EP3-7
レイくんのおかげでキッチンの片付けも終わり、夕飯を済ませてお互いにゆっくり過ごしていた時に家の門のチャイムが鳴った。
『はーい、どうぞー』と言って門のロックを解除すると、また間も無くして玄関の呼び鈴が鳴る。
「………?」
ソファに座ってテレビを見てたレイくんが不思議そうに振り返ったのをそのままに玄関で荷物を受け取った。
『やっと届いた〜』
そう言って手招きすると、抱えていたクッションを置いて
大きい男の子はトコトコと歩み寄ってきた。
『はい、どうぞ』
「………?」
箱を渡すと不思議そうな顔をしたあとに、ゆっくりとダンボールを開けた。
「《これ…》」
『《あなたの》』
彼の手にはスマートフォン。
『《日本にいる間はこれ使って》』
用意したSIMカードも渡してあげると
「ありがと…ございます」
『どういたしまして』
別に初めてのスマホでもないだろうに、少しソワソワしたあと
「《お姉さんの連絡先を教えてください。》」
と言われて、不覚にもドキッとしてしまった。
推しと連絡先を交換する世界線に今私はいるのか…!!!
胸をぎゅっとしながら倒れ込みたい気持ちを抑えて
『これだよ』
と言って連絡先を見せた。
そうだった、と思い出して連絡を取るアプリをインストールさせて
電話番号とアプリのアカウントのQRコードも読み取ってもらって連絡先を交換した。
『《私が留守の時に何かあったら、すぐ連絡してね。》』
と言って彼を見ると、まだ何か言いたそうにしている。
『ん?どうしたの?』
「《お姉さんの名前…》」
『あ、そうか…!《そうだった。ごめんね、私はまりあっていいます》』
彼は目を丸くして「まりあ…」とボソッとこぼしてスマホに打ち込んでいた。
改めて自己紹介をして握手の手を差し出すと、彼もスッと握り返して
「《レイです》」
と言った。
今日まで彼とはほとんど喋らず
はい、いいえ、ありがとうございます
だけで意思の疎通を図っていたんだと気付く。
『《順番変だったね、もう2週間も一緒にいたのに。》」
「《ありがとうございます、迷惑かけてごめんなさい。》」
『《謝るの禁止だよ、私にはね。私はレイがこうして生きてくれてるだけでもありがとう、なんだから》』
「………!」
『《いつまでもゆっくりしていってね》』
ほんと、顔色も見違えるように良くなった。
部屋から出てきてリビングにいる時間も増えたし、
自分から進んで手伝いをしてくれたり
私がテレビで見てたレイの面影が見え隠れするようになった。
このまま嫌なことは全部忘れて元気になってくれたらいい。それ以上は何も望まない。
だけど…たまにドキドキしちゃってるのは許してね…




