EP2-5
イタズラでもなんでもいいと思った。
だけど送信者は本人マークがついたアカウントだった。
ドクドクと体が脈打つのが分かる。
鼓動に合わせて震える手でスマホを握りしめた。
『お兄ちゃん…!私レイ君助けられるかも…!!!』
「何言ってんだ?」
慎重に言葉を選んで、私は返信した。
もしこのメッセージの向こうにいるのがレイ君本人なら、もし私の声が本当に彼に届くなら、絶対なんとかしてあげたいから。
逃げておいでと言って最寄りの空港を伝えたきり
彼からの返信は途絶えた。
『お兄ちゃん空港まで乗せて行って!』
「く、空港!?なんで?」
『いいから!!早く』
本当に来るかわからない、でも来ないなら来ないで良い。
幸いなことに私には時間がある。
来るか来ないか分からない相手を待つだけの時間が。
小一時間ほど車を走らせて空港に到着した。
一応彼が乗りそうな飛行機を片っ端から調べたけど、あと30分以降にしか到着しそうにもないから出口が見える場所でひたすら待機した。
どんどん雨足が強くなって、とうとう打ち付ける雨の音で周囲の音が何も聞こえなくなる。
「何待ってんの?」
『レイ君。』
「はぁぁぁ!???何言ってんの!?」
お兄ちゃんは口をパクパクさせて何も言えなくなっていた。
さっきまであんなに待機していたタクシーは一台もいなくなって、行き交う人も1人もいなくなった。
その時
『レイ君だ…っ!!』
「お、おい嘘だろ!!!?」
私は傘を持って車を飛び出して1人で入り口に佇む彼に駆け寄った。
「おい、まりあ!」
お兄ちゃんの声が後ろで聞こえる。
よかった、生きてた。
よかった、世の中から彼を隠してあげられる。
座り込んだ彼は帽子を深く被って顔を手で覆った。
その拍子に袖が肘まで落ちて手のタトゥーが顕になる。
名前を呼ぶと大袈裟なくらい震えた彼を目の当たりにして、泣きそうになってしまうからぎゅっと唇を噛んだ。
彼のタトゥーを隠して、
泣きたい気持ちを堪えて、
自然を装って、
『ご飯食べた?』と聞くと彼は目に涙をいっぱい貯めて、
ゆっくり目を閉じて力が抜けたように体勢を崩した
『…………!!?』
お兄ちゃんを呼ぶと走って駆けつけたお兄ちゃんがレイ君を抱えた。
「助けたいんだろ?」
『うん!』
泣きながら何度も頷く私を笑いながら
「なんでまりあが泣いてるんだよ」
と言ってレイ君を抱き抱えて車まで一緒に走ってくれた。




