EP2-7
しばらくすると苦しそうだった彼の呼吸は穏やかになった
レイくんの様子を見つつも黙々と荷造りしていると、寝室から少しだけ物音がした。
時刻は20時。そろそろ一度目を覚ますころかも。
そう思って寝室に向かうとレイくんがベッドの縁に座って
今まさに立ちあがろうとしてるところだった。
『《ダメ、ダメ!どうしたの?具合悪い?》』
体を制して声を掛けると虚な目で私を見上げた。
「《帰らなきゃ…みんな心配するから》」
『だめ!!!』
無駄に大きい声、そして日本語で言うとビクッと体を震わせた。
『《間違えたごめんごめん。いいの、寝るの。とにかく沢山寝るの。帰るならその後だよ》』
「《でも》」
『《でもじゃない。せっかく上手に逃げて来たんでしょ?ならもういいの。全部全部、何もかも、もういいの。》』
レイくんは考えるように足元を見つめた。
『《最後にちゃんとご飯食べたのはいつ?》』
私の問いに少し顔をあげて、
「《わからない、覚えてない》」と言った。
目頭が熱くなる。
抱きしめちゃダメだろうか、ダメだよね。
でもどうしよう、この小さく見える生き物にどうやって温もりを伝えよう
溢れそうになる涙を堪えて。
目一杯笑って
『《じゃあまずはご飯にしよう》』
先に部屋を出ると、レイくんは後に続いて部屋を出た。
ちょうどその時、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。
「ふぅー…雨すごいな」
ヒロが何やらたくさん抱えて入ってきた。
「あ、ちょうど起きた?アニョハセヨ」
ヒロは気軽にちっすと手を上げてレイ君に挨拶すると、
彼はぺこっと頭を下げて応答した
『(可愛い)』
「これレイ君とやらのご飯。姉ちゃん、つきっきりで夕飯の支度できてないかと思って作ってきた」
『弟〜!!!なんて愛いやつ…』
ヒロはテーブルに次々とご飯を並べる
「ほら座って」
気安くレイくんの腕を叩いて促すヒロ。
あっけに取られる彼に
『《座って、だって。ご飯にしよう。》』と伝えた。
ヒロに腕を引っ張られ、ダイニングの椅子に座らせられる様子の彼を見ると
ヒロはレイくんから見ればお兄さんなんだもんなあ、と微笑ましくなる。
取り皿だったり、グラスを準備してテーブルにつくと
『え、ヒロ!食べていかないの!?』
「大勢居るとあの子も落ち着かないでしょ。それに俺星兄のとこにも飯持ってくから」
『ええ…あぁ、そう…気をつけてね!』
ヒロはヒラヒラと手を振って、レイ君をチラッと見た後帰って行った。
グラスにスポーツドリンクを注いでレイ君に手渡すと、ハッとしたように受け取ってコクコクと飲んだ。
『《無理して食べなくていいよ、食べれそうなのだけ食べてね》』
そう言って取り分けてあげるとそれとなく食べてくれた。




