EP5-8
シャンプーをしている2人の方はよく見えないけど、声の感じで楽しそうに話してるのは十分に分かった。
"ゆうちゃん"は終始まりあをあしらう様な話し方で、更に面白くないのはそうやってあしらわれる事に楽しそうに笑ってるまりあ。
僕の時にそんな楽しそうに笑った事ないじゃん…
とまりあに対してのような、自分に対してのようなな不満が湧き上がってくる。
あの人はまりあが僕に見せない悩みとかそういうものもこれまでに聞いてきたり、励まし合ったりしてきた仲なんだろうと何となく察した。
彼はまりあにとって気の置けない仲なんだろう。僕とは違って。
なんとなく胸の奥に不満の様な、不快な不安が広がる。
「大丈夫?シャンプーしてる2人、気になる?」
突然声をかけられて顔が熱くなった。
「別に…気にならないデス…」
「そう?でもうわの空じゃん」
「ウワノソラ…?」
聞き慣れない言葉に首を傾げていると、その人は僕が開いていた雑誌をグイッと回して
「ずーーーーーーっと逆さまだよ、君の雑誌。」
目を泳がせてぐっと唇を噛む僕を笑って、その人は「トリートメント作ってくるね」とバックルームに消えて行った。
鏡に映る情けない顔をしている自分に
「《どうしたんだ、しっかりしろレイ》」
と小さく呟いた。
まりあがシャンプーから戻るのと入れ替わりで今度は僕がシャンプーをする番になった。
「良い感じだと思う?あの2人?」
シャンプーブースに2人になった途端、その人は突然聞いてきた。
「…えっ…??」
突っ込んだ質問に返さないでいると
「君の目にはあの2人、どう見える?」
と改めて聞き直された。
「別に…僕はただ…」
「ただ?」
言い淀む僕を急かすわけでもなく、イスのペダルを踏んで静かに背もたれが倒される。
「だって……変じゃないデスカ」
やっと吐き出した言葉に、彼も「なにが?」と答える。
「僕には……その…2人をどうだとか…、付き合ってるみたいだとか言えるくらい彼を知らないデス…」
「気にはなるんだ?」
仰向けになった僕を覗き込むその人。
表情はイタズラじみたような、なんというか…嬉しそう。
僕はその顔になぜかムキになって、
「いいえ。」
と返して目を閉じた。




