EP5-7
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サロンに入るとまりあは僕を忘れたように仲良さげに2人と話した。
"ゆうちゃん"と呼ばれた男は優しく笑うと、まりあに手を差し出してごく自然に席まで案内する。
「足元気をつけてね」と優しい言葉も添えてリードする姿はまさしく大人の男だった。
"ゆうちゃん"と並ぶまりあはいつもより自然体というか、気の抜けたような表情で
あの男の人との関係性が安心できるものなんだと実感させられる様だった。
そしていつもよりなんとなく女性らしいというか、可愛らしく見えた。
「《その人と会うから張り切ってたのか…》」
と1人で小さく呟いた。
いつもは履かないヒールも、可愛らしい服装も。僕のためじゃなく、あの人のためか……とそこまで考えて少し落ち込んでる自分にハッとした。
別に彼女が誰のためにオシャレを楽しもうと、なにしようと僕に関係ないだろ、と。
家を出るときに何も疑わずに僕のためのオシャレだと思った自分が恥ずかしい。
そして現在に引き戻るために思考を振り払ったところで
「あの……大丈夫そう?」
心配そうに僕を見つめるもう1人のスタッフに声をかけられ、
咄嗟のことに少し目を泳がせたあと
「だいじょうぶ…です」
と冷静を装って返事をした。
途中途中でまりあ達の会話が気になったけど、早い速度で話される日本語に所々付いていけない。
幼馴染だと言っていたし、積もる話もあるんだろうけどゆうちゃんと呼ばれたあの男の人がチラチラと僕を見ながらまりあと話しているのが気に入らない。
シャンプーに向かうまりあが僕の顔を覗くように鏡を見て来たけど、それまで楽しそうに話してた2人を思い出してフッと目を逸らした。
ああ…もう…本当に…!
なんでこんなに大人げないんだ。
本当はこんな態度じゃなくて、家で2人で話すみたいに目を合わせて話したいんだよ。
まりあの視線の先にも僕が居て、僕の視界の中にも僕を見つめるまりあが居て、何でもないどうでもいい話をしたいんだよ。
家ではそれができるのに、なぜここだと上手くできないんだろう。




