EP9-10
「《それよりレイ、この写真》」
まだ鍵をつけて公開してないInstagramの僕のアカウント。
フォロワーはジホ兄さんだけだ。
「《さっき初めてお前のアカウント見たけど、このアカウントの存在まりあさん知ってるの?》」
「《え?公表するまで教えません。写真消せって絶対言われますもん。》」
「《この写真いいね》」
新たにフォローしてくれたイェジュン兄さんが一枚の写真を出した。
まりあがソファで寝てる時、勝手に手を繋いで撮った写真。
僕の手の上に乗るまりあの小さな手には指輪もブレスレットも付いていて、僕の手の刺青もお揃いのブレスレットも写ってる。
「《僕もその写真お気に入りです》」
「《奥さん小柄なの?》」
「《知ろうとしないでください》」
イェジュン兄さんは驚いたようにポカンとした顔のあとフフッと笑った。
「《はいはい。わかったよ》」
他にも
まりあが作ってくれたご飯の写真、
日当たりのいいリビングの写真、
庭の花の写真、
夜にゲームを一緒にやった時のスクリーンの写真、
まりあの装飾されたゲーム機の写真、
コーヒーを作っている手元の写真、
ソファに座っている時に、僕の足の上に乗せるとそのまま僕に体を預けて寝てしまったまりあの肩越しに撮った自撮り写真、
もちろんまりあの顔はどれにも絶対写ってないけど、髪の毛とか雰囲気は見切れて写っているのもある。
「《惚気全開だな》」
「《え?靴お揃いなの?》」
「《うん、お揃いです》」
「《仲良いね。》」
シウ兄さんとイアン兄さんは興味津々に写真達を見ていた。
「《ご飯美味しそう〜》」
「《どの写真も、あの女が真似しようとしても真似できない場所で撮りました》」
そう自信満々に答えると
「《確かに、日本の家だからこっちとも作り違うしね》」
とイアン兄さんが感心したように言う。
これが僕がずっと準備してた、女と決別するための証拠。
更新日も全部記載されるから今更あいつが辻褄合わせようとしても合わせられないように毎日少しずつ更新してたのだ
「《匂わせられないな》」
ジホ兄さんもニヤッと笑って頷いた。
人って変わるもんなんだな〜、と兄さん達が僕をまじまじと見つめるので
「《でも兄さん達は変わる前の僕のことも好きだったでしょ?》」
と言うと
「「「「《そりゃあな》」」」」
と息ぴったりに返されて思わず笑ってしまった。
----…
「《ただいま》」
朝の撮影が終わって実家に帰ると
「《おかえり!!元気そうで安心した》」
涙ぐんだ笑顔で母が玄関で出迎えてくれた。
父さんもリビングから顔を出してホッとしたような笑顔を見せてくれた。
「《こんなに健康的に戻って……ほんっと……彼女にもお礼いわなきゃね…》」
僕の存在を噛み締めるように母さんがぺたぺたと身体に触れる。
「《おかえり、レイ。》」
歩み寄ってきた父さんが、僕と母さんごと強く抱きしめて鼻を啜った。
テーブルにつくと、すっかりいつもの調子を取り戻した母さんが矢継ぎ早に質問してくる。
「《ちゃんと彼女を大事にしてる?重いもの持たせたりとかしてないよね?ちゃんとお姫様みたいに大事にするのよ?パパがママにしてるみたいに》」
「《わかってるよ》」
「《お前、とか言ってないわよね?》」
「《言うわけない》」
「《ちゃんと愛してるって伝えてる?》」
「《伝えてる》」
「《彼女の好きなものは?ちゃんと把握してる?》」
「《してる》」
「《特にこの時期は寒いから、体冷えないように対策してあげてる?》」
「《してる》」
「《ママ、落ち着いて…》」
「《だって!こんっなに気分屋でボーッとしてる子なのに…》」
「《レイだってやる時はやる子だよ、大丈夫》」
「《…もうっ…!》」
そのあとも、相手のご両親への挨拶の事だとか国籍のことだとか…母さんの質問は底知らずだった。
「《さて、父さんも聞きたいことは山ほどあるんだけどね、まずは2人の話しを聞かせてもらいたいな》」
場の雰囲気を仕切り直した父さんに、僕はあの地獄の日々から今日までのことを全て話した。
母さんは泣きながら何度も僕を抱きしめては涙を拭いて、抱きしめては涙を拭いて、を繰り返していた。
忙しい人だな、と途中笑ってしまったけど
今日はしっかり最後まで話し切ろうと決めていた。
何度中断してでも、
僕が彼女にどれだけ救われたのか、
どれだけ愛しているのか、
人生においてどれだけ大切な人になったのか、
全部話すと決めて、今日僕はここに来たから。




