EP8-7
優ちゃんに連れてこられたのは
路地裏の地下に佇むランジェリーショップ。
恐る恐る優ちゃんに続いてお店に入ると
"ようこそおいでくださいました"と風鈴のような
心地よい透明感のある声が聞こえて
姿を現したのはまさにネグリジェのようなものに身を包んだお姉さん。
「男に店に入る許可出した覚えないんだけど」
「はあ!?あんた私を男扱い!?」
「そんなゴリラみたいな体で女だなんて笑わせないでよ、試着室は絶対立ち入り禁止だから」
引くほど美しいお姉さんが優ちゃんにきつく念を押したけど、流石にそこは優ちゃんもわかってるみたいだった。
優ちゃんが予め連絡してくれていたのか、
お姉さんはころっと表情を変えて私の方を向くと
私の手を引いて店の奥に案内された。
「さあて♡子猫ちゃん♡貴方が下着を選ぶのが私のためじゃないのだけが残念だけど全力でお手伝いするわ」
試着室に入ると人が変わったかのように私を振り返るお姉さん。
「じゃあまずは脱げるものは脱いでもらおうかしらね」
下着以外の全てが半ば剥ぎ取られるようにして一瞬で無くなる。
え、追い剥ぎ…?
「やだあ、何このメロンみたいなまんまるお乳!形も張りも最高ね!腰の位置も高くてお尻もぷりんぷりんと来た!
あーん、やだもう太もも柔らかそう食べちゃいたい…!こんなおっぱいにはもうこれしかないわ!!」
そして棚からある下着を取り出した
下着というのはちょっと厳しい。
どう見ても下着の枠組みとリボンでしかない。
「ブラは試着可能だから付け方も合わせてレクチャーするわね!案外こう見えて簡単なの」
大事なところが一切布無しのブラもどきの枠を当てられ、リボンの通し方を教えてくれる。
どうやら私に下着の選択権はないらしい。
「はい、こんな感じ!ぱっと見普通でしょ?」
乳首しか隠す気ないのに普通…だと…?
乳首の上を申し訳程度にリボンが跨いでいるだけだ。
そしてカップの枠組みに締め付けられてすごい卑猥。
「この下着がすごいのはここじゃないのよ。このチャームがついたリボンをスッと抜くと…。見て!ここ!!!」
指差された場所を鏡越しでみると
「ここ!下乳!!とくに貴方のおっぱい囲いきれないから横乳と下乳すごいの!!!この脱げかけが1番ロマンティックだからリボンはこのままでお稽古始めてね♡ショーツはこれねえ〜。これは履くだけ〜」
『いや履く意味なし…』
「あるわよ!布越しとかじゃなく、レースだから食い込みがクリアに見えるのよ!あと、着たままで出し挿れ可能です♡出し挿れする時はこのレースとレースの間からね♡」
『うわあ〜…』
全部が嫌な気持ちにさせてくる。
「色は〜白枠に黒リボンかしらね、そうね。プレゼント感あるもの。」
『あのぉ…』
「ノン、子猫ちゃん。貴方の意見は聞いてないわ」
私の周り、私に発言権くれない人しかいないや…。
「これもサービスしちゃうっ!」
『リストバンド…?』
「ノン!なにそのナンセンスな呼び方!レースとおリボンよ!なんとS気が強い人はこれで縛ったりなんかしちゃいます♡あ、貴方は縛られる側ね♡」
私はもはや白目を剥いて五体投地する他なくなってしまった。
「こーんな手から溢れるほどのたわわなメロンパイを揉みしだける男はどんな方なのかしら♡幼少期の青春をお金で取り戻したい港区の金持ちパパ?冴えないけど投資で成功して調子に乗ってる同級生?それとも元ヤンの暴力で従えるタイプのバカ男?」
例えがリアルすぎて身近にいる男の人のこと言ってるのかと心配になる。
「ノン♡あなたの幸せそうなお顔を拝見するかぎり、ちょっとサイコパス味のある重すぎる愛を持ったとんでもなく顔がいい男ね♡わかる〜、イケメンのサイコパスってだけで白飯3杯いけるわよね!」
え、透視能力あり!?
「貴方にとってもお相手の殿方にとってもきっと忘れられない夜になるって約束するわ♡本日のお会計は1800円です♡」
『えっ、安ぅ!!??』
「当たり前じゃない、こんなほぼ紐とリボン一本でどこにお金がかかるって言うのよ」
布足りてない自覚症状ありだった。
試着室を出ると
「どう?いいの買えた?どんなのにしたの?」
『えーっと…紐とリボン』
「ん?」
『ただの、紐とリボンを一本買ったよ。あと裸の王様みたいなパンツ』
死んだ魚のような目で淡々と答える。
優ちゃんの笑いを堪える顔が妙にむかつく。
『こんなの付けたらきっとレイは引く…』
「そんなことない!絶対忘れられない夜になるわよ!」
ゴリラに何がわかるって言うんだ…
「あ、そうそう子猫ちゃん。この下着を付けてお稽古する翌日は何も予定入れちゃだめよ。翌日は立ち上がるのも困難になるから」
どこまでも下世話すぎる。
ここまでくるといっそ清々しい。
家に帰ってお風呂上がりに付けて見るけど、
あのファビュラスな空間で試着したよりもえげつなさが増してる気がした。
『相談する人間違えたよぉ…!明日違うプレゼント買い直さなきゃ…』
その下着を棚の中にしまって、今日一日で疲れ切った体を労わるために少し早めのベッドインをしたのだった。




