EP7-1
また全て結び直して
まりあと初めて言い合いになった。
昨日までの満たされた時間が嘘みたいに気分が下がってる
部屋に戻ってベッドに身を投げて、もう一度冷静に考えようと頭の中で整理した。
突然距離を取ろうとするまりあに違和感があった。
急に僕から離れようとしてるのかと思ってあの瞬間は冷静に返事できてなかったと思う。
そして、まりあは僕の距離感がおかしいと言った。
その自覚もある…。
だって触れられる距離に彼女がいるのに、触れないで居るっていう選択肢が僕の中からとっくに消えてたから。
結局まりあが何を望んだのかわからない。
僕が他の女性にも触れた手で触れて欲しくないってことなのか、そもそも僕に触れられることも嫌だったのか。
何かの気持ちは隠したまま言葉を選ぶような遠回しな言い方に腹が立った。隠してるその気持ちがなんなのか分からなくて。
その気持ちを知りたいのに、僕が言葉を重ねるほどまりあの表情は曇っていった。
じゃあもう彼女の好きにすればいい、と
僕から溢れる彼女に対する抑えられない感情ごと全部手放すためにひどいことを言った。
まりあは口を結んで目に涙をいっぱいに溜めてた。
見たことないくらい傷付いた顔をして。
後悔しても遅かった。
まりあの傷付いた顔を見て、それ以上に傷付いてる自分がいた。
自分が傷付くのが怖くて、その先の彼女の言葉を聞くのが怖くて
先に傷付けるような言葉を吐いたのは間違いなく僕だ。
彼女のあんな顔は初めて見た。
その顔をさせてしまったのが僕だと言うことも分かってる。
でもあんな顔を、まりあにさせるべきじゃないって気付いたのも今更になってだった。
部屋を飛び出したまりあをすぐに追いかけられなくて、ハッとした後に彼女の後を追って部屋の扉をノックしようとすると
部屋の中から携帯の着信音が聞こえた。
その後すぐ彼女の声で
『優ちゃん』と名前が呼ばれる。
ノックしようとした手をそのまま収めて、部屋に戻って、今に至る。
「《痛い》」
胸がギリギリ痛かった。
なんなんだこれは。感じたことない。
まりあの足音が部屋の外で聞こえる。
それなのに部屋から出れない。どうしたらいいか分からなくて。
僕が何か言うたびにまたまりあを傷付けちゃうんじゃないかと不安で仕方ない。
「《これが…》」
これが今まで分かったつもりで何度も歌にしてた恋だというなら、こんなに辛いものなんだと。
僕は何も知らずにあんな歌を歌ってたんだ。
「《こんなに辛くて苦しいのも知らないで》」
玄関の開く音が聞こえた。
「…………!?」
リビングに出ると人の気配がなくなってる。
もしかして出かけた…?
窓の外を見ると、まりあが優ちゃんの車に乗り込む姿が見えた。
言い表せないくらいの焦りと不安と少しの怒りがごちゃ混ぜになっていく。
「《まりあだって僕の女性関係をとやかく言えないだろ》」
なんなんだ、この感情。不愉快を通り越して不安で一杯になる。
無理矢理にでも引き止めれば良かった?
でもそんな事をして、まりあに腕を振り払われたら僕はどうしたらいい?
ざわつきが収まらない気持ちを落ち着かせるために一度ソファに座って深いため息をついたあと、ハッとして寝室手前の階段にある彼女のドレッサーを振り返った。
香水や帽子やヘアアクセなどがしまわれてる棚の中に、いつものジュエリーボックスがあった。
ボックスに手を伸ばす指先が微かに震える。
きっと付けてくれてるはず。
付け忘れたことなんて今までなかったし。
付けてないんだとしたら、それは彼女の意思で付けなかったということになる。
蓋を開けると、中にはブレスレットが残されていた。
どうしよう。
まりあが遠くに行ってしまいそうで怖い
「……ッ……」
経験したことのない不安に押しつぶされそうになっていると
家の呼び鈴が鳴った。
慌ててジュエリーボックスをしまってインターホンを見るとまりあのお兄さんがいた。




