EP2-3
友達に電話して迎えに来てもらって空港で降ろしてもらった。
「大丈夫なんだよな?生きるためにどこかに行くんだよな?」
と友達は言った。
「さあね、そうだいいんだけど」
それ以上何も言わずに友達にお礼を告げて車を降りた。
所持品はスマホと財布とパスポート。
それ以外は全部置いてきた。
彼女が指定したのは日本で、聞いたこともない地方の空港。
夕方頃空港に降りたった。
所持品は全てポケットの中。
手ぶらで空港に居るなんて不思議だ。
空港はほとんど人がいない。
天井近くまでガラス張りの空港の外は
恐ろしい位にどしゃ降りの雨だった。
人の流れに着いていって外に出ると、
皆がそれぞれの方向に散って行き
あっという間に僕ひとりになった。
そこで冷静になって我にかえる。
「僕は………なにをやってるんだ…」
酔いが冷めた頭にこの現状が受け入れられなくて
壁に寄りかかって崩れるようにしゃがみ込むと、雨音が激しさを増した気がした。
空港から出てくる人はもういない。
タクシーも人を乗せて一台もいなくなった。
キャップのつばをグイッと下げてまた流れ始めた涙を片手で覆った。
まるでこの世に僕だけ取り残されたように、
雨音意外何も聞こえないこの世界に無視されてるような気がして。
『レイ?』
「………!」
名前を呼ばれて肩がビクッと跳ねた。
返事もできないで俯いていると
その声の主人は僕の目の前にしゃがんだ。
『《ダメよ、ちゃんと隠して》』
肘まで捲れたパーカーの袖から、指先まで入ったタトゥーが顕になっていた。
「………?」
目の前にいる人は、
顔を覆っていた僕の手の袖をグイッと持ち上げてタトゥーを隠した。
『《偉いね、ちゃんと逃げれたね。》』
少し丁寧に話された韓国語は凄く優しかった。
その言葉で弾かれたように顔を上げると、僕と同じか少し大人びて見える年上のような女性が泣きそうな顔で微笑んでいた。
彼女だ。
鼻の奥がぐっと痛くなって涙を堪えた。
『《ご飯食べた?》』
困ったように笑いながら言われたその一言のせいで、
溜めて吐き出した僕の息が震えた。
下唇を噛み締めて目に力を入れても抑え切れないぐらい目頭が熱くなって涙がこぼれて止められなくなった。
『《もう大丈夫。大丈夫だよ》』
僕に傘をさして、背中をさする彼女の感覚が少しずつ遠のいていく。
頭が鈍器で殴られたようにズキズキと痛んで、彼女の声が小さくなった。
『レイ!?』
『お兄ちゃん!!!!来て!手貸して!!!』
最後に聞こえたのは焦ったような彼女の日本語だった




