EP1-9
『どうしたらいい?考えろ考えろ…』
昨日の今日だから余計に痛みが手に取るようにわかってしまって焦ってしまう。
もう絶対SNSは見てないから励ましのメッセージ送ったってダメだ。
スマホを持っては置き、立ち上がっては座り。
『あーもう!噂の原因は何!!???』
レイくんがこんなになるまで追い込んだ原因は一体何なんだ?
現地のニュース、ファンの掲示板、日本のSNS
全部見た結果、1人の女優さんが浮上した。
彼女との熱愛報道だ。
私より一つ歳下の女優さん。
グラマラスな体で真っ赤な唇を塗ってる。
いかにも肉食系だ。
現地のファンは
「オンニが勝手に言いふらしてる可能性は?」
「だってレイオッパの好みじゃなさそう」
という疑念の声もあった。
『そう!私もそう思う!なぜならレイくんは巨乳に興味がないからだぁあぁああ!!!!』
ぜえぜえと肩で息をしながら、一気に力が抜けてソファに倒れ込んだ。
『レイくん…やっぱりおっぱいが好きなの…?』
違う、考えるのはそこじゃない。
私のスマホの通知が鳴る。
《オンニ、レイオッパを助けて下さい。私達はオンニの絵を拡散するので少しでもオッパの味方がいるって事をオッパに届けたいです》
『ええぇ…?わ、私の絵で…?』
だけど、そのリプライに沢山いいねがついていく。
「私も拡散頑張ります」
現地の言葉でも
「みんなでオッパを助けましょう」
というリプライがされた。
できることなんてないから
できることからやるんじゃないか。
そうだ、何もできないからこそ
目の前のことから片付けていくんだ。
とびっきり幸せそうな愛されてるレイくんを描いてやる…!
タブレットを立ち上げ、ソフトを開く。
私が考えつく限りの幸せの象徴を詰め込んだ絵を描くんだ。
どれくらい時間が経ったかは分からない。
テレビはすでにレイくんの報道なんてなかったかのように各地のゲリラ豪雨について語っていた。
《神様、彼を助けて。
あなたが助けてくれないなら私達が助ける。絶対に》
絵はあっという間に拡散されていいねも瞬く間に増えていった。
その反対にアンチの間でも拡散されて、私にも誹謗中傷が届いた。
ー お疲れ〜レイは終わりです。
ー 助けられなかったからこうなってんでしょwwwww
ー でもアイツはアンチなんか気にしないで彼女とよろしくやってるよ。
小馬鹿にしたようなコメントとか、煽るようなコメントとか
そんなこと私に送って何したいんだろう…?
『はい、ブロック!あんたも!あんたもあんたもぉ!!!全員ブロックー!!』
自分で言うのは恥ずかしいけど「ノミの心臓とは対極にいる女」とずっと言われてきた私には少しも痛くも痒くもない。
私たちはレイ君と知り合いでもないんだから本当のことなんて知るはずもないのに、
聞いた噂だけでレイ君を傷つけるなんて許さないんだから。