EP2-6
私の家にはレイくんの着替えになるものがないから、と
途中お兄ちゃんの家に寄って服を持った。
お兄ちゃんにおぶられて家に入り、アシスタントの子がよく仮眠を取る部屋にレイくんを運ぶ。
『お、おおおお兄ちゃんが着替えさせて!』
「当たり前だろ、何どもってんだよ気持ち悪いな」
お兄ちゃんは私をシッシと追い払うと扉を閉めてレイ君の着替えを手伝ってくれた。
着替えが終わったお兄ちゃんが
「まずいな、多分熱あるしまだまだ上がりそうだ。ちょっと買い物行ってくるから様子見てて」
と言って家を出て行った。
私より甲斐甲斐しい。
さすがお兄ちゃん。
私は体温計を彼のおでこに当てた
『38.5…』
布団を掛け直して、キッチンから保冷枕と
タオルに包んだ保冷剤を持って寝室に戻った
『ごめんね、ちょっと冷たくなるね』
頭を持ち上げて枕を交換して、脇の下に保冷剤を入れた。
少し肌寒い室内に暖房を入れて、常備薬の確認のために部屋を出た。
解熱剤と、あと少しでも食べれそうなものを準備してあげなきゃ
『えっと…それから…えーーっと』
両こめかみに人差し指を当てて考えるけど、何も浮かばない。
人はこれをパニックと言うのだろう。
額のタオルを何度か交換したとき、お兄ちゃんが帰ってきた。
「これおでこのやつ、これ薬飲ませる時のゼリー、これスポドリ、あとこれ軽食、あとこれ薬」
『ありがとう、お兄ちゃん』
「俺今日当直だからもう行くけど、あとはお前がしっかり面倒見てやれよ」
『はい!』
お兄ちゃんを見送って、早速おでこのタオルをひんやりシートに貼り替える。
スポドリのキャップをストローに交換して、レイ君に声をかけた。
『《レイ、少しだけ飲める?》』
韓国では年上は年下に対して君とか付けないって見たから、呼び捨てにしたけどなんとなく気まずい。
トントンと肩を叩くと薄く目を開けた。
『《少しだけでいから飲んで》』
そう言って口にストローを当てると少し体を起こしてそれを飲んだ。
だけどまたすぐに眉間に皺を寄せて口からストローを吐き出す。
間髪入れずにスプーンの上のゼリーに包んだ薬を口元に運ぶと、少し考えた後にそれを食べて身体を倒した
『《もう大丈夫だよ、おやすみ》』
そう言ってはだけた布団を掛け直し顔に掛かった毛を避けてあげた。
目の下にクマが出来て、ただでさえ白かった肌が青白く見える。
ゴトンと音を立ててベッドから落ちた何かを探すと、レイ君のスマホだった。
数秒おきにブーと鳴りSNSの新規書き込みの通知が届く。
『こいつらぁー…!』
私はその携帯の電源を切って鍵がついたデスクの引き出しに放り投げて勢いよく閉めた。
『一生黙ってな!!』
獣のように肩で息をしながら私は引き出しを睨みつけるしかできなかった。




