」


 オオババ様は私の肩をぽん、と叩いた。


「いっといで。初仕事、見事成し遂げたなら、祝いに芋でもふかしてやるよ」

「はい! ミクチは、行って参ります」


 ババ様に一礼して、私はひとり、上霊廟へ向かった。

 霊廟の巫坐で、心静かに本日最初の来訪者を待つ。

 やがて御簾の向こうで人影が揺れ、一組の男女が入ってきた。


「旅の方、よくおいでくださいました。私は霊降ろしの巫女――ミクチと申します」

「僕は、ジラと申します。そして隣の彼女はニスキ」

「ニスキです。巫女様、よろしくお願いします」


 一人は、傷だらけの甲冑を着込んだ武者の男性。もう一人は、金糸のあしらわれた漆色の衣装に身を包む神官の女性だった。

 私は息を呑んだ。御簾ごしにも、彼らが並ならぬ覚悟でここへ来たことがわかった。


「上霊様は全てを見、知り、またお許しになられます。お知りになりたいことを、過たずお伝えくださいまし。必ずや、御言を降ろし奉りましょう」

「僕が知りたいのは、これから先、僕が辿るべき運命です。僕らはこれから、世界の命運を左右する戦いに赴かねばなりません。そのことは既に受け入れてますし、また、きっと成し遂げられるという確信もあります。それでも……やはり知っておきたいんです。僕らの運命を。この覚悟を、決して揺らがせないためにも!」

「……わかりました。それがあなたの望みならば、霊降ろしの儀を行いましょう。これからお呼びするのは、あなたの守護上霊様――上霊様がお降りになるまで、決して声をお発しになられぬよう。また、私が次に口を開くまで、私に話しかけることも、触れることもなりません」


 ジラとニスキは、微かに頷いた。

 私は胸元で合掌し、静かに眼を閉じた。

 霊座より呼び出した上霊を、自らの器に収めるのだ。身体を大地へ縛り付け、意識だけを彼方へ連れて行く。ずるりと、身体から何かが抜け出る感覚があったのち、その空白へ自分以外の何者かが流れ込むのを感じる。

 その感覚は熱い。とても、すごく、熱くて――。


『――焔の裡より産まれし子よ、我を求めしは汝らか』

「上霊様、上霊様なのですか!?」

『……』

「じょ、上霊、さま?」

『……』

「あ、あの……?」


 ……やばい。

 めっちゃくちゃおしっこ行きたい。

 え、ちょっとやばい。本当やばい。禊の前に行ってきたのになんで? 霊降ろしの儀は身体に異変があるってオオババ様が仰ってはいたけど、こういうこと? もっと頭痛くなったり身体ダルくなったりを想像していたんですけど、え、こんなピンポイントに膀胱に影響するとかある?


(巫女様、大丈夫なのか?)(やっぱり負担が大きかったんじゃ……)

 ジラとニスキが不安げに囁き合う。まずい。ちゃんと答えなくては。

「上霊様、我らの声が届いておりますでしょうか?」

『えっ、あ、うん!』

(うん、って言ったぞ今)(随分くだけた感じの上霊様ね……)

 やっちゃった。動揺しすぎて完全に素で答えちゃった。ダメ、ダメよミクチ、オオババ様もおっしゃってたじゃない。上霊様の御言に身体を委ねるの。そうすればきっと尿意だって気にならなくなるはず。委ねるんだ、身体を……上霊様に……そして……早く……トイレに……。


『……焔の裡より産まれし子よ、我を求めしは汝らか』

「なんかやり直したぞ」

『我は焔の上霊。天地が開けしその時より、忘却と想像を司りし焔の意志じゃ。我を呼ぶ汝らの声、しかと聞こえておる。なぜに我を求めしか、申してみよ』

「上霊様、僕は知りたいんです。僕らのこれからの運命を! この戦いの果てに待つ、その結末を!」

『よかろう。……汝の眼差しの向こうに焔が見える。明るい火ではない。ちりちりと暁暗を燻す憎悪の焔じゃ。汝はまだ闇に囚われておるな』

「それはっ――」ジラは言葉に詰まった。「……さすがは上霊様、全て、お見通しというわけですね。確かに僕はまだ、憎しみに囚われているのかもしれない」

「ジラ、そのことはもう――」

「いいんだニスキ。上霊様に隠し事をしたって仕方ない。僕の過去を、お話いたします」


 えっ。


「――それは、僕がまだ五歳の頃でした」


 あれ、長くなる? まさかその話長くなります? トイレ休憩ある?


「僕の村は牧畜と林業だけをほそぼそとやっている、よくある小さな集落でした」

 おいおいおい話始めたぞこの人。

「そんな村をある日、悲劇が襲いました。あれは僕の父が――」

 やばい、集中切れたらまた尿意の波が来た!

