EP5-11
名前を呼ばれて顔を上げると、ガラッと雰囲気が変わった彼女が『かっこいい〜!!』と言いながら駆け寄ってきた。
ニコニコしながら、小動物みたいにチョロチョロと周りを移動して僕を見上げるまりあ。
何かを含むような笑顔で"エロい"という2人に対して、ムキになりながら僕の両耳を彼女が塞いだ。
そんな彼女の言動になんでか満たされる感覚でふふっと声がもれてしまう。
「気に入った?」
まりあに合わせて少し屈んで、その手をさらに上から包むと目を見開いたまま動かなくなった。
後ろでまりあの上着を持つ"優ちゃん"の手からそれを取って彼女に向けると素直に袖を通した。
子供みたいに上着を着せられてる彼女のこういうところが可愛いと思う。
「ありがとうございました」
そう伝えてまりあの肩を引くと、思い出したように『お会計!』と顔を上げた。
僕が払ったと知って、日本の"ぴえん"みたいな顔をして少し申し訳なさそうに小さくなって『ありがとう』と言う。
こういう仕草をされるたびに、そんな彼女をもっと甘やかしてみたくなるんだよね。
先に店を出て階段の下でまりあを待っていると、一段踏み外した彼女の体が大きく傾いた
「まりあちゃん!!」
「まりあ危ない!!!」
階段を駆け上がって、まりあまであと少しと手を伸ばしたところで
グンッと彼女の身体が遠ざかった。
「ナイスキャッチ優夜!!」
彼女を助けたのは
階段の手すりを掴んで、もう片方の手でしっかりとまりあの身体を抱える"優ちゃん"。
「だからあれほど足元見て歩けと…」
鬼の形相でまりあに言いかけた彼は
後ろにいた龍樹くんに「まあまあ」と宥められていた。
『ごめんなさーい!!!』
体を抱えられながら大声で謝る彼女に優ちゃんは腕を離すと、ため息をついて
「痛いところは?」と優しく問いかけた。
『おかげさまで…』
そんな危なっかしい靴履くからでしょ!!!
と最後もう一言叱られて拗ねた彼女はトボトボと階段を降りてきた。
「《大丈夫?》」
『《大丈夫だけどぉ…》』
手を差し出すと素直に握って、店の入り口で見送る2人に手を振るまりあ。
「《怪我してなければいいんだ、ごめんね。助けられなくて。》」
『《ううん、私が悪いからいいの。ありがとう》』
彼女の頬にかかる、まだ見慣れない色の髪を直しただけで耳まで真っ赤にするまりあをじっと見る。
『…………?』
不思議そうに首を傾げたところで、僕が笑うと彼女も僕に釣られてニコニコと笑った。




