EP5-13
「お優しいですね」
と店員の女の子から声を掛けてきた。
「そう…ですか?」
「はい、とってもお優しいと思います!彼女さんですか?」
「そうです」
「彼女さんも可愛いです…!」
「ありがとうございます。そうなんです可愛いですよね」
と笑って返す。
まりあが離れてるのを良い事に好き勝手話してしまったけど…。
良いよね、バレるわけじゃないし。
トレーを持ってまりあの隣に座ると
『なんで?』
と真顔で言われる。
「…ん?」
『普通は向かい合って座るんだよ!』
テーブルを挟んだ向かいの椅子を指差すまりあの手を握って下ろしてわざと微笑むと大人しくなった。
単純な彼女にまた笑いそうになるのをこらえながら、まりあの前にコーヒーを置くと
『ありがとう、いただきます』と
ニコニコ顔に戻って僕にお礼を言ってくれる。
彼女のくるくる変わる表情をずっと見たいって思った。
僕と彼女以外の人がいる空間でもまりあが一番輝いて見えるような錯覚がした。
自分の顔程の大きいドーナツをどこから食べようか迷ってるその動作も全て。
立ち上がった2人組の男女が通り過ぎざまに、しきりにまりあを見てた。別に何か言ってる訳じゃないけどなんとなく不満。
今日はこの"なんとなく不満"が多い。
当の本人はというと、見られてることに気付きもしないでドーナツを頬張ってる。
『このあとどうする?』
「あー…《そろそろアウター欲しいんだけど近くに買い物できる場所あるかな?》」
『《ここの通りを抜けると沢山あるよ》』
日本語の限界を時々感じると悔しくなる。
もっと沢山勉強しよう。
このまま彼女に甘えて韓国語出してちゃダメだ。
そう思いながらまりあの口を拭いてあげようとしたら、それに気付いたまりあが僕の手から素早くナプキンを奪って自分で口を拭いた
『子供じゃないんだから自分で拭けるってば』
とムキになる。
「なんで嫌がるの?」
『嫌とかじゃないのっ!』
「ふーん…」
そう言ったあとにコーヒーを飲んで頬杖をついてまた彼女を見た
『なに?今度はなんで見てるの?』
「可愛いから。」
『…………!?』
咳き込みかけた彼女が胸を抑える
「見るのもダメなの?」
まりあは周りを気にしながら僕の口を抑える仕草をして口元に指を当てて
『《もう何も言わないで!今日変だよどうしたの》』
と目力で圧力をかけてきた
まりあを揶揄うのは面白いけど、そろそろ本気で怒られそうだから大人しくしておこう