「――燃えさかる家々を見た僕は母に連れられ――」

 やばいやばい本当やばいなんかいい話っぽいけど涙腺じゃなくて膀胱にガンガンくる。

「外からは魔物たちのおぞましい声が――」

 おしっこしたいおしっこしたいおしっこおしっこおしっこ――。

「僕は思わず叫びました、かあさーーーーーーーん!」

 おしっこーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


「そして僕は、村の人たちを埋葬するうちに――」

『もうよい!』

「えっ?」

 やばっ。つい口挟んじゃった。

『いや、その……言わずともわかっておるという意味だ。我は汝らの過去を全て見通すことができる、そしてその未来もな!』

「……あ、そうなんですね。では教えてください。僕の運命を、この旅の行く末を!」

 だそうです、上霊様。

『汝はこの旅の果て、その憎悪で己が身を焦がし……やがて力尽きるであろう』

 え、死ぬんだ? あ、そうなんだ……。

「そう、ですか。わかりました。ありがとう、ございます……」

 なんかごめん。本当、なんか、ごめんね。でもなるべく早く帰ってね?

「それじゃあ僕らはこれで失礼します。ニスキ、行こう」


 ニスキは俯いたまま、肩を震わせている。

 ジラが声をかけても、立つどころか身じろぎ一つしない。

「……いや。いやよ。そんなの、絶対に嫌!」

「ニスキ……?」

「巫女様! 私の上霊様もお呼びください! 私の守護上霊は水の化身……きっと、ジラの身を焼く焔を消す、その方法をご存じのはず! どうか、どうかお願いします!」

「ニスキ、無理を言うな! 巫女様もお疲れでいらっしゃるだろう」

「でも、このままじゃジラが死んじゃう! 私はそんなの絶対に嫌! 巫女様、お願いします、どうか!」

「……わかりました、降ろしましょう」

「ほ、本当ですか!?」

 いや私だってすっごい断りたいよ。でも、あなた断ったら刺しそうな目してるじゃん。おしっこ行きたいけど、それ以上に死にたくもないし。

 まあ今のところ身体は膀胱以外大丈夫だから、さっさと降ろしてパパッと神託して帰ってもらおう。水の上霊様……上霊様……どうか私の身体においでくださいませ……。


『――私は水の上霊。私を呼び求めるのは貴方――うげぇっ!?』

「巫女様!? どうされましたか!」


 やっ――ばい! やばいやばいやばいこれマジでやばい! 

 降ろした途端、めちゃくちゃお腹冷えて尿意がやばい! あと一言でも喋ったら絶対出ちゃう! 上霊様の属性によって尿意が変動するとか初耳なんですけど、古文書にも書いてなかったんですけど!  怒ってる、私の膀胱がカンカンに怒ってるよ! 誰だよ水の上霊様降ろしてくれとか言ったの! 上霊じゃなくて尿霊だよこれ! チェンジチェンジチェンジ!


「巫女様! しっかりなさってください、巫女様!」

『……我は焔の上霊なり。我を呼びしは汝らか』

「えっ、いや呼んでないですけど」

『えっ、でも、我、呼ばれたけど、汝らじゃないの?』

「水の上霊様をお呼びしたんですけど……」

『水のやつならさっき首かしげながら霊座に帰っていったぞ』

「ええ? あの、もう一回水の上霊様に降りてきて頂くことってできます?」

『できるが……今後は気をつけられよ。そういうの、我、あんま好きじゃないからね?』

「す、すいません……」

『――私は水の上霊、私を呼び求め――ぐおおおおおおっ!』

「巫女様ー!?」


 焔のクソバカ野郎、勝手に交代してんじゃないわよ!

 引っ込みかけた尿意がまたぶり返しちゃったじゃんよ!


「水の上霊様! どうかお教えくださいませ、私の為すべき事を! 私はこの命なげうってでもジラを――愛した人を死なせたくないのです。私の命と引き替えに、運命を変えることはできるのですか!?」


 知っらっねーよ!


