EP8-2
向こうでゲラゲラ笑う声が爆発的に起こったり起こらなかったりしてる。
しばらくしてドライヤーの音が聞こえると、優ちゃんがため息ついて涙を拭きながら待合にきた。
「いやー、とんでもないイカれ野郎だわ〜」
『レイは?』
「メンズのセットはたっちゃんが上手いからたっちゃんとバトンタッチ〜」
私の隣に座って、私のコーヒーを飲むと
「とんでもない男に好かれたねぇ〜!あぁー愉快愉快!!」
『ねえ、レイに絡むのやめてよ〜…』
「はあ?あんたあの子のなんなの?守ってるだけじゃ強くならないのよ!」
『別にゲイに強くなって欲しい訳じゃないの!』
「バカね、ゲイなんてただの氷山の一角よ。この世にはさらなる魑魅魍魎が存在するんだから」
『んも〜。』
「なんかさーあ、どうせまりあに助けられて変なフィルターかかって好きになってんのかなあ〜って心配してたのよ。助けられた恩と好きを履き違えて〜みたいな。」
『うん』
「そしたら意外や意外のイかれっぷり。あの子まりあ寝取られたら本当に人殺す勢いであんたのこと好きね」
また思い出したようにヒーヒー笑いながら優ちゃんは言う。
『そ、そうなの?』
「下手したらウチらのことも同じ人間と思ってないってたっちゃんが死にそうになりながら笑ってたわ。この世界にまりあと自分しか居ないと思ってるって呼吸できなくなってた」
苦笑いしか出ない…
「よかった。幸せになれるよ、あの男なら。ゲイが言うから間違いない」
優ちゃんがウィンクをするので手でぱっぱっと払い除けたら、脇腹にごつい拳が入った。
「たっちゃんもう、あの子のことお気に入りでやばいわ。」
『レイで遊ばないでよ…』
ヘアセットも会計も終わったレイが龍樹くんと待合に合流する。
『少しベージュっぽくしたの?似合ってるよ』
私の言葉にニコニコ笑って「ほんと?よかった」と答えるレイに龍樹くんが爆笑し始めた
「なにこの顔!」
「ウチらにもその顔してよ!」
「帰ろう。まりあ」
無視されてまた大笑い。
『あ、待って。』
最後にひとくちコーヒーを飲むと、レイはすごい勢いでカップを取り上げた。
『どうしたの?』
そして、優ちゃんも龍樹くんも居る前で私にキスをした。
『………!?』
しかも普通に深めなキス。
「え、こわいこわい、なにこの男」
私から口を離すと優ちゃんを睨んで
「このコーヒー、この人も飲んだでしょ」
と優ちゃんを指差した。
「ギャーーーッハッハッハッ!!しょ、消毒!?消毒したの!!??」
悪魔みたいな笑い声をあげた龍樹くんが言う。
「ちょっとあんた!人を男みたいに言ってんじゃないわよ!!」
「男だろ?」
優ちゃんに食い下がるレイを死にそうになりながら笑う龍樹くんは
「笑わせないで!おしっこ漏れるから!!!」
「ほんっと失礼しちゃう、このガキ。何色気ついてんのよ!!さっさと帰れー!!!」
レイは私の手を握ると「ありがとうございました、また来ます」と言って店を出た。
「2度と来んなボケ!くそがきぃ!!!」
優ちゃん達の声を無視して
『変なことされなかった?』
「されてないよ。まりあはキスしたけど。あの人と」
『キスじゃなくて…』
「間接でもキスはキス。それも嫌だから僕は」
『気をつけますぅ…』
「行く前からこれなんて…先が思いやられるね…」




