幕間
老人は縁側に座り茶を嗜んでいた。
「要員は既に配置済みです」
老人の後ろから声がする。
「そうか」
老人は答えた。背後に居る背広に身を固めた男には眼を向けず、隠居してから楽しんでいた庭を見つめながらだった。
「彼等は本当に動いてくれるのでしょうか?」
「動くさ」
背広の男の疑問に老人は言い切った。
「動かなければ、彼らの存在意義が揺らぐ。御方の言葉には其れだけの力がある」
背広の男は沈黙を保った。老人は沈黙を肯定と判断した。
「御方はこの秋津国を愛していらっしゃる。この国のためなら・・・・・」
老人が語り始めるが・・・
ニャ〜〜
猫の声と共にパタパタと足音が聞こえてくる。猫は老人の膝の上に乗ると丸くなり、欠伸をした。
「ミィちゃん駄目だよ。そっちに行っちゃ・・・あ」
足音は女の子だった。まだ、幼女と言うのが相応しいぐらいに押さない。和風の趣に合わせたのか彼女は着物だ。
「あ・・・おじいちゃま・・・・」
孫娘を見た老人は厳しかった表情を変え、好々爺と言うのが相応しい顔つきになった。
「ああ、美奈かい?良いよ。もう終わってるからね。ああ・・・お菓子を食べるかい?」
「うん!!」
「あああ・・君、そこの戸棚に金平糖があるから出してくれんかね?」
「あ、はぁ」
背広の男は立ち上がり、言われたとおりに戸棚から金平糖を取り出す。老人は美奈と呼ばれた幼女を連れて入ってきた。
居場所を失った猫が抗議の声を上げるように鳴いていた。