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2人のシェルター  作者: 倉るて
君が居ないこの世界じゃ
107/124

EP9-6



----…




バタバタと時間は過ぎて、あっという間に夕方になった。


そしていよいよやってきた正念場の音楽番組の収録。




前社長が現場まで来て、僕を心配するような顔をしていた。




「《レイ大丈夫か?目も合わせずに口も聞かなくていいからね?》」



「《はい、わかってます》」



「《君たちも彼女がレイに何も出来ないように距離取ってあげるんだよ》」



前社長の言葉にヒョン達も頷いた。




オープニングの収録が始まる、という時

背後から少し緊張したようなイェジュン兄さんの声が聞こえた。



「《レイ…。来たぞ。》」



後輩と楽しく話していた雰囲気が一気に重苦しくなる。

僕の遠くの背後を見て表情を引き攣らせた後輩。




「《レイ先輩…後ろ…》」



「《大丈夫、気にしなくていいから》」



恐ろしいものでも見たかの様な、怯えた様子で体を小さくする彼の肩にポンっと手を置くと僕の目を見て頷いた。




「《レイ、復帰おめでとう。みんなにご挨拶できた?》」




すぐ後ろで女の声がして、

腕に手を絡められる気配がすると



正面にいた後輩が「《ヒョン!》」と僕の手を掴んだ。



「《カウントダウンライブかっこよかったです!まるで別人みたいで最初は見つけられませんでした!僕もヒョンみたいになれますかね…》」


女に掴まれそうになってた手を先に握って回避してくれた後輩は、背後の女優に目も向けないで笑って話す。


「《お前は今も十分かっこいいよ?》」



「《レ、レイ!》」



 また後ろから少し大きめの女の声で名前を呼ばれると、周りにいる出演者の時間が凍る様に静かになった。


チラッと横を見ると、やれやれとヒョンが小さくため息を吐く。

他の女性アイドルも、司会の俳優も、みんなこっちを見ていなくても次の言葉を待っている様だった。




「《ああ…ジス先輩。》」


 意を決して振り返るとその女は嬉しそうに、でもメディアでよく見かけるキメ顔の笑顔で僕を見上げる。



「《お久しぶりです。その節は根も葉もない事実無根のニュースでご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。》」


"根も葉もない"

"事実無根の"

を強調して他人行儀ではっきりと言った。



「《あ、や、やだな…久しぶりだなんて…》」



「《最後にお会いしたのは一昨年の音楽番組の収録でしたよね?その後お元気でしたか?》」



「《ち、違うじゃない…、ず、ずっと一緒にいたじゃない!》」



 焦ったように僕の胸元に手が伸びてくるのをサッと一歩引いて避けると、女の口角が引き攣った。

 一歩引いた背後にはヒョン達も全員揃っていて、何かあったら動こうとしてくれてるみたいだ。



「《ずっと…?それっていつのことですか?》」



冷静に努めようとするほど、怒りが湧き出てどうしようもない。


 そんな僕の様子を察したシウ兄さんがそっと背中を撫でて落ち着かせようと宥めてくれていた。




「《あ!あー…?そういうこと?みなさんにはまだ公表してないから…?》」


馬鹿みたいに必死に嘘で塗り固めようとする女を、ハッと吐き捨てるように笑うと横からシウ兄さんが出てきて



「《そうですよ、ヌナ(姉さん)…!まだ公表してないんですから!》」



「《はあ?!ヒョン!!》」



女の話に便乗したヒョンの肩を掴むと、バッと払い除けられて拍子抜けする。



「《はーい、ちょっと黙ってような〜?シウ兄さんブチギレてるのわかるだろー?》」


と笑顔のまま僕の耳元で口も動かさないで言うジホ兄さんに、背後から羽交締めと言う方が正しいような力で抱きつかれる。




「《あぁ〜そう言うことだったのね、ごめんね!私ったら…》」



「《来週新事務所の発表するので、その時まではSNSでもあまり匂わせみたいなこともやめてください!入籍も控えてるんですから》」



-入籍も控えてる


そのヒョンの言葉には流石に周りの出演者もざわつき始めた。

満足そうに周りに目配せして鼻の穴を広げる女を見ているだけで怒りが込み上げてくる。


 もちろんシウ兄さんにも腹が立ってる。僕の事なのに僕が黙らされたこの状況にも。




「《それもそうね…!ついレイが心配で。レイ、無理しちゃダメよ。せっかく元気になったんだから》」




 彼女面でそう言い残して収録に向かった女とは目も合わせず、シウ兄さんの肩を掴んだ。




「《どういうつもりですか?》」



「《レイ。痛い目見せてやるぞ。》」



振り返ったシウ兄さんは笑顔のままブチギレていた。



「《え…?》」



「《どいつもこいつも相手がアイドルだと思って舐めやがって。何一つお前らの物にならないって事教えてやろう。とりあえずあの女は一旦黙らせたから新事務所の発表とレイの結婚発表は派手にやろう。》」



満面の笑みで笑うシウ兄さんに、前社長が

「《お手柔らかにね〜》」

と冷や汗を流しながら落ち着かせるようなジェスチャーをしている。






「《レイ。あんな女1人ごときにイライラするな。今後のお前と奥さんの未来に比べたら、あんなのは塵ほどの存在だろ?》」


イェジュン兄さんが僕の肩に腕を回してそう言った。



「《そうですけど…》」



「《最高な奥さんが家で待ってて、お前は外で稼ぐ。あいつごときにムキになってヘソ曲げてないで、奥さんにとって自慢の夫になれるように根性でプロ意識見せてみろ》」


そう続けてジホ兄さんが拳でコツンと僕の肩を小突く。



「《そうだね。どうせ今後周りがなんと言おうと、今更レイの色気に気付こうと、どんなにお前を求めようと、お前はもう奥さんのモノなんでしょ?だったらこれからお前がするのは、誰も手に入れられない最高にかっこいい姿を世に見せることだよ。》」


イアン兄さんも優しく笑って言った。








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