EP7-8
男の名前を呼ぼうとした口を遮るように唇を重ねた。
逃げようとするまりあの舌を絡め取って何度も角度を変えてキスをすると
バシバシと背中を叩かれる。
腕の中のまりあは少し苦しそうにして目を潤ませていた。
「優ちゃんと結婚するの?」
唇が触れそうな距離でもう一度聞くと、彼女は手で僕の口元を押さえながら首を振った。
『違うってば…!』
耳まで真っ赤にして否定する。
「じゃあ誰と」
『誰もいないってそんな人。それがどうしたの?』
「僕じゃない誰かと結婚するんでしょ?」
彼女はなんで?と言いだけに少し首を傾げた
「ありえない。まりあは僕と結婚するから」
彼女はギュッと口を結んで心配になるくらい顔を赤くする。
『な、なに言って…』
胸に押し当てられた彼女の手を、指を絡めて握りかえした。
「ね?だから優ちゃんのことは早く忘れて…?」
コツンとおでこを当てて、まだツヤツヤ濡れる唇を奪う
けど。
「なんの音…?」
EDMみたいなビートみたいなものが聞こえてくる
『わ、わたしの心臓っ…!!!』
「え?」
握っていた手をぐるっと返されて、手の甲をまりあの胸に押し当てられると
手の甲にばくばくと心臓の鼓動が伝わってきた。
「な、なにこれ…?」
『レイがこうしたんでしょ!!!』
体の外にまで聞こえる心音ってなんだよと思ったけど、それは確かにまりあの胸の音だった。
なにこれじゃないよ、もー…
と恥ずかしそうに顔を隠して俯く彼女。
『どういうつもり?』
今度はまりあに睨まれて、何も言い返せないでいるとさらに捲し立てられる
『お酒でも飲んだ?』
「飲んでない…」
『じゃあさっきまでの暴挙なに!』
「まりあが結婚するっていうから…」
『しないってば!結婚控えてる人がこうして推しを自宅で長期に渡って匿ったりできるわけないでしょ!』
「じゃあさっきの電話だれ?」
『私のママ!』
「嘘だ、男の声だった」
『私のママ酒焼けで男みたいな声してるの…』
少し気まずそうに言うまりあ。
どうやらほんとにお母さんの電話らしい
「じゃ、じゃあ指輪は?大事に保管してるって言ってたよね?」
『うちのママおまじないとか好きだから、ハワイの結婚運があがる指輪みたいなもの送ってきたの…』
恥ずかしいような呆れてるような感じで尻窄みになるまりあの声
「じゃあ…」
『全部レイの勘違いだよ!それなのに変な暴走して…』
暴走してしまったのは事実だけど、
やってしまった手前引くに引けなくなってしまった。
「優ちゃんは?どう考えてもあんなに仲良いのおかしい。」
『優ちゃんは…』
「《ほら、やっぱり。でも僕はいやだ。たとえ優ちゃんといるまりあが楽しそうにしてても、この先まりあの隣に立つのは僕でいたい。》」
膝立ちで僕を見下ろしていたまりあはハッとするとまた顔を赤くして、手で顔を隠すと力なくすとんと僕の足の間に座り込んだ。
『レイ…私のこと好きだったの?』
「いまさら?」
『いや、だって…好きって言われたわけじゃないし…』
「尽くしてたつもりだったのに気のせいだと思ってた?」
『うん…まさかそんなはずないって思ってた』
お兄さんの言うとおりだ。
僕はまりあを不安にさせてたんだ。




