EP6-17
忘れてしまいそうになるけど、私はここでレイに愛されたいわけじゃなくて休養を取って欲しいんだから。
『確かにそれは関係ないけど、私はその距離感に慣れてるアイドルじゃないの…!だから…ちゃんと一線引いて。私は勘違いして浮かれたくないし、レイも心身ともに健康になったらいずれ韓国に戻るでしょ?』
黙って話を聞いてたレイが眉間に皺を寄せた。
ちょっとイラついてるのが伝わってくる。
「《まりあには僕がそうやって色んな人に手を出してた男に見えるんだ?》」
『ちがう、そんなこと言ってない…!』
「《じゃあなに?》」
言えないでしょ、触れられることに当たり前になってそれ以上望んじゃいそうになるって。だからやめてって。言える訳ないんだよ。
そんなこと言ったらレイはこの家が気が休まらない場所になる。
そんな下心持ってる人間が同じ家にいるなんて、きっと落ち着かないに決まってる。
呆れたような深いため息が聞こえて
「《あっそ。何も分かってないね、まりあは。自分のことしか考えてないんだ。》」
『自分のことしかって何?私…レイが嫌がること何かしちゃってた?!』
「《さあ?自分で考えたら?》」
レイから言われた衝撃の言葉。
レイが落ち着けるようにって色々やってたつもりが、その中に何かレイが嫌なものがあったのかな。
『ごめんね…。』
泣いちゃダメだ。
私はグッと奥歯を噛み締めて、レイの部屋を出た。
「まりあ…!」
背後からレイの声が聞こえたけど、溢れた涙がレイに見られないように急いで階段を上がって寝室に入った。
リビングの方からレイの部屋の扉が開く音が聞こえる。
きっとレイもびっくりしたに違いない。
この女突然独占欲出してきたって。
違うのに。私の気持ちの問題でやめてほしいだけだったのに。
ここ最近私からレイに近付きすぎてた?
気まぐれで買ってくれたプレゼントに天狗になって勘違いしてなかった?
なにかレイが嫌がることしてなかった?
色々考えるけど、あんなに冷たく言われたことが結構堪えてるみたいだった。
あの目とため息を思い出して体が震える。
私がレイの優しさに甘えて欲をかいていたのかもしれない。
知らず知らずのうちに。
謝りたいのに、また冷たくされると思うと足が動かない。
手に持っていたスマホが鳴って、画面には優ちゃんの名前。
『もしもし?おはよう、優ちゃん。』
【おは……えっ、なに。なんか変。】
私の様子に何か気付いた優ちゃんが、おはようのテンションを一気に変えた。
『そう?いつも通りだよ?』
【いつも通りの人がわざわざいつも通りなんて言わないんだよ。撮影で使った衣装まりあにあげようと思って電話したんだけど…今家?】
『うん、家にいたよ』
【ちょっと外出ようよ、迎えにいくから。今近くに居たから20分しないで着く。】
『うん、わかった』
急いで顔を洗って、服を着替えた。
レイは部屋に入ったのかリビングに姿が見えない。
むしろ今はそれが助かった。
『…あ……』
いつもの習慣でレイのブレスレットを付けようとして、動きを止める。
私は初めて、そのブレスレットを付けずに家を出た。




