11/2 デスク整理完了
2024年10月7日(月) はじめます
会社のブログに書くほどの内容でもないので、こっちに記録することにした。
柏木さんのデスクを片付けてほしいと、総務の山下さんに頼まれた。
柏木さんは同じフロアの経理の人で、九月の半ばから出社していない。
最初は無断欠勤扱いだったらしいけど、連絡もつかず、警察にも届けたそうだ。
進展はない。
会社としては今月末で退職扱いにするとのこと。
私が頼まれたのは、単に席が近かったからだと思う。
正直、柏木さんとはそこまで親しくなかった。
挨拶はしたし、たまにエレベーターで一緒になれば天気の話くらいはした。
それだけの関係。
明日から少しずつ進めるつもり。
段ボールは二箱もらった。
posted at 21:30
2024年10月8日(火) マグカップ
デスクの上から片付けることにした。
まずモニターの横にあったマグカップ。
白地に青い線で魚の絵が描いてある。
柏木さんは紅茶をよく飲んでいた気がする。
中を覗いたら、底にうっすら茶色い輪っかが残っていた。
一ヶ月近く放置されていたわけだから、まあそうなるか。
洗って段ボールに入れた。
他にはペン立て、卓上カレンダー、小さいサボテンの鉢。
サボテンは枯れていなかった。
水もやっていないのに。丈夫なものだ。
今日はそこまで。
明日は引き出しを開ける。
posted at 21:15
2024年10月9日(水) 付箋
引き出しの一段目を開けた。
文房具と付箋がたくさん入っていた。
付箋には業務メモが書かれていて、「10/3 山下さんに提出」「9/12 月次レポート修正」といった内容。
筆跡は小さくて几帳面で、柏木さんの性格が出ている。
一枚だけ、日付がおかしい付箋があった。
「11/2 デスク整理完了」
11/2。
柏木さんがいなくなったのは九月の半ばだから、書き間違いだろう。
10/2のつもりだったのかもしれない。
でも筆跡は同じだし、「11」とはっきり書いてある。
まあ、仕事が忙しいと日付の感覚がずれることはある。私もよくやる。
付箋はまとめてジップロックに入れた。
一応、ご家族に渡すものと捨てるものを分ける必要がある。
posted at 21:45
2024年10月10日(木) 集合写真
引き出しの二段目。
書類がきっちりファイリングされていた。柏木さん、本当に几帳面な人だ。
ファイルの間に、部署の集合写真が挟まっていた。
今年の四月に撮ったやつだと思う。フロアの全員で、背景は会議室の白い壁。
写真を見ていて、少し不思議に思った。
柏木さんの立ち位置がわからない。
経理は向かって左側に固まっているはずだけど、小山さんと佐々木さんの間が妙に空いている。
誰かが立っていたような間隔なのに、誰もいない。
柏木さんはこの日休みだったのかもしれない。
あるいは撮影のタイミングでトイレにでも行っていたか。
そういえばこの写真、私も写っているはずだけど、どこにいるか一瞬わからなかった。
右端の方にいた。なんだか端に寄りすぎている気がする。
まあいいか。
写真は返却ボックスに入れた。
——あと、全然関係ないけど、ペン立てのボールペンが三本だった気がするのに今日数えたら二本だった。
まあ気のせいだと思う。もともと二本だったかもしれない。
posted at 22:00
2024年10月11日(金) カレンダー
今日はデスクの上に出しっぱなしだった卓上カレンダーを確認した。
九月のページが開いたままだった。
十三日の金曜日まではシフトや会議の予定が書き込まれている。
翌週以降は空白。
ただ、十月のページをめくって、ちょっと驚いた。
十月一日以降のマス目が、全部黒く塗りつぶされていた。
ボールペンで、ぐりぐりと。
十一月も、十二月も。全部真っ黒。
ストレスが溜まっていたのかもしれない。
仕事が嫌になって、未来の日付を全部消したくなる気持ちは、わからなくもない。
私も締め切り前はカレンダーを見たくなくなる。
カレンダーは処分ボックスに入れた。
posted at 22:10
2024年10月13日(日) 同僚のこと
昨日は更新しなかった。
土曜日は友人と会っていたので。
金曜のことを少し書いておく。
隣の席の中村さんが午後から休んだ。体調不良だと言っていた。
今日ふと思い出して、中村さんに「体調大丈夫ですか」とメッセージを送ろうとした。
でも連絡先が見つからない。
LINEにもSlackにもいない。
おかしいな。
消してしまったのかもしれない。
月曜に直接聞こう。
posted at 20:30
2024年10月14日(月) 名前
出社して、中村さんのことを佐々木さんに聞いた。
「中村さん、金曜の午後体調悪そうでしたけど、今日は来てますか?」
佐々木さんは少し考えてから、「中村さんって、誰でしたっけ」と言った。
私も少し考えた。
中村さん。隣の席の。
隣の席を見た。
空席だった。私物は何もない。
最初から誰も座っていなかったみたいに、きれいなデスクだった。
