EP6-12
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『じゃあ行ってきます!お留守番よろしくね!』
レイがくれた靴を履いて、玄関まで見送りにきたレイに手を振ると
その手をぎゅうーっと引っ張られる。
『ちょっと。もう時間ないの!』
「行ってきますのハグは?」
なにそれ。
そんなのしたことなんてないじゃん
怪訝そうな顔をする私をお構いなしにレイは腕を広げた。
『なにそれ…したことないじゃん、行ってきますのハグなんて…。どこの女と勘違いしてるの?』
「《いいから》」
恐る恐る、レイの腕の中に入ると思った以上に強い力で抱きしめられる。
否、締め殺されかける。
『いててててててて!!』
「行ってらっしゃい」
そう言って私の頭の上にキスを落とす。
『……………!???』
頭を抑えて距離を取ると
「7時には帰ってきてね」
しれっと言ってくる。
『…いや、それ30分後じゃん』
ここ最近の末っ子全開の愛情表現に戸惑いつつ、内心バックバクのまま私は家を出た。
待ち合わせの店に行くと友梨もちょうど着いたのかアウターを脱いでいるところだった。
『おつかれー!久しぶりぃ〜!』
「おつかれ〜おひさ〜!」
上着を脱ぎながら友梨の前に座ると
「まあまあ、話は後にして一旦注文しましょうや」
と何かを含んだ江戸っ子のような言い方をされる。
『う、うん…?』
料理もある程度揃って乾杯したところで友梨が話し始めた。
「私に何か言うことない?」
組んだ指の上に顎を乗せて怖いくらいの笑顔で問いかけられた。
『えっ?言うこと…?あー…引っ越した、よ?』
「いいえ」
『いいえ!?え、なに…なんだろ…第二期のアニメ化決まりました。』
「おめでとう。だけど、いいえ。」
彼女は目を瞑ったまま首を横に振る。
え、なんだろ…
好きな人と同棲してるって言いたいけど
同棲じゃなくて預かってるって感じだし…
友梨はわかりやすくため息をついてスマホを操作すると、私に画面を向けて一枚の写真を見せてきた。
『…………!??!!!』
咄嗟にスマホ画面を隠してそれを奪う。
「誰かな?隣の男は。」
固唾を飲み込んでまたその画面を見ると
私とレイが手を繋いで歩いてる写真だった。
しかも探偵みたいな盗撮風。
『なにこれ!!!?』
「この間街中でまりあ見かけて声掛けようと思ったら知らない男と手繋いでてさ〜。親友なはずなのに何も知らされてなくてショックで飛び蹴りしそうだったよ」
とニコニコ言う。
『待って!言い訳させてください!』
「いいえ、言い訳は結構です。真実のみ述べなさい」
『違うの!』
「いいえ、私は今あなたに求めてる以外の発言を許していませんよ。」
『ねぇーー!!!違うんだってば!』
「何してる人?」
『…………!』
言えないどうしよう…
「無職?」
『違う!!変な男じゃない!!』
「んじゃなに?ヒモ?」
『収入だけで言えば私よりもずっとずーーーっと稼いでる…』
「はあ!?!なにそれまともな仕事なの!!??」
友梨が言うことはごもっともだ。
『まとももまとも、大まともだよ。』
友梨は眉を顰めて訝しげに私を見つめる。
「どこで出会ったの?」
『えっと…FABLEのライブで…』
「何歳?そいつ」
『26歳…』
「それ…騙されてない…?結婚詐欺とか…」
『いや、大前提付き合ってないの』
「ますます意味わかんない…ママ活…?」
声を顰めた友梨の言葉に吹き出しそうになる。
「まじ意味わかんないんだけど…何も話せないの?」
『ちょっと待って、じゃあどこまで話していいか本人に確認とってみてもいい…?』
私の言葉に、前のめりだった友梨は長く息を吐いて背もたれに寄りかかった。
「いいよ、聞いてみて」
電話にしようかとも思ったけど通話中にスマホ奪われたらどうなるかわからないし、メッセージを送った。




