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 そんなこんなでボウルを見ると思った以上に早く、撹拌できている。

 

 「ふう、はあ………こんなものでしょうか」

 『うん、ご苦労様………小皿に少しだけ入れて持ってきてくれるか?………ありがとう』

 

 ちょっとだけ、舐めてみて………うん、ちょっと酸っぱいがマヨネーズっぽい味であるのを感じ取る。


 エーカーとカルも指先に少しつけて舐めて、美味しい、と喜んでいた。


 『………ん、大丈夫そうだな。じゃあ、それと今朝も使った辛子を少しだけ使ってもう少しだけ混ぜて、マイアさんが切ったパンに塗って欲しい。それの上に生野菜と焼いたベーコン、ハムなんかを乗せてもう1枚で挟む。セオリー通りなら対角線上に三角形に切って、サンドイッチの完成だ』

 「………ええと、レタスとか柔らかい野菜の方が食べやすそうですね………ふむ、こんな感じですか」


 後の仕上げはマイアがしてくれ、サンドイッチと(おぼ)しきものが出来上がる。


 『試食だ。マイアさん、ミゼットさん、食べてみて欲しい』

 「………では失礼して………あ、美味しい。なるほど、こういうソースですね。今朝のサラダに使ったようなものですか」

 「本当に美味しいです。やみつきになりそうです」


 ………どうやらミゼットにはマヨラーの素質がありそうだ。


 『乗せるモノにもっとボリュームを出せばかなりがっつりした食事になる。逆に野菜だけにすればあっさり目の食事だ。乗せるモノは………あまりベタベタと垂れるモノはダメだが、大体のモノならばイケると思うので、作り方も味も量もバリエーションが豊富だ。マヨネーズを作るのがちょっと手間だが、それ以外は意外と簡単、手早くできると思う。マヨネーズを作るのが面倒なら、溶かしたバターや濃いめに作ったソースなんかで代用してもいい』

 「………焼いた肉とか挟んでも良いですね。これは手軽で良いメニューを教えて頂きました。カレラ様やレイ様はともかく、我々のような使用人の食事にはうってつけです」

 『そうだな。パンを変えるのもいいし………丸くちょっと平た目に成型して焼いたパンを横に2つに切って、軽く焼いてから具を挟んでもいいよ。とにかくバリエーションは半端ないから色々試してみても面白いと思う』

 「それはまた今度にしましょう。もう昼まで時間がありませんね。ミゼット、量を作るから少しの間手伝って」

 「わかりました」


 果物………リンゴのような物と、プラムのような物があったのでそれも薄切りし、マヨネーズなしで少しだけ溶かして砂糖を入れたバターをパンに塗り、薄切りしたリンゴや果物を乗せるデザートサンドイッチのようなものも作り………結果、女性陣には大受けしたようなのは何よりである。 


 コーニッシュに確認したところ………ホントにこの娘は良く食べた………あっという間に皿のサンドイッチ一人前が彼女の口の中に消えて行ったのを見た時は唖然としたが………容器に材料を入れて魔法的に混ぜるのは意外と簡単にできるかも知れないと言っていた。

 マヨネーズ等ソース系を作る時良く使うので、ミキサー(もうそう呼んでしまう事にする)を考えてもらうようお願いもして置く。

 

 ………ディナーはすでにメニューを考えそして下準備も初めているので自分が関わらなくても良いらしい。

 皆がサンドイッチを堪能した後、マイア、マリアベル、そしてメイド達はワゴンなどを押して退出していった。


 レイとミューは店に行ったままなので、カレラらと応接室に戻り、談笑する。


 

 まだ少し表情は硬いが比較的よく喋るようになったオルティアと、マイペースなコーニッシュ、そして元気はいいが何処か………こう言ってはなんだが天然気味なキャロ、それらをゆっくり包み込むような雰囲気のカレラ………なるほど良い雰囲気の集団である。


 キャロは城壁の外へは出られないらしい………可哀そうだが王女である以上仕方があるまい………が、特にレイが何かしら素材を収集しに行ったり近隣の街や村に買い付けに行ったりする場合は、ミューとカレラ、そしてキャロはお留守番になり、その守護にオルティアが付き、ミト、という女性剣士が代わりにコーニッシュと一緒に同行するという形になるらしい。


