EP6-15
スーッと自分の寝息が聞こえて、あわててハッと目を覚ます。
『ダメだ…!寝ちゃう前にお風呂入らなきゃ…!』
急いで毛布を剥いで、バタバタとお風呂に駆け込んだ。
お風呂で寝ちゃって溺死とかしたくないから、シャワーだけで済ませると体が芯から冷えるような感じがした。
『寒い〜…』
急いで服を着て、申し訳程度に適当にスキンケアをした。
ドライヤーする前に一旦喉が乾いたのでキッチンに行くとソファに居たレイが手招きした。
『……?』
「ここ来て。髪乾かしてあげる」
『え〜?いいんですかぁ〜?』
ニヤニヤしながら大喜びでレイの前に座る私を彼は笑った。
よっぽど酔っ払いが面白いんだろう。
甲斐甲斐しくヘアオイルを付けてくれたあと、丁寧にブラシで梳かして乾かしてくれる。
しばらく後ろを乾かしたあと体育座りのままウトウトしてる私に
「はい、こっち向いて」
と肩をトントンされたので向き合うように体をぐるっと回した。
うやうやしく前髪も乾かしてくれる。
『うわ〜優しい〜風弱くしてくれるんだあ』
前髪を乾かすときに弱い風に切り替えたレイに目を瞑ったまま拍手する。
ブーン…とドライヤーが止まり、また優しく全体をブラッシングしてくれた。
「はい終わり。おいで。」
彼は私の背中に毛布を掛けてまた自分の体の上に乗せるように抱き上げた。
『普通大人を抱っこするのにその抱き上げ方しないよ』
「んー?」
先ほどと同じように脇の下に手を入れて抱き上げられる。
『仔犬持ちじゃんこれ』
「そうなの?普通はどうするの?」
『お姫様抱っことかじゃない?』
「僕はこのやり方が好きなの。向かい合わせで抱っこされてるの見るの可愛いでしょ」
『あー?他の女にもやってたんだ〜。最低〜』
「やったことないよ」
笑いを堪えられずに笑いながら言ってる。
やったことないのに咄嗟にこれ可愛いからやっちゃお〜なんて出ないと思うんだけど。
自分の足の間に私の体を置いて、そのまま体を倒すようにグイッと背中を引き寄せた。
『こんなことしてたら寝ちゃうよ…もうベッドで寝るから。』
「まだ22:30だよ?一緒にテレビ見よう」
ソファの肘置きに上半身を預けて半分体を起こしてテレビを見る彼の胸に耳を当てるような形で横になる。
耳に響くレイの心音が心地いい。
酔っ払いには心音は効果ばつぐんだ。
『重いでしょ。テレビ見にくいでしょ。』
「大丈夫」
背中に回された手が私を寝かしつけるようにリズミカルに叩いてくる。
『レイ…心臓動いてるね』
また頭上でふふっと笑い声が聞こえる。
『不整脈出てないか、ちゃんと聞いててあげるね』
「お願いします。」
くっくっくっ
と彼が笑うたびに振動が伝わってくる。
この酔っ払いうるせーなあとか思ってんだろうな
レイの心臓が拍動するたびに
生きててくれてありがとうという気持ちが溢れた。
レイの匂いがする。
一緒に暮らすようになって初めて知った彼の匂い。
香水の名残なのか、部屋の匂いなのか
なにかはよくわからないけど。
でもこの匂いに包まれるとあっという間に眠りに落ちてしまう。
テレビの音半分、レイの心音が半分。
寝落ちそうになるぼんやりとした意識の中でもレイは私の体に何度も布団を掛け直したり、髪の毛を指で梳かしたりしてるのは分かってた。
酔っ払ってるのをいいことに、
年下の居候の子にこんなに甘えちゃっていいのかな
レイが居なくなるときに私は耐えられるのかな
テレビの笑い声も遠くなって、眠ることに抗うこともなく私はそのまま意識を手放した。
「まりあ?」
私が眠りに落ちたあと、レイが私の名前を呼んだことにも気付かないままで。
「《ほんとに寝ちゃった。無防備なんだか信用してくれるんだか…僕居なくなったあともそのままで大丈夫なの?》」
割れ物を扱うように私の頬を包んで、唇の端にキスされたことにも気付かないままで。




