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婚約破棄された悪役令嬢ですが、男の娘メイドとツンデレ執事に溺愛されて学園生活がバラ色になった件

「――エリスティア・グラン=フィオーレ! 君との婚約は、今この場をもって破棄する!」

声高らかな宣言が、王立アルシェリア魔法学園の大広間に響き渡った。
そこは学園主催の春季舞踏会の真っ只中。煌びやかなシャンデリアの下、貴族の子女たちが凍りついたように沈黙している。

その中心で、金色の髪を持つ王子――レオナルド・アルセレイン殿下は、青ざめた顔をして立っていた。
そしてその前に立つのは、全身を深紅のドレスに包んだ少女、エリスティア・グラン=フィオーレ。
誰もが“悪役令嬢”と噂する、傲慢で高飛車な名門の令嬢だった。

だが。

「……あら。ようやく、ですのね」

エリスは微笑んだ。あまりに静かに、そして晴れやかな微笑みだった。
周囲の者たちは言葉を失う。婚約破棄という屈辱を前にして、取り乱すでも泣き叫ぶでもなく――彼女は、まるで解放されたかのように微笑んでいた。

「私、随分と長い間、殿下の“役”を演じておりましたもの」

「や、役……?」

「ええ。“悪役”という名の、都合のいい飾りを」

その声は、どこか疲れたようでもあり、自由を得た者のようでもあった。
エリスは、ゆっくりとレオナルドに背を向ける。ドレスの裾が揺れ、紅の花が舞うようだった。

「婚約破棄、承知いたしましたわ。……これよりは、私の物語を生きさせていただきます」

その瞬間、沈黙していた会場の扉が音を立てて開いた。

「お嬢様、お迎えに参りました♪」

現れたのは、少女のように愛らしい銀髪の少年――エリス付きの男の娘メイド、フィーネ。
ふんわりとしたスカート姿に紅茶の香りをまとわせて、まるで舞台の幕引き役のように登場する。

「……お嬢、こいつら、全員ブチのめしていいか」

続いて現れたのは、黒い燕尾服に身を包んだ長身の青年、ツンデレ執事ユリウス。
眉間に皺を寄せ、王子を睨みつけながらも、彼の右手はそっとエリスの手袋を取っていた。

「ふふ、やめておきなさい。そんな価値もないもの」

「……ちっ、了解」

そうして、エリスティア・グラン=フィオーレは、悪役令嬢としての幕を下ろした。

けれど、それは終わりではない。

──すべては、ここから始まるのだ。

本当の彼女を愛してくれる者たちとともに。
そして、学園中を巻き込んだ愛と陰謀と溺愛の日々が、今まさに幕を開けようとしていた。
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