「命と引き替えにだなんて……何をバカなことを!」

「バカでもなんでもいい! ジラ、愛してるのよ、私はあなたを誰より愛してるの! あなたが死んでしまうなんて、そんなの耐えられないの!」

「ニスキ、おまえ……」

「上霊様、私はどのような運命を辿っても構いません。ただ、ジラを――彼を死の運命から解き放ちたいのです! 教えてください! 私の命と引き替えに、私たちの運命はどのように変化するのですか!?」


『右から順に、死ぬ、死なない。以上』


「え、ちょっと、そんな花占いじゃあるまいし! もっと具体的に教えてください上霊様!」

『我は焔の上霊……』

「またお前か!」

『またとは何だ! 我のセリフだそれは!』

「水の人もっかい呼んでください! まだ話終わってないんです!」

『貴様ら我をメッセンジャーか何かと勘違いしておらんか? ……ぬ、あれ』

「どうしました?」

『いや、この人間の身体から出ることができん、拒まれておる。ぬぬ、こうなれば意地でもまかり通るぞ』

 ダメダメダメ! 次に水のやつ降ろしたら今度こそ漏れるから!

『こ、の、強情者が――ぬっ、ぬおっ!?』

 えっ、ちょ、ちょっと、あれっ? 意識が、ひ、引っ張られる!?

『いかん! 器が歪みおる! このままでは、闇が、闇が流れくるぞ――』

 え、なになになに? か、身体がコントロールできない――。


『ク――クク、ククククク』

「あ、あの……み、水の上霊様、ですか?」

『水の上霊だと? 笑わせるな。余は人の世に這い敷く闇の邪霊よ! ようやく人間の身体を手に入れたぞ! クククカカカカカ!』


「えーーーーーーーーーーー!?」

 えーーーーーーーーーーー!?


「そんな……巫女様の身体が邪霊に!」

『愚かな人間よ、乗っ取ってくれと言わんばかりに霊座へ身体を開きおって……そのお陰で余は受肉することが出来たのだがな。それもこれほどまでに力に満ちた、すばらしい身体にな! クァカカカカカ!』

 高笑いしてるとこすいませんが、そのすばらしい身体、間もなくおしっこ漏らすと思うんです。


「邪霊め、そうはさせない! いずれ貴様を食い止めるつもりで旅を続けてきたんだ、ここで俺たちがお前を倒し、巫女様をお救いする!」

『雑魚が、囀るな。散れい!』

「ぐわあああああああ!」

 ぐわあああああああ! 

 おいクソ邪霊、急に私の力使わないでよ今完全に漏らすとこだったわ!


「すばらしい……すばらしい肉体だ。力が、力が溢れ来る!」

 溢れそうなのは尿だよ! それは! 尿!

「この程度で怯む俺たちじゃない。喰らえ邪霊、神器の一撃を!」

『なにっ!? ぐわああああああああ!』

 ぐわあああああああああああああ――あ、あ、あ……ああ。


 あ、無理。これもう無理だわ。例えコイツらが邪霊を浄化できたとしても、もう絶対間に合わない。漏らしちゃう。ああ、私、漏らしちゃうのか。見ず知らずのカップルの前で、邪霊に身体乗っ取られた挙げ句、盛大におもらししちゃうのか……。そんな、そんな、そんなの――。


 ――ダメだ!


 それは、それだけはダメだ。私は代々上霊に仕えてきた霊降ろしの巫女の末裔。その誇りにかけて、失禁シーンを目撃されることだけは――絶対にダメ! 私の膀胱のせいで、霊降ろしの巫女の名に泥もしくは尿をぶっかけるわけにはいかない!

 けれどもうトイレは絶対に間に合わない。

 ……ならば取れる手段はひとつ。


『こざかしい虫けらどもめが……こうなればこの霊廟ごと貴様らを微塵と砕――ぬ、ぬぅ、これはっ!?』

「ジラ、私たちの攻撃が効いてるよ! 今のうちにたたみかけよう!」

「待て! 何か様子がおかしい……」


 漏らす前にコイツら全員――消す!


『この、小娘がっ、たかが巫女の分際で余を逆に取り込もうというのか、ぐ、バカな! なんという力だ、う、ぐおおああああああ!』

「ジラ、これは!?」

「す、凄まじい力の奔流だ、さっきとは比べものにならないほどの!」


『フゥ……フゥ……フフ……』


 身体が全てが自分の意志で動くか確認してみる。よしよし、なんとか肉体の主導権は取り戻せたみたい。

 けど、この身体でそもそも倒せんのかな。ちょっと試してみよう。よっと。


「う――うおおあああ!?」


 腕を軽く一振りしただけでジラとニスキがなす術なく吹っ飛び壁に激突した。

 ワーオ……すげえこれ。ちょっと楽しくなってきちゃった。

(小娘ェ、貴様、余の力を乗っ取りおったな!)

 頭ん中でごちゃごちゃうるせえ。元々この身体は私んだろうが。

(しかしなぜ人間の味方である貴様が、闇の力を欲する……。魂胆がわからぬが、どうやら貴様もこの世に混沌をもたらすことが望みのようだな。よかろう! 余の力、存分に振るうがよい! 貴様のような人間と共生するのもおもしろかろうて)

 何勘違いしてんのよカス雑魚。あのバカップルぶちのめしたら次はアンタよ。

(なっ、ええっ――!?)


