EP9–13
りなちゃんの子供の話とか、友梨の最近の合コンの話とかで盛り上がっていると
「ちぃ〜す。遅くなっちったわ〜」
と私と友梨の間に無理矢理入ってくる人物。
「お〜!成美ちゃんお疲れ〜」
りなちゃんが声をかけた。
「りなやん太りすぎやろ!!今一瞬誰かわからんかったわ」
「やっぱりー?もう肝っ玉母ちゃんになっちゃったよ〜」
りなちゃんが気にしてないから良いものの、呼ばれてもないテーブルに無理矢理入ってきて開口一番それはどうなの…と顔が引き攣ってしまう。
「つーかこんな端っこで飲まんで良いやん〜」
そう言いながら私と友梨の肩を組んでくる。
「ねぇ〜狭いからそっち座って〜」
ごくごく自然に友梨が向かい側の席を指すと、ナルは「もう〜」と言いながら立ち膝で移動した。
ナルは、座布団を差し出してくれたりなちゃんにお礼も言わずにドカッと胡座をかいて
「りなやんすっかりお母ちゃん体型やん」
と小馬鹿にしたようにりなちゃんの脇腹を指で突く。
「んもう〜そうだよ〜もう毎日が戦いだから自分に構ってられなくてね〜」
「うちもこないだ婚約したんよ」
そう言って左手の指輪を見せながら、ブランド名と金額と貰うまでのストーリーを用意していたセリフのようにスラスラと話した。
「すごいじゃーん!おめでとう〜!もう私は婚約の指輪とかも入らなくなっちゃったし、ブランドは覚えてても金額とか忘れちゃったなー…」
「そもそもりなやん子供いるからって女捨てすぎやて!何キロ増?」
あまりにもデリカシーのない質問に、りなちゃんではなく美優ちゃんが溜息をついた。
「えー?何キロだろ?産み落としたら減るはずなのに減らないどころか増え続けてんだよねー!まじ世界の七不思議。」
ケラケラ笑いながらお腹を摩るりなちゃん。
ナルのイヤミなんか気にしてない様子で話を笑いに持っていくりなちゃんに、尊敬の念を抱かずにはいられない。
「まあまあ…私の刺激のない話より、現役のみんなの話を聞かせてよー!」
りなちゃんは美優ちゃん達の雰囲気まで察して、空気を変えるように切り出した。
そこでいの一番に話し始めたのはやはりナルだった。
----…
な、なげぇ…
いつまで続くんだこの話…。
合間合間で私のことを小馬鹿にするのも忘れずに、
ずーっと自分の話を続ける彼女にはみんなの顔が見えていないのだろうか…
店に入ってきてからもう30分くらいは1人で話し続けてる気がする。
婚約してもなお、ナルのマウントは止まることを知らない。
「まぁまりあも頑張りな。良さげな男見繕って紹介してやっからさ」
と話が締めくくられると、
「え?まりあも婚約したんだよね?成美ちゃんに言ってないの?」
とりなちゃんが不思議そうな顔をした。
『あー…うん。会う機会もなかったし、わざわざ報告するほどのことでもないかなーって』
「はぁ?!絶っ対嘘やろ!見栄はんなって!」
一際大きい声で爆笑しながらナルは手を叩いてる。
何も言い返さない私の左手を掴んだ友梨が、ぐいっと手を上げてナルに指輪を見せた。
「ほら。別にわざわざ言わないだけで本当に婚約してるよ、まりあ」
「どうせ紹介するの恥ずかしい感じのジジイなんでしょ?だから誰にも言わないんでしょ?もしやワイが婚約してるの見て悔しくて焦っちゃったかー?」
『ジジイじゃないよ、私より若い』
「張り合ってきたー!キツー!!」
『・・・・・・・・。』
全然話通じないじゃんこの人。
レイがよくやる、呆れて白目を剥いてやれやれと首を振る仕草が咄嗟に出てしまう。
「旦那の癖うつってるよ」
小声でそう言いながら友梨が笑いながら私の肩を叩いた。
「うんうん?で?で?いいよ、聞くよ。話してみ?盛りなしね」
『ううん…大丈夫。大した話ないから。』
「はい、キモおじ確定デェス!もしくは指輪も自演デェス!」
私を指した人差し指を顔のギリギリまで近づけておちょくる様な動きをしてくる。
それを見てたみんながいよいよ呆れて、場が静まり返った。




