人間界を覗いた造物主は嘆き悲しんだ
「ああ、また。それもか。そんなところまで……」
天界から人間界を見下ろしていた造物主はうめき声の間にそんなことを言いながら嘆いていた。そのあまりの嘆きぶりに天使たちが周りに集まり、何事かと口々に尋ねる。
しかし造物主は答えようとせず、ただ人間界をじっと見つめて悲しんでいるだけだった。
やがて造物主は深く深くため息を吐くと、もう人間を滅ぼすしかないかもしれない、と独り言を呟きながら自身の居室へと戻っていった。
造物主の発言に驚いたのは天使たちだ。天使たち目からは見れば人間を滅ぼす理由などないように思えたのだ。
最近の人間たちは戦争をなくし隣人を愛し、自然を守り、自然の恵みひいては神の愛に感謝を捧げ、科学技術を発展させ、これまでのどんな時代に比べても理想的な生活をしているようにしか思えない人間のどこに滅ぼす必要があるのだろう。
天使たちは先ほどまで造物主が見ていた人間界の様子を見てみる。そこになにかヒントが隠されているのかもしれない。
しかしそこでは深海探査艇が、次々に地上とはまるで違う奇妙な姿をした新種の生物を見つけているだけだった。
一体造物主はなにを嘆いているのだろう、天使たちが話し合いをしているちょうどその頃、造物主はまた深々とため息を吐いて一人呟いていた。
「ああ、天使たちにも見られてしまった。深海など誰も来ないと思って生物のデザインを雑にしてしまっていたのに。こんなことならもっとしっかりとデザインするんだった」
お読みいただきありがとうございます
面白ければ評価や感想をお願いします