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お嬢様のお見合い

作者: purapura

お嬢様は14歳。

第3王子の婿入り先として目をつけられ、

寒々しいお茶会が始まります。

私は今とても緊張しています。

お仕えするお嬢様、リレンザ伯女爵アナベル様と我が国の第3王子ジョン殿下の非公式な お茶会が開始されました。


私はマイカという名の侍女です。

王都の舞台俳優の応援を生き甲斐に

しております。

もちろんお嬢様も大切に思っております。


アナベル様は14歳。来年デビュー予定、

前伯爵を追い落とし、ゲホン、失礼

いたしました。

伯爵位を継がれた超絶お美しいお嬢様です。

少し腹黒い気がしなくもありませんが、

かなりスペックの高い御方だと思います。


ジョン殿下は3歳年上でダークブロンドに

緑の瞳、こちらもお美しい方だと思います。王位継承権を放棄し臣下に下るため、婿入り先をお探しのご様子です。

王族が臣下に下る場合、王家が持っている

爵位を戴く、新しい爵位を作り独立する、

婿入する、王や王太子の補佐を行う、など

あるようです。


私は会話が聞こえるか聞こえないかの位置に控えておりますので、口唇を読んでいます。

私、副業で情報屋というか間者をやってますので、その程度のことはできます。


「アナベル嬢は本当にお美しいですね。

昨年よりリレンザ領を治められていますが、

か弱い女性の身、ご不安なことはないですか?」

(ジョン殿下の発言を意訳)

アナベルさん、ちょっと美人なのはわかったけど女が本当に統治できてるの?俺が手伝おうか?


「お褒めいただきありがとうございます。

卑賤とはいえ女伯爵の身、家令や代官などの、周囲に教えを乞い日々勉強に勤めております」

(アナベル様の言葉を意訳)

お世辞はいいよ。

あと、嬢じゃなくて爵位で呼べ。

おまえなどに頼らなくても、うちの優秀な

使用人で十分


あら、中々バチバチですね。


「失礼した女伯爵。私と貴女が力を合わせれば、より良いリレンザ領になると思いませんか?」

(意訳)女伯爵程度でうるさいなー。

とりあえず結婚しよ。領地経営なんて何とでもなるよね?


「わたくし、試行錯誤しながら領地を治めております。まだ、どなたかと縁付くことは

考える時間がございません。

豊かとは言えないこの地を発展させ、領民の皆が幸せになれたらなと考えております」

(意訳)だからおまえの力なぞいらない。

おまえと結婚なんてしてる暇はない。

おまえと結婚させられたとて、贅沢はさせない。税を上げたりさせないから。


このように微笑みながら寒々しいお茶会の時間が過ぎていきます。

お嬢様は王子を決して受け入れず言質を取られないようにしています。


離れたところにあるテーブルの側に、執事のルーカスが控えております。

黒髪の美形の若い執事、ということで目立ちます。

予備のカトラリーやカップを置いたテーブルの側に立ち、侍女の動きに目を配っていたのですが、2人の会話が気になるようです。


隠していますが、ルーカスはお嬢様をお慕いしております。

誰もが気づいていますが、身分差もあり将来的には難しいのです。

お嬢様も好意を隠さず、依存しているかのように側においています。

彼らは9年前から支え合ってきた仲です。

旦那様がお嬢様を鞭打つために、孤児院にいた貴族の庶子のルーカスは連れてこられました。

ルーカスの治癒魔法でお嬢様の傷を治して、再び鞭打つためです。  

貴族の御令嬢の肌に傷はつけられません。

近くにいる人間としてはどうにかしたいが

どうにもなりませんでした。


あっ、予定より早く終わりました。

不調だったようですね。

馬車の側で王子が、従者に何か言ってるのが読めました。

(美人だが頭でっかちの女なんかすぐに落ちるさ)

嫌な男ですね。


「不快だわ」

不機嫌を隠さずお嬢様は仰いました。

お嬢様は何も入らなさそうな小さな美しいバッグから、カードを取り出しました。

「これを家令に渡して」

「承りました」

黒い鳥の絵だけが描かれた小さなカード。

当家の諜報機関への連絡です。

お嬢様は何を依頼されたのでしょうか?


2週間後、王家の別邸で第3王子との狩りに

招待されました。

気が合わなさそうなのに話を進めるの?

「返事を出して」


『ミシェルとマーヤの冥福を祈りたいので

今回はご遠慮します』

その後王家からの接触はなくなりました。


「お嬢様、ミシェルとマーヤについてお伺いしても?」

「あら、マイカは知らなかった?」


お嬢様によるとミシェルは第3王子が留学しているときに極秘結婚した御令嬢だそうです。

若さと性欲とノリで誰の許可も得ず結婚したらしいです。王族なのにアホですね。

マーヤは男爵令嬢で第3王子の子を身ごもったので、結婚を要求していたそうです。

お二人とも事故でお亡くなりになったそうです。都合のいい事故ですね。

「他の情報もいろいろあるわ。

素行が悪くて、王家から爵位をもらうことも、兄たちの補佐をすることもできなかったようね。出来損ないを押しつけないでほしいわ」

変なのから逃げられそうで良かったです。


「ときにマイカ」

「はいっ?」

「貴女はもう少しきちんと情報を集めなければだめよ」

お嬢様、私は侍女なんですよ?

情報を集めるなんてまるで間者みたいじゃないですかー。

「お嬢様!」

ルーカスがノックの返事を待てずに入ってきました。犬か。犬なのか。

「ルーカス。レディのお部屋です」

流石に注意しました。

「失礼しました。お嬢様。第3王子とは、あの」

ああルーカスは、結婚という言葉すら使いたくないのね。

お嬢様は美しく微笑んで

「もう来ないわ」

「お嬢様の、お側にずっとお仕えしてもよろしいのですか?」

「ずっとよ、ルーカス」

今、私とても居心地が悪いです。

お嬢様のバッグは、叶姉妹が持ってそうなやつです。

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