第8話 動かぬ過去
今回は勇者フェイク、モーゼンのお話。
この二人は共通点が無いようで実は…。
果たしてこの二人はどう過ごすのか。
勇者フェイクは過去への転送前、やる事を反復していた。
先ずはフィナとメルニーと合流だな。雑貨屋か宿屋でドドルという子にも会ってみよう。
息が合いそうなら4人で鍛錬と連携や基礎を上げておきたいな。
勇者が帰ってきたら、メイナに会う、合言葉「エレオス・ソフォビビオ・スパスィ」、勇者カインか戦士ブルームに猛特訓をお願いして。
4人でなるべく練習をしてチームワークは上げておきたい。
どちらにしよう…
そう考えてると意識が飛んだ。
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フェイクが意識を取り戻す…。
◎ (あれ、目が開かない。体も動かせない!一体どうなってる!?)◎
拘束されてるというより、麻痺のような何もできない感じ。
そして聞こえてくるのは川の中に頭を入れたような、何かが流れている音。
◎ (どうしよう、状況が全く解らない。体が動かせない以上、出来ることはなんだ?)◎
そんなことを考えてると何処からともなく声が聞こえた。
? 「うんしょ、さてまずは洗濯からしなきゃ。」
◎ (あれ、この声どこかで聞いたことあるような。でも何か音がこもってるような。)◎
? 「るーるーるるるーるーる、るーるるるるるー♪」
◎ (鼻歌か…どこかで聞き覚えのあるメロディーだけど思い出せない。)
出来ることが全くないフェイクは、出来る事を考えた。
◎ (この麻痺状態、動かせないなら、合言葉を忘れないように反復するしかない!)
◎ (エレオス・ソフォビビオ・スパスィ、エレオス・ソフォビビオ・スパスィ)◎
そして数時間もしないうちに意識が飛んだ。
次に意識が戻ったときはお昼過ぎだった。フェイクは知る由もないが。
◎ (あぁ眠ったのか、まだ麻痺してるな。じゃぁ暗記の続きを。)
こうして、エレオス・ソフォビビオ・スパスィはフェイクの脳内にしっかり刻み込まれるのであった。
数日が過ぎ、フェイクは脳内暗記真っ只中、いつも聞こえる声とは違う声が聞こえた。
? 「パパですよー?まだお腹の中に居たいのかなー?」
◎ (おなかの中!?)
ここでようやく、フェイクは現実を知る。
◎ (俺はまだ生まれてない、つまり18年くらい前って事だな。転送したのは西暦2539年6月15日だったと思う。俺の誕生日は2521年8月1日。つまり最短であと1カ月ちょっとで誕生できるけど、6月15日の確証がない。それ以前だったら?赤ちゃんて何年かかって生まれてくるんだ?)◎
フェイクは考えるのをやめた。解らないこと考えても無駄である。フェイクの信念の一つ。
フェイクは再び暗記の為に唱え続けた…エレオス・ソフォビビオ・スパスィ。
そして狂う歯車。
フェイクは脳内で暗記の為に唱え続けた…エレオス・ソフォビビオ・スパスィ。体は動かないと諦めてあまり動かそうとしなかった。
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一方、モーゼンは昼過ぎに目が覚めた。
自分の研究室で机に倒れこんでいた。
モーゼン 「ん、ここは」
辺りを見渡して、研究室だと確認した。
取り合えず席を立ち、聖堂に足を運んだ。
モーゼン 「こんにちわ。神聖女様はいらっしゃいますでしょうか?」
聖女A 「今、お祈り中でして少しお待たせしてしまうかもしれませんが、いかが致しますか?」
モーゼン 「では、聖女メイナは居りますでしょうか?」
聖女A 「今は外に出ております。夕方戻るとご伝言預かっております。」
モーゼン 「では、また伺いますので。こちらはお納めください。」
聖女A 「ではこちらに、署名と金額ご記入ください。」
モーゼンは記入を終えて、食堂で食事意を済ませ研究所に戻った。
モーゼン 「ふむ、上手くいかんな。」
モーゼンは自分の研究の書を覗く。
モーゼン 「思った以上に進んでないな…しかし思い出せるものは書き込んで行こう。」
自分で見直したりしていたお陰でするする書ける…
意識しないうちに集中してしまい、気が付いたら夜になっていた。
: 「モーゼン、聞こえるか?」:
モーゼン 「後ろを振り返ったが誰も居ない。」
: 「頭の中に直接話しかけている。わしの事が解るか?」:
モーゼン 「神様ですか?まさか私に話しかけて頂けるとは。」
: 「すまぬ、声をかけたのは確認もあるのじゃが、18年後の私から何言伝はあったかな?」:
モーゼン 「メイナと二人で現勇者を探すように言われております。」
: 「どういう事じゃ。現状を予測しえなかったって事か?そじゃ、確認したい。18年後のイレギュラーな出来事が起こって、お主はこちらに来た事までは予測できた。」:
モーゼン 「実は、シルフィーオが失敗してしまい、エルフィー様を転送し損ねてしまいました。」
: 「エルフィーだったか。ふむ。少し、黙る。」:
モーゼン (神様は情報から事実と現状を整理しておるのかな。その上でこれから起こりえる情報を探っておるのかな。)
: 「モーゼン、メイナと勇者探しをすると言ってたな?それはしなくて良い。お主は前勇者達との経験がある、まずはメンバーがホクレイ・ドームに居るか確認してくれ。明日以降に魔王からモーゼンに呼び出しがかかると思う。それに答えてやってくれ。」:
モーゼン 「かしこまりました。現勇者の事はお任せして宜しいという事ですよね?」
: 「うむ。現勇者の事は神の龍と魔王、私の方で対応する。」:
モーゼン 「お願いいたします。」
こうして、モーゼンは通常運営となった。
この二人、共通点があるようでやっぱりない。
生まれてないし、動けない。
モーゼンは未来の神様の指示で動くはずだったのに、現在の神様には動かぬ指示。
この二人は動けないという共通点。
モーゼン…今後出番はあるのか!?
そして勇者はどうなってしまうのか…。