あれ。
私は誰のことを言っていたんだろう。
考えているうちによくわからなくなったので、柏木さんのデスクの片付けに戻った。
今日は引き出しの三段目を開けた。
私物はあまりなくて、予備のネクタイと、コンビニの割り箸が数本。
あと、名刺入れが一つ。
posted at 22:40
2024年10月16日(水) 名刺
名刺入れの中を確認した。
取引先のものが三十枚ほど。経理だから、銀行や税理士事務所のものが多い。
一番下に、柏木さん自身の名刺が一枚だけ入っていた。
「経理部 柏木裕也」
予備を入れていたのだろうか。
自分の名刺入れに自分の名刺を入れる人は、あまりいない気がするけど、まあ人それぞれだ。
裏返すと、ボールペンで小さく何か書いてあった。
「ここにいます」
なんだろう、これ。
名刺交換のときに場所を伝えるメモだろうか。
「ここにいます」の「ここ」がどこを指しているのかわからないけど、会場で待ち合わせるときに使ったのかもしれない。
名刺は返却ボックスに入れた。
——ところで、自分のマグカップが見当たらない。
朝は確かにコーヒーを入れたと思うのだけど、午後に気づいたらデスクになかった。
給湯室に忘れたのかと思って見に行ったけど、なかった。
家に持って帰ったかな。
最近、物忘れが多い気がする。新しいのを買おう。
posted at 3:14
2024年10月19日(土) 引き出しの奥
平日は少し忙しくて更新できなかった。
木曜日に、柏木さんのデスクの引き出しを全部出した。
最後の一段、一番下の深い引き出しの中身はほぼ空で、クリアファイルが一枚あっただけ。
中には何も入っていなかった。
引き出しを戻そうとして、ひとつ気になることがあった。
一番下の引き出し、内側の奥行きが外側と合わない。
外から見ると四十センチくらいあるのに、内側は三十五センチくらいしかない。
手を入れて奥の壁を押してみたけど、動かなかった。
古いデスクだから、構造上の問題だと思う。
二重底というわけでもないだろう。でも五センチの差は少し気になった。
あと、これは柏木さんのデスクの話ではなくて自分のデスクの話だけど、引き出しの二段目に、自分の名刺が一枚入っていた。
「総務部 ——」
私の名刺だ。
なぜここに入っているのかわからない。
普段、名刺は名刺入れに入れて鞄に入れている。
引き出しには入れない。
裏返してみた。
白紙だった。何も書いていない。
多分、前に名刺を整理したとき、一枚落としたのだろう。
posted at 3:02
2024年10月22日(火) もう少し
柏木さんのデスクの片付けは、ほぼ終わった。
段ボールは結局一箱で収まった。
返却ボックスの中身は総務に渡した。
山下さんに「ありがとう、助かったよ」と言われた。
あとはデスクを拭いて、備品のラベルを剥がすだけ。
来週やる。
今日は少し変なことがあった。
お昼に食堂で、同じテーブルに座った人に話しかけたら、知らない人だった。
いや、知らない人なのに、なぜ話しかけたのかがわからない。
誰かがそこに座っていたような気がしたのだけど、誰だったか思い出せない。
最近こういうことが多い。
疲れているのだと思う。
posted at 2:47
2024年10月28日(月) きれいなデスク
今朝、出社したら、自分のデスクの上が少しすっきりしていた。
ペン立てがなくなっている。
卓上カレンダーもない。
もともと置いていたかどうか、少し自信がないけど、あった気がする。
引き出しを開けてみた。
一段目はいつも通り。
二段目も、名刺が一枚入っている以外は普通。
三段目は——あれ、何を入れていたっけ。空だった。
誰かが整理してくれたのかもしれない。
年末に向けて総務が片付けを推奨しているし。ありがたい。
デスクの上にはモニターとキーボードだけが残っている。
あと、マグカップがひとつ。
白地に青い線で——いや、これは新しく買ったやつだったかな。
紅茶を入れた覚えはないのに、底にうっすら茶色い輪っかがついていた。
洗おう。
posted at 3:33
2024年11月2日(土) はじめます
会社のブログに書くほどの内容でもないので、こっちに記録することにする。
私のデスクを片付けてほしいと、総務の山下さんに頼まれたらしい。
私が誰のことかは聞いていないけど、席が近い人がやってくれるそうだ。
この前まで使っていた人の荷物は、段ボール一箱に収まっている。
今日中に引き取り手がなければ処分するとのこと。
私の名前は——
名刺を確認しようと思って名刺入れを探したけど、鞄に入っていなかった。
まあいいか。
明日確認しよう。
posted at 3:14
初めてのモキュメンタリーホラーにチャレンジしてみました。
恐怖を感じてもらえたでしょうか?
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反応が良ければホラー分野も増やしていきたいと思います。




