EP7-2
玄関を開けると
「久しぶり、あれ?まりあは?」
とお兄さんが優しく笑いながら手を上げた。
「えっと…今…先ほど出掛けました…」
「ん?レイは留守番?」
「そう、です。はい」
「………?」
お兄さんは僕の顔を不思議そうに見て、首を傾げる。
「にしても日本語上達したね。これ、ばあちゃんのとこから野菜とか果物もらってきたから。まりあに渡して」
「あ、はい」
お兄さんはその箱を玄関に置いて、うーんと腕組みをする。
「今暇?」
「えと、はい」
「ちょっと出かけよう。嫌ならいいけど」
「いえ、行きます…!」
お兄さんに渡された箱をキッチンに持って行き、顔を洗って急いで着替えた。
お兄さんは車で待っててくれた。
「すみません、遅くなりました」
「いやいや、俺が急に誘ったのにありがとうな」
車を発信させると、お兄さんは笑って
「喧嘩したんだろ」
と言う。
それにドキンと肩を揺らすと
「あー、待て待て。別に責めるつもりで出かけようって言ったんじゃないから。2人とも大人だし口出しするつもりないよ」
チラッと僕を見て、ぽんぽんと肩を叩いた。
「レイも、まりあ以外の誰かと過ごしたり話したりするのも良い気分転換になると思ってさ」
確かに。今日までの僕はまりあだけの毎日だった。
言われるまで気付かなかった。
僕はどれだけまりあに甘えて、それでいてどれだけ満たされてたんだろう。
逆を言えば今の僕はまりあがいるだけで生きていける。
「結構大きい喧嘩したの?」
「大きさは分からないですけど、多分まりあはすっごい傷付いてたと思います」
「男として聞くけど、もちろん暴力とか手は出してないよな?」
「出してません!!絶対!!そんなことしません!!」
衝撃の質問に少し声が大きくなる。
お兄さんは「ごめんごめん。そんなことしないのは分かってるよ」と言って宥めるように僕の頭を撫でた。
「飯食って買い物でも行くか」
ご飯屋さんに着いて、料理がくるまでの間
「なんで喧嘩したの?」
と切り出された。
けど内容が内容なだけに正直話しにくい…。
「僕の…距離感がわからないって言われました」
「レイがまりあを構いすぎたってこと?」
「そう…かもしれません…」
「例えば?」
「一緒に寝たりとか…」
と言うとお兄さんは飲んでた水を吹き出して、慌てておしぼりで口元を拭いた。
「すげえ聞いてて気まずい…。寝たってその…」
「同じベッドで眠ったってことですけど…」
「あ、ああ、だよな?だよな?よかった。ん?よかった…?うん、いや違かったとしても大人だし良いんだけどさ」
「……?」
お兄さんの意図が分からず首を傾げると
「ごめんごめん、続けて」
と言われる。
「普通はこういうことしないって言われて」
「まあな、とくにあやふやな関係なままする事ではないな」
「色んな人にこういう事してるなら、もうしないでって…」
「うーん…」
とお兄さんは困ったように笑う。