「隙あり! 喰らえ邪霊!」

 神器の一撃が私の肩に食い込む。が、傷はおろか私の身体を覆う闇の瘴気を破ることすらできなかった。

「刃が、通ら……ない!」

『その程度か、小僧。所詮は人間というわけだな。その貧弱な命に私が終止符を打ってやろう』

「ジラから離れろ、化け物!」

 ニスキから放たれる無数の光弾も、私の指の一振りで方向を変え、全てが数倍もの威力と共に術者自身に襲いかかった。

「きゃあああああ!」

「ニスキ!? くそ、貴様よくも――がっ!?」

『やかましいハエだ。少しおとなしくしていろ』

「か、身体が、動かない……?」

『くだらん。この茶番も、次の一撃で終幕だ』

 全身の魔力を指先の一点に集中させる。凝縮された闇の粒子が、それぞれおぞましい産声をあげて獣へと孵化し、周囲の空間ごと無差別に喰らい始める。

「なによ、あの魔法……あんなの私知らない、見たこともない!」

「あんなものが放たれたら俺たちどころか、この大陸ごと消し飛ぶぞ! 逃げろ、ニスキ、お前だけでも!」

「ダメ、私も縛られて身体が動かない!」

(こら! 諦めるなこざかしい虫けら共! 貴様らが破れたら、次は余がこいつにボコされるんじゃぞ! がんばれ、がんばらんかこざかしい虫けら共ー!)

『もう遅いわ。愛する者共々、無限の虚無へと落ちてゆくがよい! ファーハハハ!』


 ちょろ。


『ハッ!?』


 ちょろ。ちょろろろろろろ……。


『ハッ、あ、ああ、あああああ』


 まに、あわな、かった……見られた……もぉ、やだあ……。

 全身の力が股間から一挙に抜けていき、凝縮された魔力も呆気なく霧消した。


「……ん、邪霊の動きが止まっ、た?」

「ジラ、動く、闇の呪縛が消滅したわ。身体が動く!」

『余も……余も動く、動くぞ! やったー! あの小娘め、なぜかわからんが急に身体の主導権を手放しおったわ! 再びこの身体を手に入れることができたぞ、クァカカカカカカ――』

「闇の瘴気が弱まってる、ジラ、今よ!」

『――カ?』

「うおおおお喰らえ邪霊! 常夜の闇へと還れ!」

『ぬ、ぐおおああああああ! そんなー……!』


*


 ジラの一撃が闇を貫き、邪霊は永遠に封印された。闇は去り、世界に再び光が蘇った。ジラとニスキは救世の英雄として、その名を未来永劫語り継がれることになるだろう。


 全て、オオババ様から後で聞いた話だ。


 私は気づいたら、霊廟ではなく自室に寝かされていた。三日三晩眠り続けていたとのことだ。ジラもニスキも、最後まで私の身を案じていてくれていたようで、私の目が覚めるまで看病すると申し出たらしいが、オオババ様が断ったらしい。


「さんざんな目にあったねえ、ミクチ。ふぇふぇふぇ」


 歯のない口でオオババ様は笑った。

 他の巫女の皆も、私の身を案じたり、また好奇心旺盛な者は邪霊に憑かれたときどんなだったかを聞いたりしたが、それだけだった。


 ……どうやら、私が失禁したことはバレていないようだ。

 私は心底ホッとした。


 ついに我慢できず漏らしてはしまったけど、大騒ぎしたせいでうやむやになったっぽい。ジラとニスキには悪い事をしたけど、結局彼らの運命を変えることもできたし、邪霊も倒すことができたし、結果オーライなんじゃないかな。ババ様の顔に泥(尿)を塗るようなことにならなくて、本当によかった……。


「そうそう、ミクチ。あの英雄の二人から、お前に荷が届いているよ」


 そう言ってババ様は私に大きなつづらをひとつよこした。なんだろう?

 いそいそとつづらを開けた私が見たものは大量の……おむつ。


「足りなかったらまた送ってくれるとさ。ふぇふぇふぇ!」


 あのバカップルやっぱぶっ殺しときゃよかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素直で可愛い感じだった巫女さんが、尿意のせいで殺意とか覚えちゃうところがめちゃくちゃおもしろくて大好きです!
[良い点] おもらし [一言] 我慢おもらしありがとうございます
[一言]  なんという素晴らしいヒロイックファンタジー(棒)。  真面目に話すと、実際に長時間の儀式に携わるひとや兵隊さんはこういった事案に悩まされたみたいです。
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