EP6-9
帰宅するとレイは私をソファに座らせた。
「ここにいて」
『え?どういう…』
いいから、とでも言うようにぽんぽんと肩を叩かれ
そんな私をよそに買い物袋の中を取り出す。
テーブルに並べられた物のなかには常備薬もあった。
『え!これ…!』
「空き箱持って行って買ってきた。」
す、スパダリ!!!!!?
そんなものはなんでもない、という感じで次々取り出されたのは
足元だけ温める小さいこたつの様な機械。
充電式の湯たんぽ、ゆず茶、厚手の大判ブランケットなどなど。
いつの間にこんなにタクシーに積んでたんだろうと言うほどのどう見ても生理痛セットだ。
『ど、どうしたの…?こんなに…』
「調べて買った」
カチャカチャ配線をして足元こたつをソファに置くと足を入れるように促された。
『わ…すごいあったかくて気持ちいい』
「これはワンウォッシュしてくる。」
脱衣所にブランケットをてきぱきと持って行くレイは、手際のいいお母さんのようだった。
自室から毛布を持って来て私に掛けると、腕を引いて膝枕をしてくれる。
流れる様な作業に目をぱちぱちさせていると
「おやすみ」
と言って私の頭を優しく撫でて、子供を寝かしつけるようにぽんぽんと体を叩いてくれた
これじゃあどっちが年上かわからないな、なんて思いつつ
レイの匂いがする毛布に落ち着いてそのまま寝付いた。
あまりにもあったかくて心地のいいまま目が覚めると、上から寝息が聞こえた。
目の前には見覚えのあるネックレスがぶら下がる首元。
毛布の上からぎゅうっと抱きしめていたのはレイの腕。
状況がわからないままで、目だけで周りを見渡す。
レイの自室のベッドの上だ。
なんで私はここにいるんだろう
レイは腕枕した手で私の肩をガッチリ抱きしめてるし全く身動きが取れない。
時計を見ると21時。
まずい。お昼ご飯も夜ご飯も準備してないのに寝過ぎちゃった。
もぞもぞ動こうともがくと、腕の力が弱まった。
チャンスと思っていたらフワッと毛布が掛け直されてまたホールドされる。
「起きた…?」
掠れた声が頭上から聞こえて顔を上げると
眠そうに目を細めたレイが私を見てた。
『私なんでここで寝てるの?』
少し体を離したレイがんーっ、と伸びをして
「《寝てるまりあが寒くないように何回も様子見て毛布掛け直したりしてたんだけど…やっぱりどうしても寒そうにしてたから。でもまりあの寝室入るのも気が引けたから僕の寝室にして、寝てるまりあ見てたら僕も眠くなったからそのまま寝た。》」
そこまで言うとまたピッタリと私を抱きしめて、寝る体制に入った。
美しさの暴力がすごい。
カーテンの隙間から少し差し込む月明かりに照らされたレイが妖精に見える。
うわぁぁぁぁぁと叫びたくなる気持ちを抑えて、レイの喉元や鼻筋、顎から耳に掛けてのラインを
彼が目をつぶってるのを良いことに目に焼き付けるように見た。
『でっ…でもお腹減ったでしょ?ご飯にしよう。なんか簡単なの作るから』
また眠そうに目を開けたレイは私の頬にかかる毛を耳にかけてじーーーっと見てくる。
『な、なに?』
フッと鼻で笑われた。
両手でぐいーっと体を押して体を仰け反らせると、レイはまた笑って
「《猫じゃないんだから》」
と毛布の上から腰に回していた手を緩めた。
ベッドを降りて少し駆け足でパタパタと寝室から出る。
なっっ、なんなの!?
昼間はどう見てもお子ちゃまなチビ洸だったのに、今さっきのレイは色気がすごいかった。
年下に翻弄される情けない私は
バクバクする心臓を必死に無視して、絶対紅くなってる頬を手の甲で冷やしながらキッチンに入るのであった。




