EP2-2
それは未読のファンレター。
これは日本でイベントをやった時のものだから騒動の前のものか。
なんとなく、無意識に
読むでもなく開くと、つたない韓国語で僕の身体を心配する言葉が並んでいた。
ご飯は食べれていますか?
夜は寝れていますか?
好きなものはなにかそばにありますか?
嫌なものは嫌と言えていますか?
あなたの心を私たちファンが守れるように、いつでもあなたを想っています。
「거짓말쟁이」(嘘つき)
吐き捨てるように笑いながら言うとさらに涙が溢れた。
手紙には最後、こう綴られていた。
私にできることが何もないのはわかっています。
こういう作品を作ってるので暇な時見ていただけると嬉しいです。あなたのことをいつも愛してます。
@lvinU
SNSのアカウント名だろうか。
ぼーっとした頭のまま、手に握られたままのスマホでそのアカウントを検索した。
「……나야…」(僕だ…)
アカウントには僕の似顔絵がたくさんアップロードされていた。
その時々の曲のイメージの色で描かれた、僕は光輝いて見えた。
描かれている僕がなぜか別人のように思えて、
なぜか愛おしくて、
幸せな気持ちと苦しい気持ちがごちゃ混ぜになって、
笑みがこぼれるのに涙がさらに溢れ出た。
最後の更新は、三日前。
女神に抱きしめられて小さな天使に目と耳を塞がれていた。
《神様、彼を助けて。
あなたが助けてくれないなら私達が助ける、絶対に》
その言葉に
「어차피 거짓말이잖아…?」(どうせ嘘でしょ…?)と無意識に口にしていた。
彼女のメールBOXを開いてメッセージを送っていた。
【그렇다면 도와줘(それなら助けてよ)】
どのくらい経ったかわからない、
すぐだったのか数時間なのか。
時間を確認しようとスマホを見ると。
【레이야? 무사해? 꼭 도와줄게. 나는 무엇을 해줄 수 있을까?(レイなの?無事なの?絶対助けるよ、私にできることは何かな?)】
と返信が届いていた。
意外にも韓国語で返信が来た。
【逃げたい】
その後も韓国語で送ると
【うん、今すぐ逃げて。考えるのを辞めて一度逃げて。今のあなたを守れるのは今のあなただけだよ】
【どこに逃げたらいい?】
ー【家族は?】
【心配かけたくない】
ー【私の国まで来てくれたら、きっとみんなから貴方を隠してあげられるのにね…】
【どこ?】
信用していい人かもわからない。見ず知らずの。
でも彼女の絵を見て、悪い人だとは思えなかった。
ぼんやりした頭じゃ本当は正しい判断なんてできてないんだろうけど。
誰でもいいから僕を隠して欲しかった。
誰の目にもつかず、誰も痛みに触れさせないで
僕が僕じゃない場所に行きたかった。
別に彼女に答えは求めてない。
気休めで聞いたつもりだった。
けど、なにか逃げ道があるなら、彼女のところに辿り着かなくてもここじゃないどこかでやり直せるなら
そんな気持ちだった。
ここじゃ人の目が多すぎて考えることもままならない。
どんなキッカケでもいいから、全部終わりにしたかった。




