EP1-4
そしてある日。
ガヤガヤと賑わう店内。
私は重い重い腰をあげて、小規模な同窓会に参加するべく街中の居酒屋にいた。
クラスだけの同窓会。
同じクラスで同じ部活だった子が結婚して海外に移住するらしく、取り急ぎ集まれるメンバーだけで送別会も兼ねたプチ同窓会が開かれることになったのだ。
本当は楽しみだったはずの同窓会が、今の私は少し憂鬱だった。
違うクラスだった女の子も直前で参加することが決定したからだ。
その女の子というのが学生のとき
何かと私を目の敵にして突っかかってくる子だった。
表向きは仲良しな感じなんだけど、常に見下されてるような…なんというかそんな感じ。
私が買うものや身につける物は否定する癖に、私がうんざりして身につけるのをやめるとすぐその後に同じ物を買って身につけていたりする。
周りに話せば自意識過剰と思われるかもしれないけど、彼女は私が身につけるもの全てが羨ましくて仕方ないのだろうと幼心に割り切っていた。
『大丈夫…隣に座らなきゃいい…。うまく受け流したらいい…』
久しぶりのその子に会う前からうんざりしつつ、意気込んでから店内を進んだ。
「おーい!まりあ!こっちこっち!」
呼ばれた方を振り返ると半個室の部屋の中から、友達の友梨が手を振っていた。
『久しぶりー!ずっと遊べてなかったねー…』
「本当だよー。元気そうで良かった。今日は飲もう!」
おいでおいでと友梨は席を詰めて私のスペースを開けてくれる。
「ねえ聞いた?アイツ来るよね?」
隣に座ってバッグを置いた私に間髪入れずに友梨が言う。
『あー…ねー…みたいだねえ…』
「とほほって顔ウケる。まりあは特に嫌だよね〜」
ケラケラと笑いながらの彼女にメニューを差し出されたところで
「みんなー!まりあも無事合流ね〜!」
と少し大きい声で言った。
「おおー!久しぶりー!」
「変わんねーなー!そこ2人!」
「俺なんてもう寂しくなってんだわ、上の方〜」
少し遠くから話しかけてくる同級生たちにも軽く手を振って笑い返す。
「飲も飲も、あいつまだ来てないし!」
『そだね、今日は飲むぞー!』
「おお、いいね!仕事一段落?」
『そう、明日はオフにした!』
友梨は"やるじゃん"とでも言うように親指を立ててニヤリと笑った。