 意外と女性陣が活躍する国………世界なのだな、と思う。


 ………レイに関してはこの国の生まれではあるらしいのだが、詳しいことは誰も知らないらしい。

 あちこち放浪していたようで、その間にフェルナス達竜族と、7騎の契約精霊達との仲間となり、この国に居付き、カレラやクリストファー達とも知り合いになり………と言う感じで徐々に溶け込んでいって………気付けば裏世界の支配者とも結構な繋がりを持ち、国の準支配者のような感じになっていたらしい。


 まあ、決して悪い人間ではないと思っている。


 自分が初会合の時感じた通り、本気で戦うとその辺の兵士やトップクラスの冒険者達では相手にならないほど強い。

 おまけに魔力も相当に強く、以前起きたスタンビート、つまり城壁の外の魔物の暴走を一方向だけだが完璧に一人で抑え込んだとか。


 ………いつもあんな感じで飄々としており、口が悪く、中々にエッチな言動も多いらしいが、女性の目から見て頼れるお兄さんという感じで皆に慕われている様子。


 あまり表情の変わらなかったコーニッシュはともかく、顔を真っ赤にしていたキャロを始め、焦り気味の早口になったオルティア、のほほんと答えているが少し顔が紅いカレラを見ると………どうやらこの場にいる女性陣はレイに多少なりとも惚れ込んでいる様子である。


 まあ、それはそれでよい事………仲間意識を高める意味では………なので、存在がマーモキャットである上いい加減前年齢が年齢だった事もあり、そっちに関してはできる限り首を突っ込まないようにしようと思っている。

 

                ※ ※ ※


 やがて夕刻になり、習い事と父国王との手伝いの約束があるというキャロとその護衛のオルティア、先の資料のまとめ等仕事が残っているコーニッシュは日があるうちに帰って行った。

 ………コーニッシュもまだ話し足りないとかでまた近日中に来ると言い残して去っていったが………異世界の科学や化学、そして自分が覚えている知識等々、錬金術や魔道具作成に生かせないかと色々考えを巡らせている様子だ。


 

 フェルナスと契約精霊の何騎か………具体的には光のルークスと火のカル、そしていつもべったりだという空のフェルミも店に行き、残りの闇のソティス、土のエーカー、水のカイリ、そして風のエーアは自分と共に談話室に残り、魔法やこの世界の事を少しづつ教えてくれる。

 闘いや何かしらの用事が無ければ基本契約精霊達はそんな感じで屋敷や店を自由気ままに動き回ったり、寝ていたりと結構自由な生活を送っているようだ。


 まあ、自分と同じで魔力さえ充実していれば別段何かしらを食べてという事もしないので、当たり前といえば当たり前の事なのだろうが。


 自分は………一応全属性に素質を持っているのが判ったので、まず簡単な基礎魔法をエーカーに教えて貰っている。


 ………契約石が無ければ強大な魔法は使えないようなので、まだまだ魔法という物に慣れ親しんでいない自分には丁度いい。


 ただ、猫の身体だからか意外と魔力の動きとやらが掴みにくいのが難点である。


 何となく、所謂武道でいう”気”と性質というか、そんな感じの漠然としたものが似通っている気がする。

 漫画で良くある気功砲は現実には無理………”気”は本来外部に放出するモノではなく、己の体内を循環させるモノ………なので、その辺との違いを良く良く考えてみようという事で初日の講習のようなモノを終える。


 夕食はやはり、朝食と同じようにこの屋敷では皆で集まって食べるのが定例のようなので、ワイワイと皆で頂き………しつこいようだが例によって自分と契約精霊達は別だが………自分の割り当てられた客室へ戻り、とりあえず居心地のいささか悪いベッドへ乗る。


 

 と、数刻が経った頃、何やら下から魔力というか、気配が大きく動く感じがした。


 敵襲では………多分ない。

 悪意のようなモノを全く感じない………ので、ゆっくりと部屋を出、その気配を辿っていく。

 階下………より下、地下のようだ。


 いくつかドアがあったが、全て半開きになっている。

 少し暗いがかなり広大な地下室の中心辺りにレイが居た。


 上半身裸で佇んでいる。


 傍には………7騎の契約精霊達とフェルナスもいる。

 

 何より驚いたのは、その身体に走る無数の傷跡であった。

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