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ベタな恋愛小説家

掲載日:2026/02/16

短編です

 「だから私は、嘘をついた。」

 シターンッ・・・・。

 Enterキー、きっと私の事嫌いだろうな。

 いつも結構な力で叩いてしまうから、このパソコンのキーボードたちには嫌われているだろうな。なんて、余計なことを考えながら、私は凝り固まった体を一生懸命に伸ばした。背中や首からポキポキと軽い音が鳴る。

「っあぁ~・・・・終わり」

 “終わり”と言えば、とりあえず気持ちが切り替わる。マグカップに残っている、冷めてしまったコーヒーを流し込んで、画面をスクロールした。

 文の最初から読み直して、誤字脱字がないかをチェックしつつ書き終えた小説を読み進める。

 とある女性が、男性と知り合って、恋仲になるのだけど、彼女は重い病気で、ソレを彼に伝えないまま付き合っていて、最後に一方的に別れを切り出して彼女は行方知れずに。彼が真実に気づいたのは、別れてから3年も経った後だった・・・。

 うんうん、まぁ良いんじゃない?誤字脱字いっぱいあるけど。

 はぁ~、期限内に書き上げられてよかった!とりあえずこれで編集さんにどやされることは無い。

 え?ベタな話だなって?うるさいわね、いいのよ。これでも一定数の読者はいるんだから。編集さんだって、いつも「良いですね」って言ってくれるわよ。ファンレターだってもらったことあるんだからね!

 いいのよ、私の小説が理解できない輩は読まなくて!今度私の小説が映画化するかもしれないって話が、少し進んでるんだから!

 頭の中で、アンチと戦う。

 でも・・・やっぱりちょっとベタかな・・・。なんて、自分の頭の中のアンチのせいで、少し不安になる。もう、やめてよね!これで脱稿するの!終わりにするの!深追いすると脱線していっちゃうんだから!

 本音を言うと、私だってSFものやファンタジーを書きたい。でも編集さんが、私にはベタなくらいの恋愛ものが合ってますよ!ってゴリ押しするからさぁ・・・私も、まぁ、自分で書いた恋愛もの、結構好きだしぃ・・・。

 まぁ、SFもファンタジーも、未だかつて書いたことは無いから、暇なときにプロット書くくらいで、止まってるしねぇ・・・。私の才能は、恋愛もので開花しているのよ!

 自分を慰める言葉を連ねていると、編集さんから進捗確認の連絡が来た。あぁ、まだ書けた小説送ってなかったわ。

 慌ててメッセージに返信する形で小説を送った。これで今日の仕事は終わり!ようやく休める!

 メッセージを確認すると、「題名からもう良いですね」なんてお世辞みたいな文言が入っていたけど、私、そんなことじゃ喜ばないから。はやく中身読んでよね。まぁ、今回も大絶賛なんだろうけど。

 気分よくスマホを充電器につなげて、念願の風呂に向かう。暫く適当にしてしまっていたから、今日はゆっくり湯船に浸かろう。

 大丈夫大丈夫、私の小説は面白い。えぇい、頭の中のアンチ!いい加減黙りなさい!・・・・大丈夫・・・よね。

 不安になるのは疲れてるから!風呂に入って温まって、心も落ち着けよう。

 大丈夫、大丈夫・・・大丈夫。

 どうしても小説の中身が頭をめぐる。あぁ、あそこ、こう書き換えた方が・・・いやいや、もう送っちゃったし・・・でも・・・。

 あぁ~!


——早く風呂入りなよ——

まだ悩んでら。

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