第73話 家族
屋外の喫煙所。一人煙を吐き出す。パチ屋の扉が開閉する度に聞こえる騒音が心地よい。
「今日は流音と一緒だ。飯は外で一緒に食ってくるよ。」
嫁に一言RINEを入れておく。
ふ~。凄い一日だったな。
お。返信。
「え~私も行きたい。いずこ?」
・・・そうきたか。嫁が来るとオリスロの話をしづらいな。・・・けど隠すのもよくないか。嫁怒るかなぁ・・・。ただ娘も隠さずに気持ちよく行けた方がいいだろうし、伝えてみるか。なんか今日ならうまくいく気がする。
「この時間だとラーメンか牛丼だな。久々に家族3人で飯にするか。」と。
「やった。そしたらにんにら(にんにくにらラーメンというお店の略。隣にふにろーずというゲームセンターがある。)で。迎えに行こうか?」
店のチョイスはいいね。ここに迎え来てもらうのは少しまずいか。話す前にばれちまうことになる。うーん。近くのコンビニにしよう。
「よろしく。〇〇交差点のコンビニに22:40頃に来てもらえれば。流音は自転車だからそのまま行くと思うけど。」
「(*‘∀‘)b」
さて、オリスロの売買の募集を眺めながら2本目のタバコを吸い終える。娘からRINE。
「終わりにした。今どこ?」
「さっきの喫煙所。」
そのまま合流。
「どうだった?」
「ん。あれから少しだけど増えたよ。今日はちょうどプラマイゼロくらいだね。」
さすがおれの娘。どっかのバカみたいな負け方はしないようだ。
「負けてないならよかったよ。さて飯行こうぜ。にんにらにした。おれは嫁に送ってもらうことになったけど一緒に乗ってく?。」
「え、ママも来るの?どーゆーこと?あとチャリ置いていくの嫌だから漕いでいくわ。」
「了解。いや、おれもびっくりしたんだけどさ、流音と飯食って帰る、て送ったら一緒に行きたいとさ。ほら、仲間外れにするとあとが怖いじゃない。」
「・・・まぁね。オリスロのこと話すの?」
娘も今まで隠してきたんだ。やはり抵抗があるのだろう。
「正直悩んだ。けど伝えといた方が今後楽になると思う。・・・嫁怒ると思う?」
「ん~。分からない。分からないからママにも黙ってたわけだし。」
そりゃそうだな。
「まぁなるようになるだろ。そしたら現地で会おう。22:40に迎えにくる予定だから22:45には着くよ。」
「ん。」
娘を見送りコンビニに向かう。外にずっと立っているわけにもいかないか。意味もなく店内をブラブラ。あー。昔は雑誌のコーナーにパチスロ雑誌がいっぱいあったな。よく立ち読みしてたっけ。今じゃ1冊だけ。少し寂しいね。
さてそんなことを考えている間にいい時間だ。お、あの車は嫁だな。
「お待たせ。」
「サンキュー。流音はやっぱり自転車で向かったよ。」
発車する嫁。聞きたいことだらけでうずうずしている少女の目をしている。
「・・・機嫌よさそうじゃん。二人で飯なんて何があったの?どうやって関係改善したのさ。」
「まぁそのあたりは3人でゆっくり話そう。久々の家族そろっての外食だな。」
「お楽しみはあとでってことね。揃って外食は1年ぶりくらいじゃない。」
「だな。・・・ありがとな。」
聞こえるか聞こえないか。絶妙な声量で放ったお礼。聞こえていたかは分からないが嫁は軽く微笑みながら運転を続けた。