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2人のシェルター  作者: 倉るて
毎日少しずつ
54/121

EP5-12



僕に握られたままの手を振り解く事もしないで


『今日の夜は何食べたい?』とまりあ。




「その前にランチじゃないの?」



少しポカンとして



『あ、そうか……2人でこの時間に外に出たの初めてだから時間の感覚がおかしかった。まだお昼か』



「どこかご飯食べにお店入る?」



『え……!?』



「…………?」



『なにそれデートじゃん!!ご褒美!?』



また意味のわからないことを言い始めた。



「ご褒美はよく分からないけど、じゃあデートしよう。」



彼女に便乗すると



『やったー!!オシャレしてきてよかったー!!』


と彼女がはしゃぐので


「でも優ちゃんのためにオシャレしたんでしょ?」



『   え?  』


僕の言葉に聞いた事もないくらい低い声で聞き返されて、彼女はピタッと歩くのをやめた。




「行こうよ、どうしたの?」


繋いだ手を引いてもビクともしない。





『許せない!心外です!』




ビシッと指を指して怒ったような顔をされるけど何のことか分からないし、全然怖くない。




『美容室のあとレイとお出かけするかもしれないからオシャレしたのに!!』



「そ、そうだったの…?」




『なんで優ちゃんが出てくるの!?もーー!!』



「だって…えっと…ごめん」

『いいよ。』



謝るとすごい速さで許してくれた。なんか面白い。



「ふふっ…」



『何笑ってんだ!贖罪しょくざいがまだだぞ!』



「《なにそれ?》」


あまりにも聞かない単語に思わず韓国語で聞き返す。


『《償うこと》』


彼女もうーーんと悩んだ後で韓国語で返事をした。




「《そんなに重罪犯した?》」


『《とってもね!!》』



その"しょくざい"は彼女が気になってたカフェに行くこと、というなんとも簡単なものだった。









『ここのカフェ!』


お店を見つけると少し早足になった彼女に合わせて店に入る





カウンターで注文してから席を取るタイプだったので先に注文に向かうとまりあが悩み始めた。




悩むまりあを見つめていたら、横から視線を感じてその方を見ると店員の女の子と目が合う。

いつもの癖というか職業病のようなもので反射的に笑顔で返すと凄い勢いで目を逸らされて少し傷ついた…そんな勢いよく逸らさなくてもいいじゃん…





『もう決まった…?』


とまりあが僕を見上げた。


「うん。なんとなくは」



まりあが何と何で悩んでいるかはもう分かってる。



「これとこれ迷ってるんでしょ?」


まりあはメニューから顔を上げてびっくりした顔で頷く。

外で過ごしてる彼女を見るのが新鮮で、仕草の全部が可愛く見えてくる。


「これとこれ下さい。あとホットコーヒーと…」


『待って待って!2つも食べきれないかも…!』


まりあが腕を掴んで小声で言うけど、丸聞こえだし店員の女の子も笑って聞いてる。


「いいよ、残して。僕が食べるから」


わざとらしく下唇を出して申し訳なさそうにするまりあにまた笑ってしまう。




電子決済のスマホ画面を準備したまりあに


「そうだ。席とってて?」


と言ってスマホを押し返すとジトーっとした目で見られる。



「なに?」


笑いながら聞くと『お兄ちゃんムーブでしょ』とまた訳の分からない事を言い残してレジを離れた。

彼女は奢られるのがあまり好きじゃないらしい。



でも今日僕は、

新しい趣味を見つけた。


それはまりあを甘やかすこと。








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